【世界基準を追いかけろ!】Vol.49 教え子が初めての海外メジャーで得た課題とは?
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は前回に引き続き、全米女子オープンにアマチュアとして出場した小暮千広さん、そのコーチとして帯同した黒宮幹仁、同じく帯同した橋本真和パッティングコーチの3人に、現地で感じたことを話してもらった。
GD 小暮さんの最初の印象は?
黒宮 めちゃくちゃ振れる子だなと思いましたね。球の弾き方も良かったですし、アライメントだけちゃんと教えていけたら、面白くなっていくかなと思いました。
GD プロの試合もほとんど出たことがなく、いきなり海外メジャー参戦だったと聞きました。
小暮 緊張するのはわかっていたんですけど、スタートホールに行ったら想像以上に緊張していて。いきなりティーショットを曲げたので、ちょっと「パッパラパー」に(笑)。
橋本 4パットでトリプルもありましたが、その先のホールでバーディ取って落ち着いてきましたね。
小暮 そうですね。初日はずっとショットはよくなかったですけど、パーパットはよく入ってくれたので、その後は大きく崩れることなくいけました。
GD 初めてのメジャーでの小暮さんのプレーは、コーチから見てどうでしたか。
橋本 よく90打たなかった(笑)。
黒宮 難しいコース(※1)でしたし、スタート後はもう、本人はがむしゃらにやるしかなかったと思います。なかなか余裕もないでしょうから、僕はコース内でミスの原因とか修正点を、客観的に指摘したり、整理してあとで伝えました。予選はなかなか通らないと思っていたので、土日は残って練習をして、すぐに修正できるように取り組みました。帰国後も、今回のメジャーで得た情報や課題を細分化しながら、自分なりに考えてもらうことも必要かなと思いました。
GD 橋本さんはパット専門コーチですが、小暮さんのパッティングの調子はどうでしたか。
橋本 実は、アドレスがゆがんでいて、真っすぐが真っすぐに見えない感じに構えていたんですよね。
小暮 右サイドが下がっていると指摘を受けました。
橋本 右サイドが下がるとプレーンが右を向くので、ちょっとこするような感じでアマライン(※2)に外すことが多かったんです。それでパッティンググリーンでは、ミラーを使ってアドレスを修正したり、ゼロラインと曲がるラインを徹底的に練習しましたね。傾斜がきついグリーンは慣れていないので、どれくらい曲がるかという練習を入れられたのは良かったですね。
GD お二人は、その場での対応や修正に力を入れたわけですね。それを受けて小暮さんは全米女子オープンを終えて感じた課題は?
小暮 やはり、調子が悪くなったときの直し方や修正力ですね。今回はお二人のコーチがそばにいて教えていただけましたが、一人でもやっていけるようにしたいです。
GD ここは世界でも通用したかなと思ったところはありますか。
小暮 黒宮さんには60〜100Y以内のショットは良かったね、と唯一褒められました(笑)。
GD 英語は勉強していった?
小暮 レキシー・トンプソンさんと練習ラウンドする機会があって、英語で「よろしく」って言われたので、「お願いします」って返しました。
GD 英語で?
小暮 いえ、日本語で(笑)。
GD 小暮さんは、世界のどこでもやっていけそうですね。
(※1)サンフランシスコの「ザ・オリンピッククラブ」。男子の「全米オープン」は5回開催されているが、アンダーパーでの勝利は66年2アンダー、87年3アンダーの2回。(※2)アマラインはフック・スライスしたときにカップの手前内側に外れるライン(薄めに読む)。プロラインはカップの外側を通っていくライン(厚めに読む)。プロラインのほうが、曲がり方次第でカップに入る確率が高いといわれる
小暮千広さん(写真中央)
日本で開催された全米女子オープン予選をアマチュアながら見事に勝ち抜き本戦に出場。日本のプロの試合もほとんど出たことがなかった。茨城県の明秀学園日立高校3年生
橋本真和コーチ(写真右)
数多くの女子プロがお忍びで教えを乞うパッティング専門コーチ。先端機器を駆使し、膨大なデータを基にコーチングを行っている
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年8月10日号より