【笑顔のレシピ】Vol.132「ラウンド前の練習は“絶対”ではない」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
皆さんはラウンドの前に、練習するかどうかを決めていますか? 長時間運転をした後や気温が低い冬などは体が固まってしまっているので、ボールを打つことで体を動かしやすくはなります。
ですが僕は教え子に対して、「ラウンド前は必ず練習するように」とは伝えていません。
なぜなら練習を“絶対のお約束”にしてしまうと、ボールを打てる環境がなかった時に、ベストなパフォーマンスを出すことができないからです。
練習場の有無くらいは事前に調べられるかもしれませんが、当日緊急の工事をしていてレンジが使えない可能性もあります。ほかにも、思いもよらぬ渋滞に巻き込まれ時間がなくなってしまうこともあるでしょう。
そうした想定外に遭遇したとき、柔軟に対応して結果を出せる選手が本当に強い選手だと思います。もちろん事前の準備は大切ですが、いつも想定通りにいくとは限りません。
これはビジネスでも同じではないでしょうか。例えば計画を立てて何かを作ったり売ったりするとき、自分や同僚の失敗、先方の都合で想定外の事態に陥ることは多々あるでしょう。
「事前の計画が甘かった」と言われればそれまでかもしれませんが、家庭生活や働き方の多様化が進む時代にすべてのリスクを事前につぶすのは現実的ではありません。
大切なのは、事が起こってしまったときに上手く収める立ちまわり方です。代えの利かないピースをたくさん緻密に作っておくより、足りなくなった枠にハマるものを自分の力で創り出す。ジュニアの選手たちにはそんな考えを身につけてほしいと思います。
これからいよいよ夏本番となり、気温がぐんぐん上がってきます。“ラウンド前の1コイン”をマストにされている方は、あえて練習は控え、体力を温存してベストなパフォーマンスを出すというやり方も試してみてください。きっと今後、ゴルフの幅も広がってくるはずです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月26日号より