【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.760「自分で考え取捨選択する力を養っていますか?」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
コロナ禍の環境下、ゴルフのための筋トレを始めました。どんなスポーツでも体のバランスが大事だと思いますが、ゴルフにおける役割が大きいと言われる体幹とはどういうことか教えてください。(匿名希望・35歳・HC20)
読者の皆さんの質問にお答えするこの連載、お便りの大部分はハガキからメールに様変わりし、国内外のゴルフシーンを彩る選手の顔ぶれも入れ代わってきました。
それでも、みなさんから送られてくる質問を眺めていて思うことは、いつの時代もゴルファーの悩みは変わらない? ということです(笑)。
もともと、どんな質問にも的確に答える自信があったわけではありません。
さまざまな読者の疑問と向き合い、わたしの経験を交えながら一緒に考えることで、問題の解決につながるヒントが見つかればいいと考えての連載スタートでした。
その思いは今も変わりませんし、毎回目にする読者からの質問に接して、ゴルフの悩みは今も昔も深いと改めて痛感させられます。
1980年代後半にメタルドライバーが出現し、新素材のチタンが導入され、それまでのゴルフ用具が一変した90年代半ばから後半。
折しも世はインターネット時代。この15~20年だけを見てもギアの潮流は大きく変化しており、それに伴いスウィング理論や練習メソッド、トレーニング方法などのネット情報があふれ返っています。
おかげでゴルファーは手軽にさまざまな最新情報に接して自分のゴルフの向上に役立てることができるようになりました。
最近の女子プロツアーを眺めていて感じるのは、若い選手のスウィングがみなオーソドックスに近く、しっかりしていて緩みがなく頼もしく見えることです。
これも情報を利用して理にかなった練習を積み重ねてくることができたからこそだと思います。
ところが、この「誰にでも容易にアクセスできる情報」が多ければ多いほど、受け取る側の迷いや悩みも深くなるのではないか、そんな気もします。
冒頭に掲げた今回の質問には「体幹とはどういうことか」とあります。
ですが、体幹そのものの説明はもちろん、体幹を鍛えることがゴルフスウィングを安定させることに関して重要かということは、インターネットで解説されているはずです。
あえて「体幹とはどういうことか」と質問される人がいらっしゃいますがどうしてだろう。
確かに、十人十色の回答があるかもしれませんが、どれが正解か悩みが増えてしまっている?
気軽にネット情報にアクセスできることで、逆にその情報を処理できないジレンマに陥っているのかもしれません。
大切なのは、簡単に手に入る情報をそのままにせず、仕事や生活など自分が必要としている用途に役立てることなのだと思います。
ただ教わるだけでは、ほんとうの知恵はつかない。
与えられた情報に自分で考えて処理を加え、生きた知識にする行程が必要になります。
また、あなたがもし「体幹とはどういうものか」を知りたいなら、まず自分なりに予習するのはどうかしら。
予備知識を持っているのかどうかによって理解度や習得度が変わると思います。
例えば、スライスが出るのを直したいと質問された場合、あなたがどんなグリップでどんな構えをして、どうクラブを振っているかが分からなければ、的確にアドバイスすることもできないのと同じです。
あと、意外とゴルフの専門職に就いている読者の方からの質問が増えてきたことも感じます。
読者層の広がりをうれしく思う一方、ゴルフを本職としている方に読まれているという責任もひしひし感じます。
今後も誠意をもって質問と向き合うことをお約束しますが、回答に際してはユーモアも忘れたくはないですね。
質問を投稿してくる人のなかには、切羽詰まってワラをもつかみたい人ばかりではなく、自説を訴えてくる人もいることにも直面しました。
そんななかから、今回はどんな話をしようかと考えること自体、ほんとうにいい勉強をさせてもらっていると感じています。
ゴルファーの悩みは今も昔も変わらないと言ったけど、回答者のわたし少しは進歩してきたかしら?
「まずは自分自身で考え答えを出すこと。その答え合わせをインターネットや人に聞いて行うと習得度はかなり変わると思いますよ!」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2023年4月11日号より
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