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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.783「子どものころから、勝負ごとを通じ自分と向き合う感覚を養ってほしいと願います」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


全日本柔道連盟が柔道の小学生の全国大会をなくすなど今の日本には競争や競技を避けようとする動きが見受けられます。こうした風潮や考え方があることを岡本プロはどうお感じになりますか?(匿名希望HC0・48歳)


お便りを寄せてくれたあなたの腕前はハンディゼロ。

そのレベルに達するためには、少なからずの犠牲と努力の積み重ねがあったと思います。

自分で掲げた目標をクリアするため、きっと長い時間練習に励んできたのでしょうね。

ですので、あなたが疑問として思っている小学生から勝ち負けや人と競うことに積極的でない風潮に疑問を感じるのは無理もないと思います。

少し歴史を振り返ると終戦直後に生まれた団塊世代の人口は806万人を数えます。

小中学校の教室が足りず、勉強や遊びはもちろん何から何までが競争だったといわれ、確かにわたしが通った小学校の教室にも50人以上がいる過密な時代ではありました。

あなたを含めた団塊ジュニア世代であるいま50歳前後のアラフィフの人たちが、競争を積極的に推奨はしない現状に違和感を覚えるのはわからなくもないです。

確かに、人生は競争の連続です。

子どものころから、その現実を伝えておいたほうがいいと考えるのは、おかしいことではないとは思います。

昔のように運動会の徒競走で学年一等賞といった表彰はしていないと聞いたことがあります。


スポーツは奨励しつつも、ある競技においては小学生の全国大会は開催しないというのは、少し行き過ぎた勝ち負けへのこだわりによって引き起こされた事象かもしれませんね。

しかし、スポーツも時代とともにどんどん多様化しており、実際に前回の東京オリンピックに出場した中学2年の13歳の女子中学生が金メダルを獲得している事実もあります。

競うこと、争うこと、戦うことは、人間に本能的に備わっている感情でもあります。

ただ、理性がコントロールしなければなりません。

勝負ごと、競技やスポーツには厳格なルールがあることで、選手も見ている人たちも一緒に楽しくなれるのだと思います。

残念なことですが、隠れてルールを無視し、人を傷つけても勝とうとする人間がいるのも事実です。わたしは生まれつきの悪者はいないはずという性善説をもとに考えています。

ですから、教え方次第で勝つことだけがすべてではないと、競争する目的は変えられるのではないでしょうか。

人と競うのは、自分の能力を伸ばすためであり、戦いは相手とではなく自分のなかにあると考える─。

わが子が勝てないことにクレームをつける親がいる、ということも耳にしたこともありますが、やるのは選手であり子どもたちです。

保護者の声を怖がったり面倒臭がって競技自体をやめたり、横並びにしてうやむやにしてしまうことは、老婆心ながら少し心配ではあります。

なぜなら、負けたり失敗したりすることで学ぶことがたくさんあるからです。

負けることや失敗を嫌がって何もしないということは、そもそも挑戦をしないということにつながってくるのではないかしら。

見ている側も一生懸命に挑み続ける選手の姿を目の当たりすると、胸が熱くなってきますよね。

子どもたちには、元来スポーツは面白くて楽しいことであるといざなってあげるべきだと思っています。

その面白くて楽しいスポーツには、勝敗というのは付きものであることも、同時に上手く伝えてあげられれば、自然と勝負ごとへの嫌悪感が社会全体として減っていくのではないかしら。

スポーツとは我を忘れて熱中するほど楽しいもの、なのですから。

「目標に向かって一生懸命やることほど、楽しいことはないと思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2023年10月3日号より

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