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【ゴルフせんとや生まれけむ】伊藤剛臣<後編>「ラグビーを引退してから、エンジョイの意味がわかってきました」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に引き続き、元ラグビー選手の伊藤剛臣

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ラグビーでは練習でも試合でも一度たりとも力を抜いてプレーしたことがありません。いつも全力でした。だから、ゴルフを始めた頃、練習場でも1球1球思いっ切り渾身の力を込めて打っていたので100球も打つと汗だくになっていました。でも、ゴルフは違う。めったやたらに力を入れていてはダメなんですよね。むしろ力を抜いたほうがうまくいく。頭ではわかっているんですが、脱力してプレーすることがなかなかできませんでした。

それに僕はラグビーを始めてから引退するまでずっとフォワードで、相手と直接コンタクトする肉弾戦ばかりやっていました。パスすらあまりやったことがないくらい。つまり、もともと器用さに欠けるんですね。

ところが、ゴルフはドライバー、ロングアイアンからパターまでいろいろなクラブがあって、状況に応じて使い分けなければなりません。不器用な僕にはそれができないんです。その点、バックスの選手はキックしたりパスしたり自由自在にプレーする。器用だからゴルフも上手いというのが僕の持論です。それに、スポーツ選手は一概に負けず嫌い。


特に僕はその傾向が強かったので、ゴルフでもスコアを気にしていました。エンジョイ、エンジョイと口では言いながら全くそうじゃない。いつも切るか切られるかの真剣勝負の気分で。だから、つい力が入ってミスが多くなりスコアもまとまらない。現役時代の僕のゴルフはずっとそんな感じでした。

ところが、ラグビーを引退してからプレースタイルが大きく変わりました。というのは、僕が今勤めている会社の社長さんのゴルフに衝撃を受けたからです。社長さんはゴルフ場に着くとウイスキーをストレートで少し飲んでスタートします。競技でもないので、打ち直しもしますし、ものすごく自由なんです。

「他人やゴルフ場に迷惑をかけなければいいんだよ。プロじゃないんだし、自分でお金を払ってやっているんだから失敗も成功も仲間で笑い合って楽しめばいいんだよ」と。そういう考え方に「ああ、こういうゴルフもあるのか」と、すごく影響されました。それ以来、負けず嫌いも鳴りを潜め、スコアもあまり気にならなくなって、心の底からゴルフを楽しめるようになりましたね。もちろん奇跡でバーディを取ったりしたらものすごく嬉しいけど、仲間と一緒にやるゴルフはとにかく楽しい。それが一番。

2022年の夏、大学卒業以来初めて30数年ぶりに同期が集まって後輩を激励しがてら菅平でゴルフをすることになりました。菅平といえばラグビーの夏合宿で有名。昔の僕らは菅平に行くのが憂鬱でした。でも、ゴルフとなると全然違う。あんなウキウキした気持ちで菅平に行ったのは人生初めて。何のプレッシャーもなかったのが良かったのかハーフ44の新記録を出しました。バックナインはいつものように50台後半でしたけど(笑)。

今後のゴルフの夢ですが、スコアはとっくに諦めているので、ベストスコアの96を更新することはないかもしれませんが、それでいいのです。人間、諦めも大切(笑)。とにかくエンジョイ、です。

伊藤剛臣 ゴルフ

伊藤剛臣

いとう・たけおみ。1971年生まれ、東京都出身。ラグビー元日本代表。法政大学3年時に大学選手権優勝。神戸製鋼、釜石シーウェイブスでナンバーエイト、フランカーとして活躍。代表キャップ62。現在はサラリーマンとラグビー解説者の二足のわらじ

週刊ゴルフダイジェスト2023年10月3日号より