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【ヘッドデータは嘘つかない】球筋やスピン量をコントロールしたいパワーヒッター向き。ヤマハ「RMX VD ツアーモデル」アイアン

多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はヤマハの『RMX VD ツアーモデル』アイアンを取り上げる。

スクエアに構えやすいツアーモデル

さっそく、7番アイアンのクラブやヘッドを試打・計測していこう(計測シャフトは「ダイナミックゴールドEX ツアーイシュー(S200)」)。すべて実際に測定した数値になる。クラブ長さが36.75インチとやや短いが、クラブ重量は441.9gと重いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが274万g・㎠と大きくなっている。この数値だと本来はドライバーのヘッドスピードが48m/sくらいのゴルファーにとってタイミング良く振れる設計といえるだろう。

次に形状を見ていこう。ヘッドはツアーモデルらしくオーソドックスな形状、かつ小ぶりで、フェースプログレッション(FP値)が4.8ミリとストレートネック。そのおかげでラインに対してスクエアに構えやすくなっている。ライ角が61.2度とややフラットで、球をつかまえ過ぎないイメージも出ている。実際に試打すると、フェース長は短く、トップラインがストレートで、トウ側の逃がし感もあり、球をつかまえ過ぎないイメージが出ている。『ツアーイシュー』というだけあって、シャフトは標準の『ダイナミックゴールド』よりも少し重く、ダウンブローに打っても耐えてくれる。

Point1 クラブ重量は441.9gと重い
Point2 クラブ全体の慣性モーメントが274万g・㎠と大きい
Point3 クラブ長さが36.75インチとやや短い

ヒール寄りで打つフェーダー向け

ロフト角が34.0度と、ツアープロを基準とし、ヘッドスピードが速いゴルファーを対象としたロフトセッティングで、米PGAツアープレーヤーなら180ヤードくらいを狙うのだろう。小ぶりヘッドのおかげで重心距離が33.1ミリと短く、その結果、ネック軸周りの慣性モーメントも4604g・㎠と小さいので、ヘッドの操作性が良く、インテンショナルにドローやフェードといった弾道を操作しやすくなっている。また、フェースが短い影響でラフからのヘッドの抜けもいい。フェース面のスイートスポットはかなりヒール寄りの設計で、ダウンスウィングで球をヒール側に引きつけて打てるフェード系プレーヤーとの相性が良さそうだ。また、ソールのバウンス角は1.3度とツアーモデルにしては少なめで、あまりターフを取らないゴルファーに向いているだろう。

日本のシニア向けモデルのような超ストロングロフト設計ではないので、もちろん球は上がりやすく、また軟鉄素材で、フェース面の厚みもあることから、軟鉄らしいソリッドな打感を感じられる。そして、一般の7番よりもバックスピンの量が多いので弾道は安定し、狙った距離をキャリーさせてグリーンに止めやすいクラブといえる。ストロングロフトアイアンと違って飛び過ぎ感はないので、ヘッドスピードの速いゴルファーのスコアメイクに役立ちそうだ。

左から、5I(27度)、7I(34度)、9I(42度)。ストレートネックでラインに対してスクエアに構えやすい。ライ角がややフラットなため、球をつかまえ過ぎないイメージが出ていて、上級者が好む顔だろう

【クラブ&ヘッドデータ実測値】

ヤマハ

RMX VD ツアーモデル アイアン

松尾好員

まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰

週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号