【頑固オヤジのクラブ工房】Vol.143「“飛び系”に替えたらショートアイアンで飛距離がバラつくように…」
ILLUST/Kochi Hajime
東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。今回のお悩みは「飛び系アイアン」について。
Q.飛び系アイアンでミス増加!
いったいなぜ?
最近、プロモデル顔の飛び系アイアンが増えてきたので買い替えたところ、飛距離がバラついてグリーンを外すことが増え、スコアがまとまらなくなりました。なにかチューンできませんか。(53歳・HC10・会社員)
短い番手ほど
飛距離がバラつきやすい
オリンピックの影響で、カレンダーにあった休日がズレた、って騒いでるよな。まあ、今年は何かとイレギュラーなこと多いけど、仕方ねえと思うよ。
ワクチン接種、オイラは2回とも終わったけど、順調に進んでるようだから、9月ぐらいには普通にコンペとかもパーティ付きでできるようになるんじゃないかな。
「アイアン買い替えたのに、スコアが悪いんですよ、オヤジさん」
この常連さん、大学時代にゴルフを覚えて、社会人になってからは月イチプレー。シングルハンディを維持すべく、コロナ禍でも万全の態勢を整えて、ホームコースの月例競技に参加しているそう。
「4月に買い替えてからパーオン率が下がって、とうとうシングル落ちしちゃったんです。アイアン、直してください」
「新しいアイアン、どんなの?」
「軟鉄のプロモデル顔なんですけど、飛距離が出るタイプ」
「ああ、最近増えてるヤツだ」
「なぜか150ヤード以内で飛距離がバラつくようになって、グリーンを外すようになったんです」
「今までより1番手ぐらい飛ぶんだろ? 計算ミスかい」
「いや、飛んだり飛ばなかったりなんです。130ヤードを9番でオーバーするときと、大ショートするときがあるというか……」
「ちょっと9番、見せてみな。ああ、やっぱりロフトが立ちすぎてるんだよ、だからバラつくのさ」
プロモデル顔はスッキリ見える分、ストロングロフトに感じにくくなりやすい。でも実際は1番手前後、約4度はロフトが少なくなっている。
「こういうのは少し噛んだり薄めに当たると、距離が変わるんだ」
「どうしてですか?」
「シングル級の腕前だと、150ヤード以内はフルショット、あんまりしないだろ。少し加減してライン出し、とか考えるよな」
「そうですね……。風とか傾斜とか、計算すると少し短く持ったりしますね」
「すると、番手なりのヘッドスピードを抑えることになる。ロフトなりのスピン量も減るんだが、飛び系はプロモデルと違ってヘンに低重心だから、想定以上にスピン量が減っちゃうことがある」
「あ、それで飛びすぎたり飛ばなかったり」
「そう。プロモデルならハーフショットでもスピン量と高さで止められるものが、ストロングロフトと低重心で打ち出した弾道はそうはいかない」
鉛を貼って短めに持つ
さて、この場合のチューンだが、ロフトを寝かすというのはオススメできない。FPがなくなりすぎる、出っ歯になりすぎて構えにくくなるし、飛ばなくなるからだ。
「じゃ、どうすれば?」
「前のアイアンに戻すのが一番……それじゃ納得いかないよな(笑)。やり方としてはトップブレード寄りに鉛を3グラムぐらい貼ってみて、様子を見るかな」
「それ、重すぎませんか?」
「だから、1インチぐらい短く持つ。150ヤード以内だから8番、9番、PWの3本だけでいいはず。鉛だけだから、安上がりだろ(笑)」
「なぜ、鉛なんですか?」
ヘッドスピードを落としてもスピン量を確保するには、低重心すぎないほうがいい。鉛3グラム程度でもトップブレード寄りに貼ると、高重心化とはいかないまでも、インパクト時にヘッドの球への食いつきがよくなって、スピン量が安定しやすくなるんだ。
「ストロングロフトだから、少し短く持っても距離は出せるよ。問題は止めやすさを増すこと。少しカットに打ちやすくするチューンもアリだな」
ストロングロフトでもカット打ちなら高さもスピン量も増やせる。チューン法? また今度な(笑)
月刊ゴルフダイジェスト2021年9月号より