【ガレスの教え】#1 畑岡、金谷、中島…チームジャパンを強くした“練習”に対する考え方とは?
7年前に来日し、ナショナルチームのコーチに就任したガレス・ジョーンズ。以来、畑岡奈紗や勝みなみ、金谷拓実、中島啓太、桂川有人など、世界に通用する強い選手たちを次々と世に送り出している。果たしてガレスは何を変えたのか? 本人を直撃した。
TEXT/Mika Kawano ILLUST/Yukio Asaka PHOTO/Tadashi Anezaki
●CONTENTS●
#1 ガレスが変えた“練習”に対する考え方
#2 マネジメントの基本は“ゼロライン”
#3 アプローチこそ“オンプレーン”
#4 スウィングを制御するのは腕ではなく体
練習の考え方を180度転換
14年、自国開催の世界アマで日本チームは29位と惨敗。ナショナルチームの再生を託され、ヘッドコーチに就任したのがガレス・ジョーンズだ。
「プロとして2年間プレーしたあと、ティーチングを始めました。昔はレッドベターの影響を強く受けましたが、フィジオセラピスト(理学療法士)と出会い、体とスウィングの関係の重要性に気づきました。理学的見地に加え心理学、栄養学を融合しトータルな指導を行っています。当時の日本選手の練習はロングゲームが主流で、環境的な問題もあってショートゲームの練習量が不足していました。そこを逆転させ世界水準にすることが最初の挑戦でした」
ガレス流ではショートゲームの練習が65%、残り35%をロングゲームに当てる。そこにディーププラクティス(後述)を導入すると練習の質は格段に向上する。さらに重視しているのが「事前準備」だ。
試合前はプランニングとプレパレーションが必須。練習ラウンドでは、グリーンのどこが平らか、目だけでなく足裏の感覚を研ぎ澄まし、計測した数値とフィーリングをマッチさせ、そこから得た情報を書き記し、メモを作る。
ガレスの教えを忠実に守った畑岡奈紗が、16年に日本女子オープンでアマチュア優勝という成果を挙げたことでチームの意識は大きく変わった。「最初は半信半疑だった」という金谷拓実も、「奈紗ちゃんが勝つ姿を見て自分も真剣にやってみよう」とガレスに傾倒。小さな雪の粒が転がって大きな雪だるまになるように金谷がアマチュア世界ナンバー1に上り詰めると、今度は中島啓太が続いた。男女ともに『JAPAN』が世界で注目される存在になったのだ。
ガレス来日はまさに“黒船”
「強いニッポン」計画がスタート
【2015年 創設期:ガレスコーチ就任】
練習の仕方、練習量、戦い方などやり方を180度変えた
もともとゴルフの上手い選手たちだが、練習法からコース攻略法まで細部にわたりガレスの指導で激変。「そこまでやらなきゃダメなの?」の声も上がった
【2016年 黎明期:ガレスコーチ始動】
最先端科学を取り入れ体とスウィングをセットに
理学療法を取り入れ体とスウィングの関係を分析。細かいデータで弱点を洗い出し、個々に最適な指導を行う。グリーンから逆算するマネジメントも徹底
【2018年 成長期:教え子たちが活躍】
畑岡、金谷といった教え子が世界中で活躍し始める
日本女子OP優勝の成果を挙げた畑岡に刺激を受けた金谷が世界で活躍。国内外を問わず、どこで戦っても物おじせず本来の力を発揮する選手が続出する
【2020年 安定期:選手層が厚くなる】
ナショナルチーム出身者が一大勢力に
男子では金谷、中島、比嘉、桂川、女子では黄金世代以降の若手すべてがガレスの教え子。本番に則した練習、事前の戦略構想で世界に羽ばたく
ガレス・ジョーンズの「強いニッポン」計画とは?
●戦い方(事前準備)やマネジメントを変えた
●練習の質・量ともに変えた
●体とスウィングをセットで考え効率重視の打ち方に
●ディープラーニング(プラクティス)
「理学療法士との出会いが鍵でした」。スウィングの形を変えるのではなく、体の弱点を強化してスウィングを向上させる指導法で次々と選手を一流に
>>#2 マネジメントの基本は“ゼロライン”
>>#3 アプローチこそ“オンプレーン”
>>#4 スウィングを制御するのは腕ではなく体
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月21日号より