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【ゴルフせんとや生まれけむ】川野太郎<前編>「初ラウンドの夜は悔しさでメラメラ」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、 俳優の川野太郎氏。

高校、大学(早稲田大学)と野球を本格的にやっていたこともあり、ゴルフをやるつもりはまったくなかったんですよ。興味もありませんでしたし。大学を卒業した頃に、スポーツメーカー勤務だった野球部の先輩が「ゴルフは面白いぞ、一緒にやろう」とずっと誘ってくれていたのですが、やる気もなくて、そのままになっていました。

その後、確か26歳の時だったですかね、その先輩の知り合いが福岡にいて2泊3日で遊びに行くことになったのです。そして、先輩が「泊まるホテルから車で10分くらいのところに玄海ゴルフクラブというゴルフ場がある。そこでゴルフをやろう。クラブは俺が用意するから」と言うんですよ。もう有無を言わさずといった感じでしたね(笑)。それで練習もまったくしないで当日の朝、新品のクラブのビニールを剥がしてラウンドしました。

ゴルフは初めてでしたけど、野球をやっていたので少しくらいは当たるだろうとタカをくくっていました。ところが、これが当たらない。こんなに当たらないものなのか、どうして真っすぐ飛ばないのかとムキになって力を入れるほど空振りやチョロの連発。もう参りましたというしかなかったですね。スコアは数えていましたが、途中からいい加減になって、いくつだったかは覚えていません。

何の練習すらしていなかったんだから当然なんですけど、こんなにも当たらないものならもう二度とやるもんかと思いましたよ。でも、その日の夕食の時もゴルフの話ばっかりでほかの3人が盛り上がっているのを黙って見ていると、僕もスポーツマンですから、このままでいいのかと悔しさがメラメラと湧き上がってきたんです。

それで、その翌日もプレーすることになりました。もちろん2日目もボールはうまく当たりませんでしたが、前の日よりは落ち着いてプレーできたせいかハーフを60いくつかで回れました。初日とは違って自分でも少しはゴルフになっていたと思いますし、何よりも楽しかったですねえ。

そこで東京に戻ってきてから本格的に練習を始めました。その時に最初に思ったのは、ゴルフは野球と同じように道具を使ってボールを打つのだけれど、全然違うスポーツだということ。野球だとピッチャーの投げる140キロ、150キロのボールを考えるヒマもなく瞬時に打ち返さなくてはいけない。しかも、ストレートだけじゃなく変化球もある。それはもう反射というか、動物的カンとしか言いようがないですよ。

一方、ゴルフは止まっているボールを自分のタイミングで打つ。相手がいないので、考えようによっては簡単に思えるかもしれないけれど、実はこれが難しい。野球に比べて考える時間が長い分、余計なことを考えすぎてしまって失敗しちゃうんです。だから、コンスタントに100が切れるようになるまでには1年くらいかかりました。ここをボギーで上がったら100が切れると思うと余計な力が入ってボギー以上を叩いてしまう。そうやって何度も阻まれました(笑)。メンタルが左右する。これぞゴルフの難しさであり、楽しさでもあると思いますね。

>>後編につづく

川野太郎

かわの・たろう。1960年、山口県生まれ。早稲田大学時代は野球部に所属。1985年、NHKの連続テレビ小説「澪つくし」でデビュー。俳優の傍らテレビ朝日「料理バンザイ!」の「たまに行くならこんな店」のレポーターを長年務め、お茶の間の人気を集める。ベストスコア84

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月26日号より