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【飛ばし】小さい体で何であんなに飛ぶの? キャリー369㍎。みんな大好きマキロイ!(後編)

ドローを打つには、ボールをつかまえる動きが絶対に必要という武市プロだが、マキロイは腕やフェースを返してドローを打つ意識はないという。後編。

【テクニカル②】
右手で球を叩く

【解説/武市悦弘】167㌢と小柄な体格ながら、1年で100㍎飛距離を伸ばし、最高348㍎を記録したティーチングプロ。今年に入り、今まで以上にスウィング研究に没頭する日々を送っている。2013年レッスン・オブ・ザ・イヤー

 

Q、マキロイってフェースを返してるの?

A、いいえ。脱力してそう見えるだけ。返す意識はないはずです。

武市 下のフォローの写真、左右の前腕がくっ付いていますよね。これだけ見ると、腕やフェースを返しいていると思う人がいるかもしれませんが、実際はそうじゃない。上手く左右の手でバランスをとっています。

武市 フックグリップで握られた左手は、トップまで形は変わりません。しかし、ダウンスウィングからインパクトまで左手甲が丸く張る動きになり、これで球ををつかまえます。

武市 そしてインパクト以降は、また甲側に折れてアドレス時と同じ状態に戻っています。これは、脱力しているから自然にできる動きなので、意図的に手首を動かそうとしてもできないので、注意してくださいね。

3つのポイント

【ポイント①】
フィンガーで握って両手を絞るように握る

左手をフックにして内側に絞ることでフェース面が返らないように管理する。逆に、右手はフェースを返すように絞り込むことで、ボールを叩く動きをする。左右の手が相殺し合いながら振れるから、フェースの向きを管理しつつ叩けるという。

【ポイント②】
脱力するから左手甲を張りながらインパクトできる

左手が張った状態でインパクトできれば、フェースが立った状態でボールをとらえられるので、インパクトでの当たり負けが防げ飛距離につながる。

ヘッドが重いので、脱力できていれば、ダウンで自然と左手甲が張る動きになる

 

左手甲が空を向くとフェースが開いてスライスしてしまう

 

【ポイント③】
インパクト後は左手甲の張りがなくなる

フォローでフェース向きが地面を指してしまうとフックになり、逆にフェース面が空を向くと、体のどこかを制御してフェース面が動かないようにしているため、方向性はいいかもしれないが飛距離は期待できない。

左手甲の張りがなくなる

 

【テクニカル③】
“不動の左ひざ”

ドローを打つには、インからクラブを振り下ろしてこなければならないのはわかるが、マキロイはどのようにして振っているのか。ポイントは左ひざにあるという。

武市 トップ間際の左ひざに注目してください。まったく位置が変わっていませんが、腰はすでにダウンスウィングの動きに入っています。これで体の右サイドにフトコロ(空間)が作れるので、インからクラブを下ろしやすくなるのです。

武市 手元の操作ではなく、脱力によってクラブを体の右サイドにストンと落としているので、力みなく振っていける。これも、つねに安定したボールコントロールを可能にしている秘訣でしょう。あとは、左足つま先を踏み込んで地面の反発を使いながら、体を高速回転させて振れるから、飛んで精度の高い球が打てるのだと思います。

【ポイント①】
体の右サイドにフトコロができインから振り下ろせる

テークバックからトップにかけて、左ひざの位置が変わらないが、右腰が大きく後方へ動いているのがわかる。これにより、体の右側に大きなフトコロ(空間)ができるため、クラブをインサイドから下ろしやすくなるという。

【ポイント②】
ダウンスウィングは左足つま先に思い切り踏み込む

マキロイの体の回転スピードを支えているのが、この左つま先側への踏み込み。いわゆる地面反力という動きになるが、踏み込んで反発する力を回転スピードに展開させている。体がバネのように伸縮するように見えるのはそのためだ。

×かかと体重になると左腰が引けてカット軌道に

 

マキロイのリズム&テンポを真似しよう

2拍子で下半身から迷わず振り切る

振り上げたら一気にフィニッシュまで振り切っているように見えるマキロイのスウィング。このリズム&テンポを真似するには、トップで“間”を作らず、2拍子のリズムを意識するといいという武市。このとき、腕で振り上げるのではなく、下半身の大きな筋肉を使うことで、クラブがつられるように動くので一気に振り切れてしまうという。

【ギア】
バランス「D7」!?

その破壊的な飛距離を生むクラブは、どのような仕様になっているのか。テーラーメイド・ツアー担当の真野義英氏に話を伺った。

真野 左へいかない仕様が大前提になります。もちろん、多くのプロがそうかもしれませんが、マキロイの場合はドローを持ち球にしているので、つかまりすぎて引っかけが気になると、気持ちよく振れない原因になりますからね。

マキロイ本人に直接いま使用するドライバーについて話を聞いたところ「過去のドライバーにくらべてもスピン量が抑えられている」と教えてくれた

 

真野 そのために、ヘッドは重心深度が浅めのものを好む傾向にあります。重心深度が深いと、ロフトが寝やすくスピン量が増える傾向にあるからです。ドロー打ちなので、入射角がゆるやかでアッパー軌道。自分自身のスウィングで打ち出しを高く確保できるので、クラブ性能で無駄なスピンを入れたくないんです。スピン量が増えると曲がる原因にもつながりますしね。

マキロイが使用しているテーラーメイドSIMのフェース面。ティの痕跡から真ん中よりほんの少しトウよりに当たっていることが推測できる

 

バランスはなんと「D7」以上あり、ヘッド重量をとにかく重くしているとか。衝突エネルギーが増え、それが飛距離につながっているのは間違いない。ここ数年使用する『クロカゲ』もマキロイならではの理屈と真野氏は言う。

真野 走らず、しならない棒のようなシャフトが好きなんです。自分が仕事するから、シャフトに仕事をさせないという感じです。スウィングを邪魔しないギアを選択しています。

テーラーメイドSIM(9度)

ヘッド内部にジェルを挿入し微調整をしているというマキロイ。「ヘッド重量はとにかく重いです。バランスはD7以上あり、ひょっとしたらEバランスが出ることもあります」(テーラーメイド・真野氏)

テーラーメイド M5(9度)

ソールの2つのウェートをやや前方よりにしている。ホーゼルの可変機能でロフトを立てるとフェース面が開くため、この仕様にしている。これもつかまりすぎを防ぐポイントとなっている。

テーラーメイド M3460(8.5度)

2つのウェートをフェース側に寄せて、かなり重心深度を浅く設定している。これによりバックスピンの量をかなり抑えることができる。

【フィジカル】
筋トレからの打球練習

もちろん、トレーニングなくしてあの飛距離を出すことは不可能。実際、トーナメント中でもシャツがびしょ濡れになるほど、トレーニングをしてラウンドへ向かうマキロイをGD編集部員も目撃している。ゴルフにおける筋トレについて、武市プロはこう分析する。

米ツアーで筋トレは当たり前

 

マキロイ 米ツアー選手は、いまは当たり前のように筋トレしているし、そうでなければあの飛距離は不可能(笑)。でも逆に、筋トレしてパワーがあるから腕力に頼らず、脱力して振れるのかもしれません。みなさんも、体を壊さない程度にトレーニングを取り入れるのもいいかもしれませんね。

7年前に来日したときに撮影したマキロイのトレーニング。現在は、このときとくらべものにならないくらい、バキバキに肉体改造を行っているという

 

ローリー・マキロイ特集 完

PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Seiichi Nomura、ARAKISHIN

週刊GD7月7日号より