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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.298「全国飛び回るの巻」

KEYWORD 林家正蔵

噺家の仕事をしていると周りの方に、いろんなところに行けて羨ましい、さぞかし美味しいものを食べているんでしょ。と言われることが多いんです。でも現実はそんなこともなく、冷たいお弁当を食べる日々……。少しでも時間が空けば美味しいご飯を頂きたいものです。

ILUUST/Chuji Aoshima

前回のお話はこちら

ここ2カ月はハードな日々続き

1泊で人間ドックを受ける。私は噺家を生業としているので、体を壊したらまるで水道の蛇口を止められたようにお金が入ってこなくなる。私の知らないところで保険には入っているとは思うが、身ひとつの商売なのだ。

いつまでも元気で、しかもいつまでも現役でいられることを願えば、体のメンテナンスはとても大切である。

50歳を過ぎてからは、年に1回の人間ドックを受け半年ごとにかかりつけ医に血液検査をしてもらっている。体重を落としてから血圧も上が120から下が80までと安定はしているものの、仕事がハードなときなどは130後半まで血圧は上昇してくる。これくらいは標準値。まぁゴルフで言えばボギーというところです。140を超えて始めてダボになるかなと、ゴルフ好きの医者はそう言っておりました。

しかし、この2カ月の間、かなりのハードスケジュールで伺った地方公演の場所を列記してみると……。松山をスタートして沖縄、宮崎、徳之島、熊本、鹿児島、大分、佐賀、広島、熊本を巡り、3日間東京で仕事をして茨城の水戸をはじめに長野は諏訪、愛媛は新居浜、富山の破波、香川の高松。その後1日東京でTV収録をしてから群馬の桐生でドラマ撮影をして、また落語会で愛知の吉良町、長崎の佐世保、とどめに奄美大島と巡ってやっと我が家に帰ってまいりました。


想像とは違いご飯は冷たいお弁当

よくお客様にいいなぁ落語家さんはいろいろな土地を巡って旅ができるんだからと言われるが、ほとんど駅から会場、会場からホテル、ホテルから空港の毎日。毎晩その土地の旨い名物をたらふく食べて地酒や焼酎に舌鼓を打っているのであろうと思われがちだが、大半が楽屋弁当なんです。それはそれでありがたいのだが、いつも決まって唐揚げ、真っ赤なウインナー、鮭、衣だらけのエビフライ。そして冷たいごはんの真ん中にカリカリ梅がひとつ。

やっぱり主催の方も食中毒のリスクを考えているのでしょうが、いつもこんな感じ。10カ所中8カ所は所変われどいつも同じおかず弁当。

それでもときには、会場セッティングが早めに終わったり、終演時間が夕刻で泊まりのときは、仲間やスタッフと居酒屋へ足を運ぶ。しかも観光客が行くような店ではなく。その土地の人が使っているような店を探してはワイワイやるのが楽しみ。

よくタクシーの運転手さんにオススメを聞くのだが、「私は酒は飲まんよ」とか、「お客さんの舌に合わんといけんから」とかでなかなか教えてくれない。こちらから店の名前を出してあそこはどうと聞いても「まぁー混んでますね」ぐらいしか返ってこない。「絶対にオススメ」を教えてもらったことがないのだ。

実際はスマホで調べていくのだが、点数がよくてもそれほどでもなかったり、逆にあそこの店はよかったなぁと感動した店をスマホで調べてみると点がちょっとくらいの評価しかされていなかったり。

しかし、今回の旅で公民館や市民会館、舞台のスタッフ、もしくは事務局の人の情報には、外れがなかったということを発見した。きっといろんな土地からの出演者が来て、よく尋ねられるのであろう。だから地元の人がよく行くうまい店と酒、できれば締めのラーメン屋かうどん屋を教えてくださいと聞けば、まず間違いなく教えてもらえた。

とある女子プロオススメの納豆焼き

今回の旅ではまった居酒屋メニューがある。以前、ゴルフ番組で女子ゴルファーのトークで地元の好きな食べ物というコーナーがあり、沖縄、九州出身の女子プロ一人が「居酒屋の納豆焼き」と答えていた。すると関東や東北出身の女子プロは、狐につままれたように「何?」、「知らない。どんな食べ物?」とポカーンとしていると、「納豆焼き知らんのですかぁー」とトークが弾んでいた。

熊本と奄美の居酒屋メニューに「納豆焼き」とあったので注文してみると、ほぼ同じものであった。いわゆる鉄板の上にお好み焼きみたいな卵の生地に納豆が交ざっているものが焼けていて、上からかつお節、ソース、マヨネーズがかかっている。ネギ焼きの納豆版のようなものだ。「これがうまい! 本当においしかった!」

私の行く東京の居酒屋ではお目にかかった試しがない。探せばあるに違いないが、わざわざ探して行くようなものでもなし。九州から南の居酒屋で黒糖焼酎でも飲みながらつまみたい一品であった。と思っていたら、女子ツアーでその納豆焼き推しの女子プロが優勝していた。

みなさん、納豆焼きを食べるとゴルフの腕も上がるかも。ともかくゴルフも納豆も粘りが大事だ。

ゴルフでも 納豆のように 粘りたい

月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より