【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.926「耳学問は分かった気になるけど、上手くなるには体で覚えましょう!」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら よく「夢に出てくる」と言いますが、岡本さんは夜、寝ているときにゴルフをしている夢を見たことがありますか? それと……
ゴルフだけでなく仕事も恋愛も情報過多の時代。 行動より理論武装から始める人が増えていると思います。 感じることがなおざりになっているのではないかと思いますが、岡本さんはどう思いますか。(匿名希望)
ゴルフの練習をしていて上手く打てなくて悔しいことはあると思います。
自分がどうして上手く打てないのか考え込んでしまうことありますよね。
何とか打開しようと思っていろんなコーチのレッスンを受けたり、YouTubeなどの動画で調べたり、ネットで検索したりして問題解決をしているかと思います。
ですがゴルフスウィングの動き全体を思い浮かべてみてください。
スタンスの向き、体重配分、両ひざの曲がり具合に上半身の前傾角度。
テークバックでクラブヘッドを引き、バックスウィングを振り上げていく方向をどこに取るか、そのタイミングとその時の手首をどうするか……。
注意すべきポイントは言葉では表現し尽くせないほどあります。
スウィングの動きを頭で理解しようとすると、動きを正確に再現することはできないのではないかと思えます。
「考えるな感じろ」 半世紀以上前に流行ったブルース・リーのセリフではないですが、感じることは今の時代だからこそ大事なことなのではないでしょうか。
スポーツのみならず、職人的な作業や掃除洗濯に台所仕事といった家事に至るまで、身体動作のスキルは昔から、考えて習得するより体で覚え馴れることが重んじられてきたように思います
頭で理解して手足を動かすのではなく、正しい動きを体に覚え込ませて馴らす方が早いということなのでしょう。
そこに理屈は要らない、という考え方があるのだと思います。
身体動作のスキルは、手取り足取り教えられるものではなく、学ぶ側自身が肉体と魂で感じ取り、身に付けていくものではないでしょうか。
ゴルフボールを打つ技術や感覚は、その人なりのものであって、簡単に言葉だけで伝えられるものではありません。
自転車に乗る練習と同じで、バランスを取ってペダルをこぎ前に進む方法は、分かった時ができる時で、できた時が分かる時です。
理屈が理解できていたとしても、実行できないうちは、そのプレーなり技術をマスターしたとは言えないということです。
ネット社会を迎えるずっと以前から現代人は頭でっかちになりがちでした。
さらにSNSなどで情報が溢れ返っている今の時代、スマホで目にした記事を読んで「そうだったのか!」とひらめいて練習に取り組んだとしても、成果が出てくるのには時間がかかります。
正しい練習内容であったとしても、練習して体で覚えない限り身に付けることはできません。
せっかちな現代人には、その時間待ちができないのかもしれませんね。
頭で分かっているのにできない、その状態に腹を立てて練習をやめてしまう……。
それはまだ十分に練習を積んでいないということじゃないかしら。
やるべきことをやらない限り、それがほんとうにできないことなのかどうかも分からないはずです。
昔と比べて練習環境は格段に恵まれ、トレーニング理論をはじめ情報に不足はありません。
ですが、現在のゴルファーが100年前のプレーヤーより比較にならないほど進歩していると言えるかは疑問です。
情報は誰もが発信できるようになりましたが、だからといって誰もがその情報を使いこなせるようになったわけではないと思います。
スポーツも誰もが楽しめるようにはなったものの、その道を究めるには並外れた努力と経験の積み重ねが必要なことは、昔から変わらない ── そのことの理解が抜け落ちているのではないでしょう か。
頭で分かろうとするより、まずは体を使って実行だとわたしは思います。

「耳学問は分かった気にさせてくれますが身には付いていませんのであしからず……」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2026年10月13日号より


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