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【ゴルフ野性塾】Vol.1708 「謙虚さが明日のスコアを作る」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

今日11月4日。
一昨日の夕刻、

大濠公園を歩いた。
大濠迄、片道1キロ。大濠2周して4キロ、6キロ歩いた。
横に並んで歩く60歳過ぎの男と女、私を追い抜いて行った。
私の歩き、そんなにも遅いのかと思った。
追った。
男の足の動きに合せて歩いた。
横に並んだ。男が私を見た。
男がスピードを上げた。
1歩の幅と1歩のスピードが上った。スピードには付いて行けた。しかし、歩幅を大きくすれば1歩のスピードが落ちた。
離された。
脚の筋力、落ちた事を実感した。2人の足音、聞えなくなった。
後ろから大きい足音が追って来た。私より10センチは低い身長の男だった。中肉中背の体型なれど、ドタドタ走りで私を追い抜いて行った。
話し声が聞えた。
女性の声だった。走りながら語り合う2人に抜かれた。走る気にはなれなかった。
歩いた。
抜かれっ放しだった。
頭に来た。道の真中を歩いた。
私にとっては速くもなく遅くもない歩きのスピードだったが、大濠半周した時、半袖下着1枚、カシミヤセーター1枚の上半身、頭の中から汗が流れ始めた。
こんなにも汗かいたのは一昨年の秋以来だった。ベトベト体でマンションに帰った。マンションを出て2時間半過ぎていた。
「あら~、30分でお帰りかと思っていたのに2時間半も歩くなんて一体、何が起きてるんでしょうネ」
女房の野郎、やけに嬉しそうだった。そうかい、そんなにも嬉しいか、俺のヘトヘト帰りがッ。
「爺ィと婆ァに抜かれたんだ。俺、不愉快だった」
貴男、幾つ? 74歳でしょ。60歳の方を爺ィ呼ばわりは失礼ですよ。でも負けん気、まだ残ってたんだ。安心しましたよ」
決めた。
有言実行の旗、背中に背負って生きて行く。毎晩、大濠2周だ。そして、私を追い抜いた無礼者を追い抜いてやる。
体調絶好調です。
身長少し縮んで177センチ、体重86キロ。
痛い処、どこもなし。

左腕だけを使って
毎夜100振り。

100が切れず、打ち方を研究しているうちに、ダフリとトップが止まらなくなりました。先日のラウンドでは、ドライバーでチョロして、そこからアイアンの大ダフリの連続で50ヤードずつ進み、残り100ヤードからはトップして、グリーン奥にOB2連発です。いまはショットの半分以上がダフリかトップという状態で、どう振っていいかわからなくなりました。ダフリとトップを止める方法を教えてください。(埼玉県・匿名希望・33歳・ゴルフ歴3年・ベストスコア106)


ダフリ、トップ、シャンクにヒッカケと重なれば苦行だ。
金を使い、時間を使い、体力と気力をも使って気持ち壊れるを待つは苦行である。
それも四重苦の苦行だ。
それでもゴルフ止やめられないのはゴルフが好きだからと思う。
上手く打てた時の快感が好きなのか、己次第で手に入る夢と希望があるからか、いいスコア出た時の達成感と充実感があるからか、ゴルフ仲間と過せし時間が好きなのか、いずれにしてもゴルフ好きでなきゃ四重苦に耐えられるものではなかろう。
貴兄は幸運の人である。
ダフリ、トップは生じてもシャンクとヒッカケを打ってはいない。苦の中の2分の1で済んでいるゴルフじゃないか。
それを不運と思うか、幸運と思うかは貴兄次第だ。
不運と思えば矯正に入る。幸運と思えば長所伸ばしに入る。
それが継続事の習性と思う。
ダフリ、トップが連続して発生する現状、不運最悪と思えばダフリ、トップを出さぬ打ち方に向うが、その行動、シャンク、引っかけを生むと思う。
まだ俺は救われている、2分の1なんだからと思えば幸運の思考生ずる筈だ。
50ヤードでもいい、前に進んでいるのだからと思えばいい。
一緒に回っている方達、今暫しの我慢を。その内、ダフリ、トップとは縁のないゴルファーになってみせますからと己に言い聞かす。
周りは同情の眼で貴兄を見る。
そして、ダフリ、トップ、己が身に移るのはイヤだなと思う。
でもネ、貴兄は良き仲間に恵まれている。そして、それが一番の貴兄の幸運と思う。
普通であれば、皆、貴兄とのラウンドを逃げる。ダフリ、トップのスウィング、見たくはないからだ。一緒に回る人はインパクトの音を嫌う。次にスウィングを嫌う。そして伝播を恐れる。
それでも貴兄のゴルフに付き合う優しさと寛大さ。
貴兄は幸せ者だ。
この後、貴兄のゴルフにシャンクかヒッカケ生じれば、貴兄の幸運は遠のくであろう。
貴兄の友人、ゴルフ仲間は静かに穏かに、そしてヒッソリと去って行くと思う。
そう、貴兄は危うい時に私への相談を持ち込んで来た訳だ。
それも貴兄の幸運である。

ダフリ、トップは左右の腰の力の入れ様のバランス崩れを第一の原因と為す。
そしてダウンスウィング途中の眉間と鼻頭のラインの大きな変化を第二の原因と為す。
インパクト直後の左膝の伸び上がりを第三の原因と為す。
ヘッドアップしているとの指摘もあるが、左膝の伸び上がりがなきゃヘッドアップは生じない。
この三因の内、第三の修正が最も易しい修正であり、意識で出来るものだ。
一と二の修正は意識して為せるものではない。
一の修正はクラブ2本を持った連続の素振りが要るし、二の修正には頭を誰かに押さえて貰っての頭の動きの抑制が要る。
第三の修正を勧める。
ただ、貴兄の努力、10あるとすれば3の努力すればいいと思う。10分の3の努力である。
残り7は長所伸ばしに使うべきと考える。
ゴルフ歴3年でベスト106のスコアは悪いスコアじゃない。
ゴルフには卑下のスコアと増長のスコアあるが、変化生むは卑下のスコアである。
私の経験で申すが、増長のスコアは自己満足、自己評価、対人評価の香り強く、聞いてて楽しいものではなかった。

私はジュニア塾生に教えた。
己のスコアに増長するな、慢心生じれば、そこに上達障害の壁が出来るぞ、と。
「増長って何ですか、慢心って何ですか」と問うて来た。
「そうだった。お前達にはまだ縁遠き姿勢だったな。プロテストに通る前、プロになってから一つか二つ勝ちて、これからの夢を見る時に初めて出て来る気持ちとゆう事を忘れていた。でも覚えておけ。ゴルフはスコアに対して卑下の気持ち持ち続けている者が生き残るゲームだ。65の7アンダーで回った時、俺は天才、やっと実力通りのスコアが出たと思うか、65出たのは嬉しいけれど、あと1打縮める事が出来たと思う、まだまだ練習が足りてない、今日はパットが入ってくれただけ、もっと真剣にやらなきゃ駄目だと思うか、それが増長のゴルフか卑下のゴルフの違いだ。謙虚さを失くすな。謙虚さ失くせば長寿のゴルフは出来んぞ。プロスポーツ、世間への謙虚は要らん。己への謙虚が要る世界だ」と教えた。

卑下と増長は小さな分れ道と思う。しかし、そこでその後が変って行った。
貴兄は色んな打ち方に挑んで結果出せる人ではないと思う。
己のやる事に覚悟を持つの一徹さを必要とする方と思う。
左肩、左腕、左手の平に振りの意識持ちてのスウィングを勧める。左腕だけの振りである。
右腕は添えてるだけでいい。
サンドウェッジを持ちて一夜100回の素振り。1カ月で貴兄の振りのスピードは変る。
スウィングスピード強まれば回転態のスウィングが生じる。
スピードはスウィング軸を作る。ヘッド軌道、波打てば不安と自信稀薄の気持ちがダフリ、トップを生む。
貴兄は技で新たな体と心を作って行けばよいのです。
貴兄は幸運の人である。
仲間への感謝は必要だ。
しかし、それも貴兄の人徳か。
友を失くすな。
その為には一夜100振りに挑め。
健闘を祈る。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月23日号より