【笑顔のレシピ】Vol.101「自分のプレーをするだけ」ぶっきらぼうな答えにこそ真理があります
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
大きな試合や、年に1度しかないプロテストなど、選手には人生がかかるほどの大勝負というラウンドがあります。
当然、コーチとしては選手と一緒にコンディションや気持ちを高めていくのですが、その試合で結果を出すためだけの特別な取り組みというのはあまりやりません。
例えば、本番と同じ会場で行う練習ラウンド。やればやるほどコースを熟知することができ、対策が立てられそうなものですが、実はそんなことはないのです。
対策を立てるというのは、言い換えると、これまでやっていなかった特別な取り組みをするということ。つまりいつもやっていないことを、直前で突然始めることにほかなりません。普段の取り組みの延長線上にあるプレーや思考であれば問題ありませんが、これまで大して練習していなかった打ち方や攻め方をしても、上手くいかない確率のほうが高いのです。
プレッシャーのかかるラウンドほど、ただでさえ普段通りのプレーがしにくくなるのに、さらに成功体験の少ないことにトライするのは得策ではありません。
練習ラウンドをまったくやらないというわけではありませんが、雰囲気を知る程度に1度回れば十分だと思っています。
本番になれば、結果を出したいがために、いつもは2オンを狙わない距離でもトライしたり、芝質や風のような環境に即応しようとするなど、これまでとは違うプレーをしたくなることもあるでしょう。
この「やりたくなる気持ち」はとても大切。ただ、それを付け焼き刃的にやってしまうのではなく、持ち帰って普段の練習から取り組むようにしてほしい。そうすれば、ベースの力を上げていくことができるのです。
土曜日のゴルフ中継で、上位の選手に最終日の抱負を聞くと多くの選手が「自分のプレーをするだけです」と答えています。一見ぶっきらぼうに聞こえますが、結果を出したいときほど、特別なことをしないというのが重要になるのです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月16日号より