【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.55 「リフト・アンド・クリーン・アンド・リプレース」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Hiroshi Yatabe
フェアウェイに行ったのに、ボールに泥が付いたら不公平やからプリファードライのローカルルールで試合をする。前回はそんな話やったですけど、ボールに付いた泥を拭くだけやったら、別のローカルルールもあります。
リフト・アンド・クリーン・アンド・リプレースです。マークしてボールを拭いて、マークしたところにボールを戻す。
プリファードライは、6インチとか1クラブとか決められた範囲のなかで、好きなライに置けますが、これは“プレース”に対して、“リプレース”やから、好きなところやのうて、マークした元の場所に置かなあかんわけです。
もし元の場所がディボット跡やったら、そこに置かなあかんわけです。これやったら6インチOKの商店街のコンペやなくて、プロの試合らしく技術を駆使したプレーができると思うのです。
ある人から聞いた話で、自分で確認したのやないのですけど、ヨーロッパの試合では、地面が悪くなるとリフト・アンド・クリーン・アンド・リプレースの適用が多くて、アメリカではプリファードライでやることが多いそうです。
以前は日本でもコースコンディションが悪くなるとリフト・アンド・クリーンでやることもありました。せやけど、僕がシニアになってからは後援競技の1試合を除いてツアーでは雨が降ると全部プリファードライだけやったですね。
僕は何回もイギリスでの試合を経験していて、めちゃめちゃ悪天候のこともありましたけど、一度たりとも、ボールを拾って拭いてええなどというローカルルールが適用されることなんかありませんでした。
「フェアウェイに行ったのに泥が付いておるのと、おらんのとでは不公平やろ」という声も聞こえて来そうです。
せやけど、高い球で上からドスンと落とすから泥が付くんです。昔は泥が付かんように低く打つ練習なんかもやらされたもんです。それでも泥が付くこともあって、そんなときはどんな球筋になるかも練習しました。
不公平というのも考え方次第です。ラッキーもアンラッキーも均してみれば半々やないですか。
とにかくゴルフの精神の原点に戻って、「あるがまま」でプレーをやって、腕を磨く方向に向かってほしいものです。
「やっぱりティーイングエリアとグリーン上以外はボールに触ってはあかんというのが大原則で、それがゴルフの精神やと思うのです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月9日号より