【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.738「パッティングに男女の技術差はないと思います」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
テレビ番組で男女プロがパター対決をして、女子プロが勝ちました。これを見てパターだけなら感覚の繊細な女性のほうが上手いということはないのでしょうか。(小山嘉男さん・48歳・HC2)
スコアの半分近くはグリーン上だと考えると、パッティングは非常に重要な役割を果たします。
そこで、今回の質問にある男女によってパッティングの適性があるのかについてですが、正直、そうした話を耳にしたことはほとんどありませんし、確固たる根拠もなさそうです。
パッティングだけは得意なプレーヤーもいれば、唯一ショートパットに弱点のあるプレーヤーがいたりするものです。
同じゴルファーでも、日によってガンガン入ったり外れたりするものです。
まさに、パットにセオリーなし。
ですから、男女で違いがあるかどうかはなく、あくまでも個人次第だと思います。ただ、イップスを抱えている人は、なんとなくですけれど男性ゴルファーが多いように思えます。
ひょっとして、女性のほうが男性より土壇場で腹をくくる度胸があったりして!?(笑)
というのは冗談ですが、パッティングは狙いどおり打ったとしても入らなかったり、その日の調子、さまざまな不確定要素によって入らない場合はあり、それは男性も女性も同じです。
大事なことは、パッティングの基本を正しく守っているかどうかです。
毎回同じアドレス、ボール位置にセットして狙ったところに打つことができるようストロークする。
その確率を高めることが練習であり、その確率が上達の尺度になります。
実際のラウンドでは、このパットを真っすぐ打つ技術にプラスしてラインの読みを重ね、目標とタッチを合わせていきます。
プロ全員がパット巧者というわけではありませんから、アマチュアの方に負けることだってあり得ます。
わたしも現役時代、所属先の仕事で企業の方とラウンドした際に、グリーン上だけはスクラッチという、パッティングでは敵わない方もいらっしゃいました。
あのとき「岡本綾子に勝った!」と大喜びされて、いま思い出してもくやし~(笑)。
ただ、プロにはアマチュアにない圧倒的な練習量と経験量があります。
グリーンを読む力は、当然プロに分があります。
平均パット数では、アマチュアに負けることはないと思います。
パットはセンスや勘の良さで決まるともいいますが、パッティングの能力は多分に度胸の良さと関係があるのではないかしら。
それに、パット力には賞味期限があることも強く感じます。
やはり、年齢を重ねるにつれ、視力の低下、感性や感覚の鈍化などが起こるため、タッチが出にくくなってきます。
そして何より、若いうちは怖いもの知らずでバンバン決めるけど、ベテランになるとその威力がかすんでくるということもあるでしょう。
また、プロでも超困難なロングパットや高速で曲がりくねった難しいラインのパットでカップ際に上手く寄せられたとしても、大きな声援はほとんど起こりません。
しかし、最高の条件が整ったプレッシャーのかからないピン位置の100ヤードのショットをピン横にピタッと寄せたら大声援が起こります。
これは当たり前なことなのかもしれません。
ショットに比べパットは地味ですが、より繊細な技術力と精神力が兼ね備わっている必要があるかもしれません。
それだけグリーン上の勝負は幅が狭いからこそ、パッティングは常に悩ましいのかもしれませんね。
「打たなかったら次へ行けないのですから、
腹をくくって打つしかありません」(PHOTO/Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2022年10月25日号より