【PGAツアーHOTLINE】Vol.25 トニー・フィナウ「フェースが開かないための2つのポイント」
PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOTLINE」。第25回のテーマは前回に引き続きトニー・フィナウの“スライス克服法”について。
ARRANGE/Mika Kawano
左手の手首に丸みをもたせる
オープンフェースでビッグスライスを打っていたトニー・フィナウが、曲がり幅の少ないパワーフェードを習得するため取り組んだスウィング改造の話です。最初のステップはウィークグリップをスクエアグリップにすること。
「アライメントで大事なのは足とか肩ではなく右前腕の向き。そこをターゲットに向けるのが重要」とフィナウ。右手を以前より下から握ることで右前腕がターゲットを指すようになったというのです。
「右前腕の位置が高いと手首をアグレッシブに使ってクラブを返す動きが入る。だからインパクトでフェースが開いてスライスになる。でも腕をスクエアにしたことでリストの動きが抑えられ、手首ではなく肩でクラブを操作できるようになった」
もう1つのポイントはトップでの左手首の角度。
「ビッグスライスを打っていた頃はトップで左手首が甲側に折れていた。その時点でフェースはオープン。手首に丸みを持たせるように意識してフェースをスクエアに保っている」
基本的にはグリップを変えただけですが、それが一連の動きすべてに効力を発揮するとフィナウはいいます。
以前はウィークグリップでクラブの軌道は極端なアウトサイドイン。大きく右に曲がるスライスが出ていました。でもグリップを変えることでアライメントが改善され、手首を使わず体を生かすスウィングに生まれ変わったというのです。アウトサイドインも弱まりラフではなくフェアウェイ、悪くてもファーストカットに収まるフェードが打てるようになったというわけ。
アドレスを大きく変えて、弾道を変えたというフィナウ。アドレス時にグリップ、そして腕の向きを変えただけで、球のつかまりがよくなり、飛距離のロスが少なくなった
20-21年のスタッツもティーショットが右ラフに飛ぶ確率が15パーセント程度に抑えられ、ティーショットの精度が上がっていることがうかがえます。
何よりも昨年8月プレーオフシリーズの初戦ザ・ノーザントラストで5年ぶりに2勝目を挙げたのは、スウィング改造の賜物でしょう。その勝利で世界ランクも自己最高の9位に浮上し、昨年末のライダーカップでも米チームの大勝利に貢献しました。
スライスを打っていた頃のスピン量が4400回転だったのに対しフェードでは2800回転。スピンを減らして飛ばすスタイルは、フィナウにとって今後も大きな武器になるでしょう。
コーリー・ヨシムラ
PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前
週刊ゴルフダイジェスト2022年4月19日号より