【東京五輪】松山、畑岡は当確! 熾烈を極める各国の代表争いをチェック
PHOTO/Hiroaki Arihara、Takahiro Masuda、Masaaki Nishimoto、Yasuo Masuda
開催の是非をめぐっては様々な議論がなされているが、東京オリンピックの開会式は7月23日。あと1カ月半だ。そこで気になるゴルフ競技の日本を含めた各国の代表争いについて調べてみた。
東京五輪ゴルフ競技 出場資格をおさらい
<スケジュール>
男子/ 7月29日(木) ~ 8月1日(日)
女子/ 8月4日(水) ~ 8月7日(土)
<開催コース>
霞ヶ関カンツリー倶楽部(埼玉)
<出場選手>
男女ともに60名
<大会フォーマット>
72ホールのストロークプレーによる個人戦
<出場資格>
男子は6月21日、女子は6月28日の世界ランキングの各国上位2名。ただし世界ランキング上位15以内であれば各国4名が上限になる。上記に該当しない場合は各大陸から最上位の1名、開催国枠として1名
【日本男子】
星野陸也と金谷拓実が2枠目を争う
開幕まで1カ月半となった東京オリンピック。各競技では代表選手が発表されたり、世界各地で五輪の予選大会が行われている状況だ。ではゴルフ競技はどうだろうか。ゴルフの場合は、五輪の出場権は男女ともに世界ランキングによって決定するのだが、その期限が目前に迫っている。男子は6月21日時点、女子は6月28日時点の世界ランキングによって、各国の出場枠と出場有資格選手が決定する。東京五輪の出場枠は男女ともに60名だ。
まずは日本男子の代表争いから見てみよう。4月のマスターズを制覇した松山英樹の世界ランクは14位(5月31日時点・以下同)で日本の選手のなかでは抜け出ており当確だ。6月21日まで複数の日本選手が世界ランクの15位以内に入る可能性は現実的にはほぼないので、日本の出場枠は2枠。この2枠目を75位の星野陸也と81位の金谷拓実が争っている状況だ。コロナの感染が拡大する前は今平周吾が2番手につけていたが、東京五輪が1年延期されたことで順位を大きく落としてしまい現在は123位の4番手。139位の石川遼が5番手だ。
代表決定まであと2週、今後の試合に注目が集まる……という状況だが、残念ながら日本のツアーは先週のツアー選手権を最後に2週間、試合の予定がない。さらに代表決定前の最後の国内大会となったツアー選手権に代表争いの主役の2人、星野と金谷は出場していなかった。金谷は米ツアーのメモリアルトーナメントに松山英樹とともに出場。星野は全米プロに出場後、代表決定前最後の大会となる全米オープンの最終予選(6月7日)に出場するべく、そのまま米国に滞在していたためだ。いずれの結果も本稿の締切時点では不明だが、代表争いは海を渡った戦いになっている。
さらに5番手の石川遼にもまだチャンスは残っている。もちろん星野や金谷、そして先週末のツアー選手権の結果に左右されるのだが、石川遼は先月末に日本で開催された全米オープンの日本予選でわずか2枠という厳しい条件のなか見事にトップで出場権を勝ち取っている。メジャー大会である全米オープンは当然、獲得できるポイントも破格。優勝すれば一気に世界ランクで30位前後に躍進するので、文句なしに代表入りが決定するが、現状のポイントであれば4位くらいに入れば、日本の2番手に浮上する可能性もあるのだ。全米オープンで奇跡の逆転代表入りの“石川遼劇場”が見られるかもしれない。
【出場者決定スケジュール】
6月21日(月) 男子の最終世界ランキング確定
6月22日(火) 国際ゴルフ連盟( IGF )より各国の五輪委員会とゴルフ団体へ、男子の有資格者を通知、リザーブリストを発表
6月28日(月) 女子の最終世界ランキング確定
6月29日(火) 国際ゴルフ連盟( IGF )より各国の五輪委員会とゴルフ団体へ、女子の有資格者を通知、リザーブリストを発表
7月1日(木) 各国の五輪委員会が有資格者の出場可否をIGFへ報告
7月2日(金) 出場辞退者による出場資格の再割り当て
7月5日(月) エントリー締切
【日本女子】
畑岡奈紗は当確。2枠目は混戦
新型コロナの感染拡大で開催が1年延期された東京オリンピック。その影響を大きく受けたのが日本女子の代表争いだ。もし、大会が延期されることなく、当初の予定どおり開催されていれば、日本女子代表として世界ランキングの上位15人に入っていた畑岡奈紗、渋野日向子、鈴木愛の3選手が揃って出場できたのだが、開催が延期されたことによって、渋野と鈴木は大きく順位を落としてしまったのだ。
逆に延期されたことで大きく世界ランクを上げたのが、稲見萌寧、古江彩佳、小祝さくらの3人だ。これにより代表争いは大混戦になっている。男子よりも代表決定が1週間遅いこと、さらに日本国内での試合も続けて開催されることで、世界ランキングの対象となる試合が多く残されており、女子の代表争いはまだまだ予想が難しい状況だ。
5月31日時点の世界ランキングを見ると、13位につける畑岡奈紗は頭ひとつ抜け出ており当確だろう。残るは1枠だが、今年5勝と驚異のペースで勝ち星を重ねる稲見が24位で2番手につけている。しかし、古江も27位、渋野も30位で、その差は大きくない。日本女子の代表争いは、今後も毎週のように順位が入れ替わることが予想され、代表決定の最後の週まで代表争いから目が離せない状況だ。
さて、そんな熾烈な日本女子の代表争いをしり目に、早々と五輪出場をほぼ手中に収めているのが、フィリビンで登録している笹生優花だ。世界ランク40位はフィリピン勢の2番手以下を大きく引き離しており、代表入りは間違いないところ。(※全米女子オープンの優勝により笹生の世界ランクは9位にジャンプアップ)
また、中国籍の森田遥は世界ランク191位で、中国女子のなかでは5番手につけているが、中国女子の出場枠は2枠が濃厚。2番手のリュウ・ユーが67位なので、逆転しての代表入りはかなり難しい状況だ。
【海外男子】
米国はトップ15に10人がひしめく
海外の代表争いも見てみよう。もっとも厳しい戦いとなっているのが米国男子だ。世界ランキング1位のD・ジョンソンが早々と出場辞退を表明しているにも関わらず、7位のB・ケプカでも代表入り圏外となっているのだから、そのレベルの高さには驚くばかり。5月31日時点の世界ランキングでは、トップ15に10選手がひしめく。全米オープンの成績によって大いに逆転がありうる。
【米国男子】
J・トーマス(2)
B・デシャンボー(4)
X・シャウフェレ(5)
C・モリカワ(6)
B・ケプカ(7)
P・リード(9)
W・シンプソン(11)
T・フィナウ(13)
P・カントレー(15)
※( )内は5月31日時点の世界ランキング。1位のD・ジョンソンは出場辞退を表明
米国ほどではないが英国男子も接戦だ。リオで金メダルを獲得したJ・ローズは、辞退を表明しているL・ウエストウッドを除いたとしても現状では5番手で、連続出場が厳しい状況となっている。
【英国男子】
T・ハットン(10)
M・フィッツパトリック(18)
P・ケーシー(21)
L・ウエストウッド(27)
T・フリートウッド(32)
J・ローズ(39)
【海外女子】
米国&タイは姉妹出場の可能性も
米国男子と同様に上限の4枠を確保しそうなのが、米国女子と韓国女子。米国女子はジェシカとネリーのコルダ姉妹が揃って出場できるかに注目。
【米国女子】
N・コルダ(4)
D・カン(6)
L・トンプソン(9)
J・コルダ(11)
A・ユーイング(15)
A・アーンスト(18)
【韓国女子】
コ・ジンヨン(1)
パク・インビ(2)
キム・セヨン(3)
キム・ヒョージュ(7)
ユ・ソヨン(17)
イ・ジョンウン6(19)
タイのジュタヌガーン姉妹は、妹のアリヤは出場できそうだが、姉のモリヤが3番手で、姉妹出場はかなり難しい状況だ。
【タイ女子】
P・タバタナキット(10)
A・ジュタヌガーン(20)
M・ジュタヌガーン(35)
J・スワンナプラ(85)
リオは辞退者続出
トッププロは来日するのか
男子はあと2週間、女子は3週間で出場資格の対象となる世界ランキングが確定するが、実際に東京にやってくる選手が決まるのは、そのあとになる。前回のリオでは土壇場で出場を辞退する選手が続出した。その理由となったのが、当時流行していた「ジカ熱」だ。ジカ熱は蚊を媒介して感染するので、屋外競技であるゴルフはとくに感染の危険性が高いと感じる選手も多く、男子は当時の世界ランク上位4選手をはじめ多くのトッププロが出場を辞退し、出場選手の半数以上が世界ランキングの100位以下という顔ぶれになった。112年ぶりに五輪競技に復活した大会としては少々さびしい事態だったが、女子に関しては辞退者は2選手だけで、多くのトップ選手が参加した。
コロナ禍での開催となる東京五輪。リオのように辞退者が増えることは十分に考えられる。
リオ五輪では上位15人中7人が出場辞退した
1 | J・デイ | オーストラリア | 辞退 |
2 | D・ジョンソン | 米国 | 辞退 |
3 | J・スピース | 米国 | 辞退 |
4 | R・マキロイ | アイルランド | 辞退 |
5 | B・ワトソン | 米国 | 出場 |
6 | H・ステンソン | スウェーデン | 出場(銀メダル) |
7 | R・ファウラー | 米国 | 出場 |
8 | A・スコット | オーストラリア | 辞退 |
9 | D・ウィレット | 米国 | 出場 |
10 | B・グレース | 南アフリカ | 辞退 |
11 | J・ローズ | 米国 | 出場(金メダル) |
12 | S・ガルシア | スペイン | 出場 |
13 | P・リード | 米国 | 出場 |
14 | L・ウエストハイゼン | 南アフリカ | 辞退 |
15 | M・クーチャー | 米国 | 出場(銅メダル) |
17 | 松山英樹 | 日本 | 辞退 |
69 | 谷原秀人 | 日本 | 辞退 |
五輪競技としては112年ぶりの復活となった前回リオ大会のゴルフ競技だが、トッププロの多くが出場を辞退。それでも意外と視聴率は高く、テレビ局での評価も高かったという。
週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より