Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • 週刊GD
  • 【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.779「朝の練習グリーンは″練習”の場所ではありません」

【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.779「朝の練習グリーンは″練習”の場所ではありません」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


先日、会社の後輩から「朝のパット練習で入らないと不安にならないですか?」と質問されました。私はプロではないのでそれほど意識しませんが、プロは朝のパット練習で何を感じ考えているのでしょうか?(匿名希望・42歳・HC1)


この質問に対し、しばらく考えたのちに「なるほどなぁ」という気がしました。

というのは、ゴルフをやる人なら、何かしらのルーティンや立ち居振る舞いには、流れ作業的な手順が身に付いていると思うからです。

朝、コースへ着いてからの動きはゴルファーによってさまざまですが、平常心でいられるように自分で導いていると思います。

あなたはハンディ1の腕前であれば、競技の出場経験も豊富で多くの体験を経たうえで身に付いた自分なりのルーティンをお持ちのはず。

スタート前の朝のパッティンググリーンでの身のこなし方にも、決まった手順があると思います。

だからこそ、不意に「朝のパット練習ではどんなことを考えているんですか?」と聞かれて、答えに戸惑ったのではないでしょうか。

いつもの何気ない光景に、特に意識していなかった行動。

意識していなかったのに、ほかの誰かから聞いた一言が引き金になり、それまで考えてもみなかったイメージがモクモクと広がって頭の中を埋め尽くしてしまうなんてこともある。


そうかと思えば、ゴタゴタを引きずってクヨクヨ、ウジウジしているばかりだったところ、友人の何気ない声がけがそれをきれいさっぱり吹き払ってくれることもあります。

言葉というのは、まさに毒にも薬にもなる取り扱い要注意品ですよね。

同じ言葉でも誰に言われたか、どんな口調だったか、いつ耳にしたかなど、状況によっても影響力が変わってしまうのです。

ですから、気軽に声をかける側もTPOを考える必要はあると思います。

これはゴルフに限ったことではありませんが、相手の身になって状況判断をして気を使う──そうするとみんな穏やかに暮らしやすくなるような気がします。

話を戻しますが、朝のスタート前のパッティンググリーンで、プロは何を感じ考えているのでしょうか? 

ということですが、ほとんどの場合プレーヤーたちにとって、朝のパット練習はその日のパッティング感覚の最終チェックの場であって、何をどう調整するとか攻略法を考え直すとかの機会ではありません。

もちろん、その最終チェックで違和感を覚えることもありますが、だからといって、そこで焦りを感じショートパットを何十発も打って矯正することもあり得ません。

違和感があるならあるなりに、調子が悪くても悪いなりに、自分と折り合いながらラウンドをこなしていくしかないのですから。

プロにとってトーナメントは、平素からやってきたトレーニングや練習の成果を形として披露する場であって、スタート前はすでに準備は終えている段階。

ですから、そういう場所で「練習でパットが入らないと不安になりませんか」と言われても動揺はしない、というのがプロの反応です。

練習を積み、しかるべき態勢を準備しているのがプロです。

普段のパット練習中に違和感を覚えれば、すぐにアドレスの姿勢やストロークの行程、フェース面の向きなど細かい部分をチェックしてアドバイスしてくれるコーチに見てもらう。

それがプロの仕事です。

ですが、アマチュアはそうもいかないのかもしれません。

違和感があっても自分で原因を突き止め調整する必要があるのでしょう。

たまたま会った人から不用意な助言をされて、おかしな調整法に陥ったりする可能性もあるかもしれません。

ただ、今まで思いもしなかったことに対して「オレは何を考えていたんだろう」と反省する機会と捉えることができれば、あなたのゴルフを成長させるキッカケにもなるかもしれません。

そう、言葉は毒にも薬にもなるのですよ。

「練習グリーンで入っても本番で入らないこと、よくありませんか?」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2023年9月5日号より

アヤコさんの著書『本番に強くなる!アヤコ流』好評発売中!