【小祝さくらのゴルフ道】<後編>謙虚に、ストイックに「“1勝”を積み重ねる」
昨シーズン5勝を挙げ、獲得賞金2億円超え(3位)を果たしながらも、に入りながらも「後半戦は何をやっても上手くいかなかった」と語るほどショットの不調に苦しんでいたという小祝さくら。このオフ、どんなことに取り組み、2022年はどんな目標を掲げているのか。さらに詳しく話を聞いた。
PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Tadashi Anezaki
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- 昨シーズン、最後まで賞金女王争いを演じた小祝さくら。プロ入り5年、確実に成長しつづけてきた。ちょっぴり天然、でもショットはキレる――。そんなさくらは2022年の開幕戦を、ディフェンディングチャンピオンとして、さらには賞金女王有力候補のひとりとして迎える。 PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Shinji Osawa、Tadashi Anezaki 小祝さくら1998……
開幕戦のダイキンに勝利し、賞金女王最有力と言われ続けた1年、プレッシャーはあったのだろうか。
「開幕後から言われたので。皆、めっちゃあおるなあって(笑)。まだ1勝じゃない! と思っていて、周りの声はまったく気にしていませんでしたが、夏に2勝し狙える位置にはいたので、取りたい気持ちはありました。でも力が入るというのはなかった。それより思うスウィングができなくなっておかしくなって……」
実際、逃した魚は大きいのか。
「そうですね。やっぱりあの位置で取れなかったのは悔しいというか、すごくもったいない。でも、まだまだ実力が足りないんです」
しかし、あまり調子がよくないときにも勝利を挙げられたのは、メンタル面やマネジメント面での成長でもあり、自信にもなった。
「調子だけでは優勝はできないこともわかりました。夜寝る前にコースチェックやイメージラウンドをしたりもしました。優勝するときって噛み合うんです。ラッキーなことも多かったですし」
ラッキーを呼び寄せるため、トイレの水回りの掃除をしたりもする。
このオフ、自分の頭で考えけっこう頑張りました
このオフは、年末年始に1週間程度地元北海道に帰省し、外出ができない状況のなか、馴染みの練習場に通いつつ、ゆっくり過ごした。
「地元の神社に初詣に行き、お雑煮を食べたくらい。今年は雪が多かったですけれど、家の中にいたのであまり感じていません。雪だるまは作らないですよ。北海道の雪はサラサラしているから、水をかけないと硬くならないんです(笑)」
その後は千葉に戻り、沖縄、宮崎、関西と各地でプチ合宿をして、男女のプロ仲間といろいろなコースをラウンドしながら課題をこなしていった。
「オフは、ショットの精度を取り戻すための練習をしました。ドライバーもアイアンも狙ったほうにしっかり打っていけるように。今は飛ばすより安定させたいんです」
いろいろなプロと回ることが、勉強になっているという。
「先日、男子プロの方にアドバイスされたドライバーの打ち方が参考になった。『軌道をカットめに意識してみたら』と。インサイドに振る意識でやるとよかったんです。自分の頭で考えたり、動画を見てチェックすることも多くなりました。難しさもありますが、新鮮です。これからもいろんなことにチャレンジしてみたいんです」
自分で変化しなければ進化はない。23歳はいまだ成長過程だ。
同世代ライバルとともに。若い世代にも食らいつく
植竹勇太や片岡尚之ら北海道出身の若手男子プロも活躍している。
「頑張ってますよね。尚くん(片岡尚之)は同じゴルフスクールだったんです。すごく活躍していて人気もある。ゴルフ界を盛り上げてくれそうなひとりなので、いつも応援しています。尚くんはパターが上手いので教えてほしいと思っているんですけど、基本、彼は感覚派だから別に教えることはないという感じらしいです(笑)。でも、機会があれば、ぜひ!」
“黄金世代”と言われ、女子ツアーを引っ張ってきた小祝。古江彩佳、同級生の渋野日向子たちがアメリカ挑戦に向かった。
「すごくいいライバルで、アマチュアの頃から一緒に頑張ってここまで来ました。皆、海外に行っちゃって寂しいんですけど、私は今のところ行く気持ちはないです。以前は一緒に挑戦したい思いはあったんですが……。でもメジャーには参戦したい。ただ今年はチャンスがあってもコロナ禍なので……。隔離がなければ行きたいんですけど、なかなか厳しいですよね」
だからこそ、日本ではしっかり戦いたい。今年も今のところ全試合に出るつもりだ。
「迷ってはいます。でも、シード権がポイント制に変わっていくので、出られるなら出たほうがいいのかなと。調子を見たり、調整が必要になれば休もうかと考えています。それに、新しい世代の若い子がどんどん出てくるので、自分も付いていけるように頑張らなければと思います」
昨年8月、優勝したNEC軽井沢72ゴルフで。この頃まではショットの調子もよかったが……。「もともとショットには自信があった。取り戻した精度を見てほしいですね」
最近のリラックス法は自宅やホテルでお風呂につかること。
「入浴剤はジャスミンやラベンダー。癒しですね(笑)」
音楽を聴いたり、ネットフリックスを見たり、プロレスラーのオカダカズチカの応援に行ったりもする。
「3、4年前から好きです。プロレス自体はゴルフと全然違いますが、ストイックさは勉強になる。プロゴルファーも年間試合数は多いですが、より多い試合数で、いろんな県をまたいで移動し試合をして、ものすごく体力を使って。本当に好きじゃないとできないですよ」
ほんわかした空気に包まれた小祝の、芯の強さが垣間見える。
謙虚な気持ちを忘れずに
「今まで一番自信があったショットを取り戻そうと、オフはトレーニングや練習をかなり頑張ってきました。今年はまた、曲がらないショットを見てほしいですね」
今シーズンの目標は「1勝目をしっかりと前半戦で挙げること。そこからいい流れをつくっていければいいという感じです」。
賞金女王とは言わないのか?
「最終的には取ることが目標ですが、いきなり言っても……。何勝も積み重ねていかないとなれないので、まずは1勝をと」
昨シーズン5勝しても届かなかった女王の座。だからこそ、1勝の積み重ねを大切にしたい。
「謙虚な気持ちを忘れずにやりたいです。『謙虚』って、今年に限らず、ずっと自分のなかにある言葉なんです。ファンの方と会場で会う機会も減りましたし、会ってもソーシャルディスタンスなどでなかなかコミュニケーションを取ったりサインもできなくて申し訳ない感じです。私も無観客だと試合勘がつくれなかったり、優勝してもシーンとして実感も少ない。早く、多くのギャラリーのなかで試合をしたいですし、そこで優勝する姿をファンの方に見せられるように頑張りたいです」
小祝さくらのプロ6年目のシーズンが幕を開ける。
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月15日号より