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【ゴルフ野性塾】Vol.1771「呼吸、浅ければトップ。深ければダフリ」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

私は福岡市
中央区の赤坂

15階マンションに住むが、練習場に行きたくても車もなければ免許証も持ってない身故に不便窮屈ではあった。
不便であっても窮屈さ感じなければストレスのない生き様は出来る。しかし、不便の中に窮屈さ感じると己の身への不満は生じる。
練習場通い、タクシーで行くには遠過ぎた。
1カ月に一度か二度の練習場通いであればどうって事ないと思うが、私は物事始めれば一度や二度では済まない性分である。
この性分、幼き頃より続く性分であり、老い行けば頑固偏屈に繋がる性分である様な気はする。

我が家より1キロ先に位置する大濠公園内のコーヒーショップ「スターバックス」に集う者の数10名を超えた。
皆、私との雑談目当てでコーヒー飲みに来るが、30歳から70歳迄の野郎共、忙しい者もいると思うが、几帳面に顔を出す者ばかりである。
2月13日の午後、集った。

「お前さん達、仕事はどうなってる? 平日のこの時間、それも祭日明けの平日なのに職場離れていいのか?」
「皆、それぞれの会社の責任者です。社長職にいる者が7人、残り4人は長の役職持つ者ばかり。長の役職のいい処は自分の時間持てる処です。我々への心配気配りは無用です」
「それだったらいいが一週間に一度の昼間の30分から40分だ。気になるのも当り前と思うが」
「坂田プロのお話を拝聴するのは極めて楽しい事です。一週間に一度、私達にとっては学習塾であり、本当に有難いと思ってます。これから先、何年、坂田プロのお話聴かせて貰えるのかは分りませんが、忙しくなっても見捨てないで下さい。それだけは強くお願いします」
「私も暇だ。暇な者同士、一週間に一度、コーヒー一杯で繋がって行くのも悪い話じゃない。それで今日はどんな話を希望する?」
「坂田プロの練習です。練習場行かれる事はあるんですか?」
「今月に入って行き始めた。私の住まいは中央区だが、西鉄バスに乗って8つ先の停留所で降りれば、歩いて1分の距離に練習場がある。長男雅樹が教えてくれた練習場だ。周りに気兼ねせず、練習出来ると言って来た。最初の日はタクシーで行ったが、次の日からはSuicaのカード購入して赤坂2丁目のバス停から西新行きのバスに乗った。城西橋で降りて1分の歩きだ。練習場の名は西新ゴルフセンター。中央区から早良区の城西2丁目迄20分。バスに乗っても近かった」

長所修正7割。欠点修正3割。


「練習されたのですか?」
「ああ。6アイアン、9アイアン、AW、サンドウェッジの4本持って100球打ったが30分で打ち終った。ダフリも出るし、トップも出た。シャンクも出たな。格好悪いと思ったが、自分自身への言い訳も周りへの言い訳も嫌いなので黙って打ち続けたよ。練習に大切なのはスウィングリズムと球打ち続けるリズムと呼吸だと思う。私の場合、呼吸浅くなればシャンクとトップ出るし、深くなればダフリが出る。その事を西新のゴルフセンターの100球が気付かせてくれたな。現役でやってた頃は気付かなかった事だ」
「坂田プロのゴルフ歴は24歳から始まってるのに、75歳になって気付く事ですか」
「そうだ。基本を知るのに年齢もゴルフ歴も関係ない。求めるのは善き事だ。知るもいい事だ。向上心と好奇心、そして少しの謙虚さあれば楽しく生きて行けると思うぞ。あとは工夫次第で変化は生じる。大きく振るか、小さく力の集約求めて振るかで違いは生じる」
「大きく振るって大きなヘッド軌道を目指す訳でしょ? 小さく振るってコンパクトな振りと理解しますが、言葉と感覚では理解出来てもどう振ればいいのかが分りません」
「私はレッスン得意じゃない。私はレッスンと説教は3分が限度と思っている人間だ。この事、ジュニア塾生、進化論塾生の指導で気付いた事じゃあるが、長い説教は聞く側の緊張感と向上心が薄れる。長いレッスンも最初の指摘を忘れなきゃ次の指摘、実践は出来ないと思う。3分だ。説教とレッスンは」
「しかし、練習場やインドアのレッスン会は一時間が普通ですが」
「どうすれば教えが身に付くかを考えれば一時間は必要ない。修正必要な点と長所を指摘し、欠点の修正に入るか、長所の強化に入るかはレッスンする側の指導方針になるが、いずれの指導をも得意とする者はいないだろう。二つに一つの傾きを持つのが人間だと思う。やっぱり人それぞれの運じゃあるな。指導受ける者の出会いの運だ」
「坂田プロはどっちへの傾き持っておられますか?」
「お前さん達のいい処は質問が短い事だ。自分の経験や考えを含めての質問だと長くなるが、それ等を省いた質問は簡潔でいい。だからお前さん達との付き合いも出来ている様な気はするが」
「有難うございます。でもこの質問のやり方、坂田プロに教わった事です。やっぱり長い質問や自分の考えを入れた質問は駄目ですネ。新たなものを生みませんから」
「少しは分った様だがまだ不充分だな。己の考えを入れ過ぎてる。それじゃあ欠点修正、悪癖修正を得意とする側に傾くぞ。私は良所修正7割、欠点修正3割でジュニア塾生と進化論塾生の指導して来たが、欠点悪癖修正は簡単だ。球3球見れば誰にでも分るからな。だが長所を見つける能力持つ者は少ないと思う。長所を見つける眼線持つ者から人は離れない。欠点悪癖、自己癖を指摘し、修正に入る者からは離れて行く。それが指導の実態だ。欠点悪癖の矯正指導受けた時、最初は希望ありて楽しく過せるが、その内、楽しさ消えて希望失くなって行くものだ。希望と楽しさ、いつ迄も続くは長所を直す指導受けてる時だ。だから長所伸ばしてくれる指導者を代えようとはしない。その辺り、学校の授業でもゴルフレッスン業界でも分ってない者は多いな」
「心にズシッズシッと響いて来ました。今日のお話は堪えました」
「人の善い処を見よ。女房殿のスタイルと顔、老いれば変って行くものだ。そんな時、お前、年取ったなと言ってみよ。女房殿、お怒りになるは必定。私の女房だったら二週間のお怒りが続き、その一言、3年は許してくれないと思うぞ。一呼吸置いて女房殿の首筋を見ればいい。人間の老い、遅れて老いるは首筋だ。それも後ろの首筋。お前の首筋、いつ迄も美しいな。俺はお前の首筋に惚れて結婚したが、正解だった。45年経っても美しさは45年前と同じだ」
「首筋ですか。気付きませんでした」
「若い人間ばかり見てるから気付かないだけだ。首筋には若さ宿る、いつ迄もな」
「手入れする人、いるんですか?」
「少ないだろう。しかし、手入れしなくても若いのが首筋だ。首筋を見れば欲望は増す。私の父親が教えてくれた事だ。よし、今日のコーヒー雑談はこれにて終了。風邪引くな」

今日2月16日、木曜日。
現在時10時45分。
これよりファックス送稿。
腹、減った。
女房殿、どこにいるのかな。
昨日の夜、長男雅樹が神戸から帰って来ました。
3週間、大手前大学ゴルフ部員の指導して来たが、何が変り、何が変らなかったのかの報告、聞いてはいない。
疲れたァと一言叫んで眠ったらしい。今朝、雅樹は5時に起きて6時過ぎに志摩シーサイドCCへ向ったと聞く。
明日もゴルフ。そしてラウンド終えて神戸へ向うらしいよ、と女房が言って来た。
「忙しい生活してるネ。でも46歳だから忙しいのがいいかもネ」
そう、46歳の時、私も旅から旅の生活だった。
長男雅樹高校生、長女寛子中学生だったが、一緒に過した日は一年30日ばかりだった。
体調良好です。それでは来週。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年3月7・14日合併号より