【ゴルフせんとや生まれけむ】青空好児<前編>「ウッドは飾り。ティーショットはすべて3番アイアンです」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、漫才師の青空好児氏。
ゴルフを始めたのはもう50年も前のことだから早いほうですよね。たまたま北海道の旭川で30日間、仕事があったんです。まだ球児さんと漫才コンビを組む前で、ストリップ劇場のドサ回りをしていた頃だけどね。仕事は夜だけ、昼間はヒマだから、やることはゴルフしかない。手袋とボールだけ買って靴とクラブは借りものでね、20日連続で毎日やりました。
クラブの振り方も知らないし、練習もせず、いきなりコースデビューですよ。真っすぐ飛ぶわけがない。それどころか最初は空振りやチョロばかり。こんな不自由な遊びはないと思った。それでも面白かったんだよね、だって20日間もゴルフ場に通ったんだもの、面白くなきゃ行かないでしょう(笑)。
それがきっかけで始めたんだけど、ボク、ゴルフのファッションが好きで、それもニッカーボッカーが大好き。ニッカーボッカーにベレー帽というスタイルでやっていました。ニッカーを着たくてゴルフにハマったみたいなもんですね(笑)。当時のボクのニックネームは「ルパン」。漫画の『ルパン三世』の主人公に似ている、って言われてね。あの主人公がゴルフのシーンでニッカーボッカーを着ていたんです。ニッカーは全部で6着持っています。もちろん、それに合わせた靴下も揃えて(笑)。好きなプロゴルファーもニッカーボッカーが似合ったペイン・スチュワート。「ゴルフはファッションから入る」という人は少なくないと思うけど、ボクはその典型ですね。
だから腕前は関係なし。練習場なんて、生涯、行ったことないよ(笑)。だって、ボクら漫才師は笑わせてナンボでしょう。漫才師がゴルフを練習して上手くなっちゃってもシャレになんない。だから上手くなろうとはまったく思わなかった。得意クラブは3番アイアン。ウッドはドライバーが1本入っているだけ。それもキャディバッグのフードが垂れないように、つっかえ棒として入れてあるもので、使うのはアイアンだけ。アイアンは1番~9番、PW、SWまで全番手揃えていて、ティーショットも3番アイアンでやる。3番アイアンで、ほかの人のドライバーショットより飛ばすのが快感なのね。でもコースで使うのは3、5、7番のアイアンとパターだけ。4本で間に合うから、ほかは全部お飾りですね(笑)。
ゴルフの日は早起きでさ、3時半に起きるの。前の日から洋服を揃えて、こたつで寝ていた(笑)。ゴルフに限らず、芸能界に入ってから遅刻をしたことがない。新幹線で地方営業に出かけるときも駅には1時間前に着く(笑)。世田谷区の区議になってからも、議会日は毎朝一番です。
ボク、父親が戦死していて、親父の顔は神棚の写真でしか知らないの。だから子どもができたとき、父親は何をしたらいいかわからない。で、子どもが小学校に上がったとき、毎朝、家の前の掃除をして通学路の立ち番をしたの。そしたら小学校のPTA会長をさせられ、PTA連合会の会長をさせられ、それで保護司をして区議になれって。高校時代は中野電波高校という喧嘩の強い学校で、自分が保護されていたほうなのに(笑)。
青空 好児
1943年生まれ。東京都三鷹市出身。1965年結成の漫才コンビ「青空球児・好児」のツッコミ。73年に第21回NHK新人漫才コンクール優勝。逆さ漫才(君の名は、むっつり右門捕物帖)、国定忠治などで有名。世田谷区議会議員
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より