【大人ゴルフの歩き方】Vol.35 ゴルフってどこか自慢するよね
スコアだけがゴルフじゃない! コラムニスト・木村和久が独自の視点から現代の正しいゴルフの在り方を指南。
ILLUST/Shinichi Hoshi
第35講 ゴルフってどこか自慢するよね
①ゴルフって誰かに認めてほしいのよね
②下手でも自慢したがるのが謎
「ゴルフスコア絶対思想」に物申す
皆さん、ポロシャツの襟を立てた、日焼けシングルオヤジの目線って怖いですよね。「お前いくつで回るの? ベストは?」と目で恫喝してきますから。あ~いうヤカラと付き合いたくないですが、実は周りにたくさんいます。ほんと困ったものです。それは多分、高度経済成長期&バブル期にゴルフは競争だ、スコアが全ての“モーレツ思想”が流布したからでしょう。
ゴルフは110から70ぐらいの数字に全人格を押し込みます。それを絶対化する思想は学校の偏差値と一緒です。日本人はランク付けが好きなのかも。今までは確かにそうでした。しかし令和に入り、スコア至上主義は一部の人しか利益を得ないので、敬遠されるようになりました。
では、下手でもゴルフを楽しみ、存在証明できる方法はあるのか? あるんですよ。まずクラブ競技はB~Cクラスなど下手でも楽しいですが、さらに懇親会や祝日杯では新ペリアで集計するケースが増えています。これだと叩いても隠しホールにはまれば、優勝の可能性がありますからね。
ほか、ローカルルールを自由に決めてオール6インチプレースや最大スコアなどを採用して、叩かないゴルフを目指すのはありです。
●恫喝
ほとんど軍鶏の喧嘩状態、襟立てた日焼け野郎がガン飛ばして来ますからね
●学校の偏差値
会社も主任→係長→課長→部長→取締役だもんね。日本人は身分や階級、偏差値でポジションを決められるのが好きなのかも
●新ペリア
倶楽部競技はアマチュアの場合、数年で伸びしろが無くなり頭打ちになります。だったら新ペリアのような偶然性を加味したゲームのほうがガチャ世代にはウケるかも
●オール6インチプレース
師匠の後藤修先生は悪いライから打つと、「10年早い、簡単なライで打てるようになってから打て」と、打たせてくれませんでした。アベレージゴルファーは、6インチ動かしてもいいと思うよ
自分の輝ける場所はどこか?
というわけでゴルフは、下手でも、みんなに承認されたいスポーツです。2割くらいの腕自慢がいるとしたら、8割のアベレージゴルファーは、スコア以外の部分で承認欲求を満たそうとします。
ゴルフ会員権を購入する時、下手でも名門コースに入会するのはありです。たとえHC25でも名門倶楽部に入れば、社会的に認められたセレブとなります。腕自慢を呼びやんごとなき世界を教えてあげましょう。
また現在在籍している大衆コースでも、ハンディキャップ委員やフェローシップ委員といった役職を目指す手はあります。下手でもその倶楽部内じゃVIPの顔役だから皆が挨拶してくる。ゲストを呼びやすいです。
さらにゴルフをSNSで広める手段があります。日本一周や有名人と回る、業界コンペに出る企画などをUPしていると、1000人ぐらいは客が付き、そこそこ名前が知れ渡ります。その時美人インスタグラマーとコラボすれば、フォロワー数が激増。コースで「SNS見てますよ」と言われた時の嬉しさといったら、OBと思ったボールが、カート道路に当たって前に飛び、ナイスオンしたぐらい嬉しいです。なんのこっちゃ。
あとお金持ちがよくやるのが、全員に食事を奢るというやつ。やはり奢られた身としては、ナイスショットの声も半オクターブ高くなり、率先してボール捜しをします。ランチの時に、鰻重のメニューを見てたら「鰻食べたいの? じゃ鰻重4つ頼もう」の言葉を聞いた時には、この人に一生付いていこうと思ったりして。奢る人も豪快ですが、奢られるのもいいよね。鰻重頼む人、機会があればぜひ呼んでください。
ほかにもコースうんちくマニアで井上誠一設計コースと弟子筋のコースばかり回る人とか、年100ラウンド以上と回数にこだわる人、今年の新作ウェアとギアを揃えないと気が済まない人など、ゴルフの目指すベクトルは多種多様あります。最終的には自分が納得し、輝ければよろしいのです。
●やんごとなき世界
スコア至上主義者に、ゴルフがもたらす華麗な人脈と、豊潤な19番ホールの世界を教えてあげましょう
●顔役
委員はいっちょう上がったおじさん多し。ゴルフは下手でも、赤い帽子をかぶってブレザーを羽織れば、みんな挨拶して来るからね
●美人インスタグラマー
若い女性がゴルフウェアで登場するだけで、ビューワー数アップする世界ですからね
●鰻重4つ
鰻重4つで最高でも2万円以下。キャバクラのボトル並みの値段。それで3人の人間の心を鷲づかみにできるなら安い出費だよね。でもそんな注文聞いたことない
●井上誠一
井上誠一と弟子の大久保昌、宮澤長平らを合わせて70弱コース、弟子筋の泉一介、富澤誠造などで100超え、全部で200コースになるかも。井上誠一コース巡礼は大変だぁ
今月のまとめ
昔、ブラジル人のキャディが
お年寄りと回ってました。
じいさんがラフに打つたんび、キャディが
ボールを拾ってフェアウェイに戻してた。
微笑ましいと思ったりして。
それがゴルフの到達点かもねえ
教える人/木村和久
ゴルフ歴32年のコラムニスト。ベストスコア75、2001年鶴舞CCキャプテン杯優勝。『89ビジョン』など新しいゴルフの楽しみ方を様々提案する自称「ゴルフ生活評論家」
月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より