【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.103「セオリーは“絵に描いた餅”にすぎません」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
今年の1月にキャメロン・スミスがセントリートーナメント・オブ・チャンピオンズ で勝ちましたけど、あの勝ち方はホンマにエグかったですわ。全部強気でしょ。パターなんかヤバかった。あれは「これでダメやったらしょうがない」と思うてやっているんでしょうね。
そして今年の全英オープンでは、最終日に首位で出たローリー・マキロイは、守った結果、攻めのゴルフで64を出したキャメロン・スミスに2打差の3位タイに終わりました。
ゴルフの試合を見ておって、攻めのゴルフか守りのゴルフか、どっちに魅力を感じるかいう話ですが、僕はやっぱり「行きたい」ほうです。
そら、見ていてセーフティはおもろない。やっぱり入るチャンスがあるなら狙う、そういう気構えがないとゴルフはおもろくないし、強い選手にはなれない。
たとえば、ものすごい傾斜のグリーンがあって、カップが左に切ってあり、左は全然ダメやと、そういうときでも左サイドを狙いにいける選手じゃないとダメいうことですわ。
この場合、コースマネジメントではグリーンセンター狙いがセオリー言われるけど、マネジメントなんていうんは“絵に描いた餅”ですからね。
左ピンのときに、グリーンセンターに乗せて2パットで「4」が取れるいうんは、平均の話です。厚労省が推奨する血圧は上が130までで下は80くらいとかいう、これは平均です。でも実際は、上が150の人もおってそれで生きとるんやから、平均に合わせる必要はないいうことです。
皆が皆、平均的なセオリーどおり安全なセンターに乗せる必要なんてない。セオリーどおりにセンターに打って3パットしている人はどうなるねんいう話ですわ。
それやったら、セオリーを無視して左ピンを狙ってグリーン左に外しても、「センターからよりこっちからのほうが近いからええ」という、平均を突破した考えを持てるかです。
平凡な人生で終わるか、華やかでパッと散る人生を送ろうとするのか。一番下手打っているのは、平凡で早く死ぬいう人生じゃないでしょうか。
「“セオリー”はもっともらしかったりするけど、実際には役に立たんいうことです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年11月8日号より