C・H・アリソンと井上誠一をテーマにした写真展が銀座で開催
名匠、井上誠一の設計した全国のコースを撮り続けている写真家がいる。その写真展の今回の新味とは――。
写真家の名は山田兼道氏。全国に散らばる井上設計の38コースを、23年前から追いかけている。自身が井上設計コースである鶴舞CCの会員であったことも下地にあり、50歳で独立を機に、コース景観のなかに日本文化の原風景を求めたのだという。
実際の撮影は、3日間かけても絶好の“光”が現出しないこともあり、苦労話は腐るほどある。そうやって撮られた写真は、すでに写真集『大地の意匠』(小学館スクウェア)として結実している。また新書『いつか、ここで。井上誠一のゴルフコース』(小社刊)はロングセラーとして今も売れ続けている。
実は写真展も過去5回ほど開催しているのだが、今回のそれは新趣向に満ちている。
副題が、C・H・アリソンと井上誠一「山田兼道写真企画展」、主題が「ゴルフ西と東」。
期間は5月16日~30日。場所は資生堂銀座ビル2F。
目新しいのは、JGAゴルフミュージアムから借り受けたアリソンと井上誠一の“自筆”のコース設計図が展示されることだ。
アリソンの東京GC朝霞コースの設計図は、長らく行方不明となっていたが、同ミュージアムの参与である武居振一氏が倉庫の中に眠っていたのを発見し、現在は額装して掲げられている。
アリソンは1930年に来日し、約4カ月間滞在した間に、東京GC朝霞コースをはじめ、廣野GC、川奈ホテルGCなどの設計図を描き、霞ヶ関CCや鳴尾GCの改修など、日本のコース設計の基礎を確立した。そのアリソンと井上誠一の接点は、井上が病気療養中に川奈ホテルに滞在していた折、アリソンが立ち寄ったとされるが、それを記録した文献はない。井上の長女、瑛子さんは「パパはアリソンさんがゴルフする時はキャディや球拾いしたと言っていました」というが、確かな記録はない。
しかし、井上は以後、憧れのアリソンを目標に猛勉強し、コース設計で柔らかな女体を思わせる曲線をマウンドで表現する術を確立したといえるだろう。
「あと、JGAさんからはガッタパーチャボールの変遷、英国の歴史写真などもお借りして、西洋文化、東洋文化の比較をという気持ちもタイトルに込めました」(山田氏)
井上の世界に耽溺(たんでき)し、貴重なアリソンの設計図を見るだけでも会場へ足を運ぶ価値がありそうだ。
週刊ゴルフダイジェスト2022年5月3日号より