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【世界基準を追いかけろ!】Vol.83 まるで大谷翔平の「スプリット」! 勝負所で放つ松山英樹の“決め球”とは?

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は前回に続き松山英樹の強さについて。黒宮コーチが学生時代に松山に感じた凄さや感覚の鋭さを話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD マスターズで連覇がかかる松山英樹ですが、その彼の強さを学生時代の対戦経験から黒宮さんに語ってもらいます。

黒宮 英樹の決め球は確信性があって止められるフェードです。僕と目澤君は、4年前からフライトスコープを使うなどして選手たちに、「曲がり幅があるわけだからボールが止まるまでを考えてターゲットを決めないといけない。それがターゲットを狙う競技だから」と教えていたんです。でも普通の選手は落下地点をターゲットにしがちですけど、昔から英樹は止まるところまで計算してターゲットを設定していましたね。それは、落下角とかスピン量とかもすべてを把握しているからで、すべてが完全領域に入っているという球でした。

X フェードの精度の高さは、学生時代から凄かったんですか。


黒宮 今でも覚えていますが、ある試合のスタートホールは、左がOBでどう考えてもティーショットはドローのロケーションなんですが、英樹は自信があるから左の林に打ち出してから右のフェアウェイにティーショットを打ってきましたからね。対戦相手からするとあのフェードを打たれると心が折れるんです。でも、いつも打つわけじゃないんですよ。

X どういうことですか。

黒宮 試合中に、それまでずっとドローを打っていたのが、終盤にきて突然フェードを打ったりするんですよ。それを見て、「その手があるんかい」、今までは俺と闘っていなかったんだってなって。それで完全に心が折られるんですよ。

X 完全にコースと闘っているということですよね。

黒宮 日本学生の時も彼は17番、18番でしかフェードを出してこないんですよ。締めくくりでクオリティが高いフェードを使われるから、そこで完全に心が折られてしまう。

 メジャーリーグで活躍している大谷翔平が投げる「スプリット」みたいなもんなんでしょうね。去年のマスターズの18番でもフェードでしたよね。ここぞという時に打つ勝負球みたいな感じなんですかね。

黒宮
 凄いって思ったエピソードでいえば、学生時代の試合で、こだまGCの10番のティーショットを英樹は毎回同じところに立って、毎回UTで打つんですよ。撮影したビデオで見ると、毎日弾道も変わらず落下地点もほぼ同じだったんですけど、日によってショット後にクラブから手を放している時と、放していない時があるんです。その理由を英樹に聞いたら、「同じところにボールは行っているけど、球質が違う」と言ったんですよ。要するに、ボールのちょっとした引っかかりみたいなことで、結果は同じでも、気に入らなかったりするんだって思いましたね。当時からそんな感じでしたね。

 アプローチでいったらスピンがしっかりかかったのと、スピンが少し解けて数センチ転がったくらいの違いなんでしょうね。見ていたところが、普通の選手とは違ったということなんですね。

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月19日号より