【笑顔のレシピ】Vol.123「子どもの成長とともに親の役割も変わります」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW PHOTO/Takanori Miki
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僕はレッスンであまり技術的なことは教えず、本人に気づかせるような指導をしています。ただ、この“教えないの度合い”は、選手の成長段階に応じて変化します。一般的に上達をしていけば技術的な理解度も深まるので、教えることが増えていくと思われていますが実は逆。
クラブや体の動き、ボールが飛んだりスピンがかかる原理などをわかってくると、「次はこれもできるはずだ」と上のステップのことを教えがちですが、僕は「それがわかってるなら、次の課題は自分で気づいてね」というスタンスです。以前は、あれもこれも教えてできるようになってもらいたいと思っていましたが、今は選手たちが悩んだり試行錯誤して次の一段を自力で登ろうとする姿を見守るようにしています。
こんなふうに、技術や知識が増えるほどコーチの役割は減っていくというのが僕の考え。これは選手の親御さんも同じで、成長によって関わり方を変化させてほしいと思っています。初心者のころは、とにかくゴルフの楽しさを教えてほしい。一緒にゲームを楽しむような感覚だと早い段階でハマってくれます。
芯に当たる、遠くに飛ぶようになるなどできる事が増えてきたら、頑張りに対して目いっぱい褒めてあげてください。それが本人のやる気アップにもつながっていきます。
難しいのはその先。なぜなら成長するほどに褒められる回数が増えるので、「これくらいで褒められても」という気持ちにもなってくるからです。これは上手くなっているプライドの裏返しでもあるので、悪いことではありません。ただその段階になったと思ったら、ゴルフに関しては「お疲れさま」の一言をかけるだけにするというのもコミュニケーションの一つです。
逆に上達したことで天狗になり、時間にルーズになるとか道具を粗末に扱うという場合には、しっかり向き合って人として守らなければならないことを教えるというのが、親御さんにこそできる役割だと思っています。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より