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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.38「AIは人間にはなれませんな」

PHOTO / Tsukasa Kobayashi

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

この前の植村(啓太)さんとの対談は、びっくりすることが、盛りだくさんやったので、ほんまにおもろかったですね。

何が一番びっくりやったかと言えば、僕のスタンスです。誰が見ても僕のスタンスはクローズやし、何よりも僕自身が完全なクローズスタンスやと思っとりました。

それが足の圧力を計測すると、真っすぐで、スクエアと同じやというんやからびっくりですよ。右足のつま先にウェートが乗っておって、左足のウェートは土踏まずやから、ほぼストレートになっとるんですな。

むかし、ゲーリー・ホルバーグとまわったとき、あいつ僕のスタンスを見て笑いよったんです。ラウンド中ずっと「クククッ」みたいに笑いをこらえておった。ホルバーグはPGAツアーで3勝して、日本でも中日クラウンズ(82年)で優勝した選手です。

ホルバーグに言うてやりたいですな、「何がおかしいのや。これがスクエアなんや」と。

しかし、コンピューターの発達はすごいですな。AIというのですか。人工知能。どんどん人間に近づいてますな。せやけどAIは人間にはなれへんと思いますよ。人間の脳の働きはすごいです。とくに感性の部分は。

ところが、人間のほうが、せっかくの感性に蓋をしてコンピューターになろうとしておるような気がするんです。パソコンとかスマホが「あっちに打ったらあかん」と言っておるから「こっちに打つ」とか。それが世間の常識になってしまっておるんやろな。パソコンがそう言っているとか、他の人がそう言っているとかやのうて、パッと見て、自分がどう感じたかを大切にしたほうが、僕はおもろいと思うんです。

右に打ったらOBが近いから、ここは左からいくのが常道やというホールがあったとしたら、みんな左を狙います。せやけど、その危ないところが、一番ピンを狙いやすいということもある。僕は、そういう場面で、あえてリスクを取るのが好きなタイプです。

もちろん、それで失敗することも少なくありませんが。

五感を働かせて、リスクを取るのか、それともリスクを回避するのか、それが生のゴルフやと僕は思うとります。

「ゲームというのは五感を忘れたら面白さがだいぶ減ってしまいます」

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月6日号より