【世界基準を追いかけろ!】Vol.113 結果を得るには何かを捨てることも必要?
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回のテーマは、目標を達成するためのプロセスについて。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD 今回は、勝つためのプロセスというテーマですが、具体的にはどういう話なのですか。
目澤 幹仁が教えている梅ちゃん(梅山知宏)がチャレンジツアーで初優勝した時に、梅ちゃんは何をしたのが良かったのかを幹仁に聞いたんです。そうしたら、ある好きな行為を禁止させたことですかねって言っていたんです。人間そういう方向に欲望を持っていくと違うほうの欲望が勝つって。
黒宮 ある種の代償行動ですよね。梅山に、いちばん安らぐことはなんだって聞いて、じゃあソレを勝つまでやめてみたらいいよって言ったんです。僕がそれを彼に課したのは、高校の先輩だった片山晋呉さんの例もあったんですよ。
GD どういうことですか。
黒宮 水城高校時代の片山さん、1年生の時に成績が出たのに2年生の時に成績が出なくなったんですよ。その理由が、「彼女ができたので遊んでしまって戦績が出なくなったんだろう」と石井(貢)先生に指摘されて。それで片山さんは、「それじゃあ成績が出るまで彼女に会いません」と言って、その直後に関東ジュニアで優勝したんです。彼女に会うためには関東ジュニアに勝たなければいけない。そのためには自分が何をしなければいけないかというプロセスにこだわり、最短で結果を出したわけです。梅山の場合も、好きな行為を解禁するためには優勝しなければならない。そのためには何が必要か、そのプロセスを考えることが大事ということです。
目澤 やめるものは、お酒やたばことかでもいいわけですよね。女の子だったらスイーツなどを断ったりするとか。
黒宮 フーテンの寅さんの渥美清さんって、神社にお参りする時に、大好きなタバコを吸わないから、僕の欲しい仕事を下さいって言ってお参りしたんでしたよね。それで禁煙した結果、フーテンの寅さんの仕事がきたんでしたね。
GD 「願掛け」ですね。
黒宮 目的を達成するためのプロセスって、いろいろあるわけですよ。
GD 「NOペイン、NOゲイン」ですね。
目澤 そうです。筋肉痛がなければ良質な筋肉は得られないですからね。
黒宮 実は、そうした「願掛け」を逆側から考えたことがあるんですよ。
GD どういうことですか。
黒宮 ちょっと前まで上手くいっていた選手が、突然調子が悪くなった時に、何に逃げたかを見極めるんです。例えば、シードを取るまでは彼氏は要らないと言っていた女子プロが、シードも取れず成績が落ち始めた時に、実は彼氏を作っていたとか。
GD 現実逃避ですね。それで成績が上向けばいいんでしょうけれどね。
黒宮 どんどん成績が下がる場合は失敗ですから、そうなるとやっぱりその逆をやらなければ成功はないですよね。
GD 片山晋呉の『彼女と会わない』に辿り着きましたね。
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。淺井咲希、宮田成華、岩崎亜久竜らを指導
X氏 目澤と黒宮が信頼を置くゴルフ界の事情通
週刊ゴルフダイジェスト2022年11月29日号より