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【ゴルフ野性塾】Vol.1806「意識すべきはトップ位置の握りの強さ」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

間違いなく
秋の空だ。

横へ大きく拡がる雲。
15階の窓から眺める東の山並み、薄き色になって来た。
今日11月9日、木曜日。
街の音も穏やかだ。
オートバイの暴走音もなく、救急車、パトカーのサイレンも聞えない。
ベランダの木の葉、小さく揺れている。
葉が散るはあと10日ばかり先か。
昨日から寒くなったが、散れば晩秋。
体調良好です。

30球多く練習出来るグリップを探せ。

プロはグリップを強く握らないといいますが、自分はかなり強く握るため、練習場でボールを打つだけで、右手の中指と薬指が擦れてマメができます。プロはどのくらいの強さでグリップしているのでしょうか。どうすれば指にマメを作らずにスウィングができるでしょうか。(神奈川県・匿名希望・35歳・ゴルフ歴8年・平均スコア92)


過ぎし日々をはしょって現在だけを語るは危険だ。
途中の経験と結果をはしょるも然り。
いずれも事実と現実への到達は難しくなるばかりと思う。
貴兄の疑問と悩み、そして願いはその危険を持っている。
アマの方、プロを目指した方、プロゴルファーとして生きている者は皆、ゴルフ始めた時から現在のグリップ握りの強さで球を打って来た訳ではないと思う。
最初は強く握るものだ。
強く叩きたいのであるからグリップの握り、強くなるは当り前。
アドレス時とバックスウィング始動時、そしてバックスウィング途中も強い握りであった筈。
球叩けば経験が生れる。
そしていい当り、悪い当り、納得の振り、納得行かぬ振り繰り返す中でグリップの握りの強さは変る。
勿論、スウィング型もスウィングスピードも変り行く。

人の世、経験が変えるものは多い。
その事に気付かずに日々を過すか、過さぬかで現在と明日は変り行くと思うが、いずれが正しいのか、いずれが間違いだったのか、それは過ぎてみなければ分らぬ事。
そして人、それぞれの領域。
結果を見れば近回りには幸運が付き纏うと思う。
結果を見れば遠回りには己を眺むる意識の稀薄さ在るのではと考える。
成功には人との出会いの縁、あるものだ。
失敗には縁の存在、軽い様な気はする。

己を振り返る。
上手く行った時を眺める。
一人か二人、あるいはそれ以上の幸運なる出会い在った事を知るであろう。
私はそうだった。
人との出会い、状況、それ等が繋がった時を過していた。
悪い繋がりではなく、これ以上の幸運どう探せばいいのかと思う出会いの縁だった。
平らな生き様ではなかった。
多くの方と食事し、その席で私は問うた。
生き様を道と例えた時、貴男の道は平らでしたか、デコボコでしたか、真っ直ぐでしたか、右と左への曲り道でしたか、と。
若い時、問えはしなかった。
私が60歳過ぎてこの質問が相手の方に失礼非礼にはならぬと思った時の質問であった。
己の年齢は大切と思う。
若き時の質問、当然、経験少なき者の質問と疑問故、相手の方への失礼非礼生じるものだ。

私はジュニア塾生、大手前大学ゴルフ部員、そして今、45歳過ぎて46歳へ向う途中の長男雅樹と43歳へ向う長女寛子に失礼非礼だけはするなと教えた。
一度や二度では気持ちの中に留めるは難しいが、三度四度と繰り返せば留まる話ではあった。
周りは「いい子ばっかりですネ。総てゴルフが教えてくれたものですか?」と問うて来た。
ゴルフが教えてくれたものは多い。
学んだものも多い。
しかし、一番多かったのは年齢と経験が教えてくれたものだった。
経験には成功と失敗がある。
若くても老いてもだ。
だが、年齢の失敗は若い時多く、老いる程に少なくなって行った。
老いを恐怖と思われる方は多いと聞く。
私には分らぬ。
我が身の経験なれど、老い行くは楽しい。
死を目前にしていないので死への恐怖はないが、それも幸運なのだろう。
しかし、いずれは訪れる恐怖だ。
その時はその時、背を丸めて逃げる事は出来ないと思う。

貴兄はゴルフ歴8年の方。
一週間に何度の練習場通いされているのかは分らぬが、平均スコア92ならば週に二度の通いは出来ていよう。
その二度の練習場通い、一度の通いで200球打たれているのならば230球打って貰いたい。150球の練習球数ならば180球打って貰いたい。
その30球が貴兄に何を与え、何を取り去るかと申せば、意識の強さと慣れからの離脱だ。
練習球数30球増やすは怖いと思う。
しかし、打たねばならぬのだ。
当然、貴兄は練習途中で考える、あるいは練習始めた時から考える、またマメが出来るのか、と。
それも今迄より状態悪化のマメだ、と。
200球打つ貴兄は230球打った後の己の手の平を想う。
ここ迄、やらなきゃならないのか、と悲しい気持ち、辛い気持ちになる。
そして貴兄は想う。
230球打てるグリップの型、握りの強さを見つけよう、と。
ここから意識の強さ、慣れへの離脱が始まる。

熟したバナナを握り潰さぬ強さで握れと過去は教えた。
その教え、経過を飛び越えて現在だけを教えた出来上りの図である。
人、出来上りの図だけから己の日々を作る事は出来ぬと思う。
人、現在の己の年齢から逆行して生きるは不可能。
アマの方もプロを目指した人もプロになった者も皆、最初は握り方も振り方も何一つ知らぬゴルフド素人だった。
貴兄は30球の球数で変れるのだ。
これ以上の上達はないと思う。

アドレスではない、バックスウィング途中でもない、トップ位置の握りの強さだけの意識あればいい。
貴兄はこれ迄、インパクトの強さを意識されて来られた方と推察。
なれど、インパクトはスウィングの途中。
インパクトは意識して変える事の出来る領域じゃありません。
インパクトはあく迄も途中。
トップの握りの強さを変えよ。
そしてこれ迄よりも30球多く打てる握りの強さを見つけて貰いたい。
貴兄は期待したのか、バナナと同じ例えのアドバイスを。
そんなものはない。
握りの強さは経験が与えしもの、貴兄のものではない。

今年の2月から球を打ち始め、現在は一日一度の練習場通い、1時間半の打席立ちで400球打っているが、2月と較べれば握りの強さ然して変らず、ただ粘っこい握りとなっている様に思う。
強くではなく、軽くでもなく、粘っこい握りである。
打席に立つ前、左グリップだけの握りをする。10秒近くを左だけの握りで過す。
そして球を打ち始める。
異和を覚える時がある。
その時は左手親指と人差し指の握りの型を変える。
親指と人差し指の距離を変え、親指の位置と握りの型を変える。
それで異和は消える。
他に変えるものはない。

グリップは大切だ。アドレス以上に大切なものと思う。
人様のスウィング見る時、最初にグリップを見る。
練習場とコースの1番ティーで多くのアマチュアの方のグリップを見て来たが、美しい握りしている人は20人に一人。
ただ、その一人も両のグリップ美しかった訳ではない。
利き腕の握り美しい人は多く、支点グリップとなる左のグリップ美しき人は少なかった。
貴兄は左グリップ美しき人になれ。
然れば右の指のマメ出来難くなると思う。
以上です。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年11月28日号より

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