【世界基準を追いかけろ!】Vol.84「目澤が考えるレッスンの本質とは?」
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。2022年レッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞した目澤秀憲。今回はツアープロコーチになった6年前から受賞に至るまでの道のりを黒宮ととも振り返ってもらった。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD 2022年度のレッスン・オブ・ザ・イヤー、目澤さんが受賞されました。
X 歴史ある賞ですから、とても素晴らしいです。
GD 第1回は1987年の田原紘さんでした。
目澤 僕はそのときはまだ生まれていないです。
GD 目澤さんが生まれた91年はレッドベター(※1)、94年はブッチ・ハーモン(※2)が受賞しています。
目澤 ブッチとかレッドベターと同じ賞をもらえるなんて、光栄ですね。
GD 受賞の率直な感想を聞かせてください。
目澤 1987年から今までの間に、スウィング理論や考え方のアップデートは目覚ましく行われてきましたが、レッスンは人との関わり合いだという本質はずっと変わっていなくて。この賞は、そういう本質的なところをずっと考えてやってきた先人たちが受賞してきたものだと思っています。コーチとしてぜひとも取りたい賞でしたので、僕にとって大きな意味を持つことになったと思います。
GD 黒宮さんは目澤さんの受賞で感慨はありましたか。
黒宮 僕がコーチになった時に、最初にいろいろなことを相談した相手が目澤君でした。当時は若いコーチが発言することはなかなか認められず、経験がモノを言うような感じがありました。僕らはある意味、そういうものに挑戦したいと思ってやってきたのですが、目澤君がこの賞を取ってくれたことで、自分たちがやってきたことが認められたような感じがして嬉しいですね。
GD お二人が志を抱いてコーチの世界に入って6〜7年が経ちましたが、状況は変わりましたか。
黒宮 最近は有益な情報であったり、優良なレッスンを受けておきたいという選手が多くなったんじゃないですかね。
目澤 ツアーコーチをやりだしてから2年目で、たいしてお金を稼いでない頃に150万円くらいの投資をして自分でフライトスコープを買ったんです。でもそれを持ってツアー会場に行ったら、「彼らはいったいあんなの使って何をやってるの」という感じで見られ、フェースアングルやクラブパスといったデータを数字で示しても、「そんなの関係ないよ」と言われたこともあって、受け入れられなかったんです。でも今ではプロたちのクラブのフィッティングの際にメーカーの担当者が必ず弾道測定機器を持って来るようになりました。また「関係ない」と言われた数字が技術の習得に欠かせないものになってきて、データで得られたものをいかに感覚的な部分に繋げられるかも次の大事なテーマです。僕らが掲げたデジタルとアナログの融合とそのための勉強と歩みは止まらないと思います。
GD 今後の展望は。
目澤 松山英樹プロのような世界のメジャーを取れる選手が出てくる手助けを引き続きしたいですし、ジュニアの育成にも本格的に取り組んでいきたいです。そのために自分自身のティーチングスキルを深めていきたいと思っています。
(※1) ニック・ファルド、アーニー・エルス、ミッシェル・ウィらを指導し2017年にはPGAティーチャー・オブ・ザ・イヤーを受賞。1990年に自らのスウィング理論を体系化したレッスン書「The Golf Swing」(邦題「ザ・アスレチック・スウィング」)を出版。90年代初頭に彼が提唱した腕と体を同調させる「ボディターン」は一世を風靡した。(※2) ツアープロを経てインストラクターに転身、90年代初頭にグレッグ・ノーマン、1993年から2004年までタイガー・ウッズ、2007年から2015年までフィル・ミケルソンなど、ほかにも多くのトッププロのコーチを務める。父親のクロード・ハーモン・シニアは1948年のマスターズチャンピオン
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2022年4月26日号より
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