【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.804「コースでお風呂に入るor入らない…ゴルフに対する考え方の違いかもしれません」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
前々から疑問だったのですが、プロや上級者の方はどうしてラウンド後にゴルフ場のお風呂に入らない人が多いのでしょうか。ゴルフが上手いことと、風呂に入らないことに関係があるのでしょうか。(匿名希望・55歳・歴30年)
正直、大真面目に答えるべき質問なのかどうか、しばらく考えてしまいました(笑)。
プロゴルファーでなくても、世界のスーパースターやトップアスリートがどんな体をしているか肉体に興味はありますよね。
試合を終えた選手がロッカールームでシャワーを浴び、ハダカで歩く姿が見てみたいと思うファンも少なからずいるかとは思います。
「タイガーのハガネみたいな体、ロッカールームで見ちゃったけど、スゴかった!」
そういう話をしたがる人間はいるもので、これがまた尾ひれがついて誰彼となく広まっていく。
単なるウワサ話でしょうし、くだらない話だからこそでしょうが、みんな大好きですよね。
そういうものだと分かってかどうか、わたしはある日を境にゴルフ場ではよほどのことがない限りお風呂には入らなくなりました。
ロッカーで着替えする際にササッと汗を拭き取る程度。
もちろん、コースのお風呂では選手が入浴することもありますが、それはあくまでプライベートな話題なのでここでは紹介できません。
またプライベートで回る際、ゴルフ場のクラブハウスや大浴場はプロと一般のお客さんが垣根なく接触する機会になるので、正直わたしはちょっと避けてしまうのが本音です。
プロアマ競技でアマチュアの方と一緒にラウンドするときも事情は同じです。
最後のほうの組のゲストは、ホールアウト後のお風呂に入る際には、表彰式を兼ねたパーティに遅れることを見越して
「自分に構わず先に始めといてください」
と、慣れた調子でシャワーで汗を流す人もいれば、じっくり風呂に浸かってから少し遅れて参加される方もいらっしゃいます。
プロはたいてい表彰式後に練習をするので、着替えだけして風呂には入らないことが多いかもしれません。
ご質問にあるように、確かにプレーが終了し次第、早く帰りたいのが本音です。
プロにとってラウンドやコースにいる時間は仕事であり、どんなにリラックスしているように見えたとしても気は抜けません。
多くのプロの頭のなかには、試合会場でゆっくりお風呂に入るという行動プランは、もともと組み込まれてないのではないかしら。
たまのコースで“ゴルフの一日”をゆったり楽しみたいアマチュアの方には、大きな湯船に浸かる温泉気分も魅力かと思いますが、仕事でプレーをしにゴルフ場へ来るプロとはゴルフ場での過ごし方が別のものになるわけです。
仕事を終えたら、なるべくその場を離れてリラックスしたい、と思う気持ちはみなさんにも想像がつくと思います。
プロでなくても、いわゆるゴルフ慣れしている人もその感覚に近いのではないかと思います。
トップアマとは言わなくてもラウンド回数が多いプレーヤーは“ゴルフの一日”というわけではないので、ラウンドを終えればサッとコースを後にして次の予定に備えた行動に移るという感じなのではないでしょうか。
でも、一般的なゴルファーにとっては、ラウンド後の大きなお風呂というのがセットになっている人が多いのでしょう。
これは、日本のゴルフにのみ見られる独特の文化かもしれません。
来日してプレーする海外の選手が、初めは興味本位で大浴場に関心を示すこともありますが、その後は入浴しようとはしませんからね。
ゴルフとお風呂の関係があるかどうかは、わたしにはわかりません。
でも、ゴルフは4人1組が一緒にプレーを順番に行いながら、同じコースを足並みそろえて進んでいくゲームです。
プレーの進行を妨げずムダな時間をかけない準備と手順が要求される。
その簡潔でスピーディな行動をする習慣が身についていると、ひょっとするとですが、ゆっくりお湯に浸かるというような発想がなくなってしまうのかもしれませんね。
ところで、先日も広島では雪が降りました。
ゴルフ場じゃなければ、ゆったりと温泉に浸かってのんびり過ごしたい季節です(笑)。
「あくまでも効率よく動く、せっかちとは違いますからね(笑)」
週刊ゴルフダイジェスト2024年3月12日号より
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