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【林家正蔵の曇りのち晴れ】Vol.272「静岡の料理を堪能」の巻

緊急事態宣言下では、他の県をまたいでのゴルフなどはできませんでしたが、つい先日、友人からのゴルフの誘いで僕の大好きな静岡へ行ってきたんです。好きな理由のひとつである、食を堪能するためにもちろん前泊。ウナギか? 寿司か? といろいろと想像をしていましたが、想像したものは一切当たらず、フライのフルコースのお店へ。ここが美味しいのなんのって。そして、ここのご主人がゴルフ当日には朝食用のサンドイッチを作ってきてくれたんです。また静岡に行く楽しみがひとつ増えちゃいました

ILLUST/アオシマチュウジ

大好きな静岡で食すのは寿司? ウナギ?

静岡のゴルフ場は、相性がいい。初めて110を切ったのも、100を切ったのも90を切ったのも。そして初めてコンペで優勝したのも静岡のコースだった。

友人からの誘いで久々に静岡のゴルフ場へ。前日は、駅前のホテルで一泊。お楽しみは、前日の晩御飯から始まった。静岡のうまいものといえば、静岡おでん。

駅前の居酒屋でも名店と言われる店がいくつかある。ちょっと黒色がかった、アツアツの練り物に、青のりを散らしてハフハフと食す。静岡は日本酒もうまいから、おでんのつゆのうまみと塩味が後を引く。

おでんはもちろん美味しいのだが、寿司もいい。私の行きつけは、車で10分ぐらいのところにある「寿司鐵」。どこぞの会社のお偉いさんが使う店だと聞いてはいたが、敷居が高くないのが嬉しいところだ。

焼津で水揚げされたいい魚を握りでいただく。口の中で脂がとけてこれぞまさに口福。アナゴやこはだもいいので、つまみで飲んで、握りでもまた飲む。結局は飲みっぱなし。仕上げの巻物は、ワサビの効いたかんぴょう巻きだ。こいつと濃い目の静岡茶でさっぱりと仕上げるのが、林家流だ。

ウナギもよいですよ。富士の湧き水で2、3日泳がせたものを、その場で開く。ここからが勝負。店によっては関西風にそのままパリッと焼き上げる店と、江戸前風に蒸しを入れて柔らかく仕上げる店と分かれる。なかには、器用にお好みで両方味わえる店もあるのだが、好みとしては、ふっくらと蒸したものが好きだ。

身の余分な脂が落ちて、口の中でホロホロと崩れていくと同時に、たれと焼目と身のうまみの三重奏。ご飯はちょいと固めで、たれ多めが理想だ。

ごはんの前に、白焼。本場のワサビをたっぷりつけて、生醤油で。ワサビは醤油にとかず、トーストのジャムのようにたっぷりと塗ってよし。ツーンとくるのも、最初のうちでかすかな甘みすら、よいワサビは楽しませてくれる。


夕食の予想は大外れで初のお店へ

さて、友人におでん、寿司、ウナギのどれにするんだと問いてみると、全部外れだと答える。駅からタクシーに乗って10分くらい行った住宅街にひっそりとその店はあった。

ちょっと洒落た和風のお住まい。木戸を開けて中に入ると、カウンターが10席。メニューもなし。割烹着姿のご婦人に、飲み物を聞かれ、まずはビールで喉を湿らせる。アレルギーと嫌いな食材を尋ねられてスタートした。

まずは、千切りの山盛りキャベツ。店の人が味は付いておりますのでと言う。醤油ベースにかすかな酢の香り。美味しいのでパクパクと食べていると、「お腹はとっておいてくださいね」と優しく注意された。

「まずは」と出されたのが、マメアジのフライ。続いて小ぶりの天然の手巻き海老。れんこん、しいたけ、天然の鯛、イカと続いていく。なるほど、ここはフライ屋さんだとここで気がつく。気がつくのは少々遅いのだが、串カツほど大衆的ではないにしろ、揚げ物好きにはたまらないお店だ。

ひとつひとつも大きくないし、油がいいのか、すいすいとお腹に収まっていく。このお店のこだわりとしては、静岡でとれたものや、育ったもの以外は一切使わないということ。

合いの手としてチップスが出てきた。日本酒に変えていたのだが、ここはビールに戻す。このビールにもこだわりがあり、工場が静岡県内にあるものなのだという。パリパリの食感に土のよい香り。ポテトではなく、ゴボウのチップス。揚げたてのサクサク、アツアツが本当に病みつきになってしまう。

フライ屋のご主人がまさかの差し入れに

「締めは、海からおかへ」と口上があり、マグロのフライと牛カツが登場。マグロには醤油、牛カツにはソースの味付けでいただく。

最後の締めは、小さなカツ丼が出てきた。それもソースカツ丼か、卵でとじたカツ丼の2つから選ぶことができる。欲張りな私は、どちらとも決めきれなかったので、お腹と相談しつつ、両方いただいた。要するに揚げ物のフルコースのお店だったのだ。

その晩は、ぐっすり眠れた。翌日のゴルフ場へ向かう。するとエントランスに、昨夜の揚げ物屋のご主人がいる。一緒にプレーするのかと思っていたのだが、朝食用のサンドイッチを届けに来てくれたと言うのだ。コースの人と話はできているらしく、カフェにて食す。

海苔の佃煮にトーストと、自家製ツナと卵サンドが入っている。揚げ物はひとつも入っていなかった。

「天ぷらとフライは、スコアの足を引っ張るから」とのことらしい。静岡に行く楽しみがまた増えてしまった。

静岡の 新たな魅力に どっぷりだ

月刊ゴルフダイジェスト2021年12月号より