【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.139 「今に生きろ!」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa
ゴルフだけやなしに仕事でもそうですけど、スランプに陥る人の傾向として「過去がそのまま未来になる」と思うとる人が多いような気がします。
過去の実績に自負を持っとるポジティブな人は、自分が到達すべきゴールはこうであるべきだというイメージを持ちすぎていて、だから「こんなもんできて当たり前なのに、それが何でこうなんの?」みたいなことになる。それで次第に調子がおかしくなっていく。
直近のことがそのまま未来につながっていくと思い込んでいる人も多くいて、そういう人はどちらかというとネガティブな人ですわ。
先ほど言うた過去の実績の例としたら、僕は過去に日本オープンで勝っている。でも、ついこの前のラウンドでザックリした。遠い昔はよかったけど、近い昔は悪いわけで、過去にはよいことも悪いことも両方あるんやけど、この前のザックリのほうが明日も出るような気持ちになる、いうパターンです。
しかしね。人生、ココから先はまったくのサラなんですわ。未知の世界でどうなるかはわからへんのにね。
先ほどの日本オープンの話ですが、僕はあの試合の直前まで調子は最悪やったんですから。予選落ちが続いていたんやけど、それがあることをきっかけに最高の状態になり優勝です。
今、ココから先はまったく未知の世界やから、わからないんですよ、この先どうなるかなんて。だから「過去がそのまま未来になる」なんてことはないんです。今、この瞬間に何を選択するかで未来は決まるわけですから。
何を選択するかは全部、自分の自由。それが生きているいう証しですからね。今に生きるしかないんですよ。岡本太郎さんですよ!「この瞬間、瞬間に生きるんだ!」「今までの自分なんか、蹴とばしてやる!」と岡本さんはおっしゃいましたわ。
朝の練習場でスライスが出てたいうて、本番でもスライスが出る気がして、ティーイングエリアで打つ瞬間まで右手の使い方はこうだああだと頭のなかで考えとったらあかんのです。言葉なんか蹴とばして、今、この瞬間にイメージした通りに振っていけ!
「『芸術は爆発だ!』の岡本太郎さんも言うとりますよ!」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2023年8月1日号より