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【”ゴールデンエージ”のジュニア育成】<後編>最初は握り方すら教えない。まずはクラブを動かし続けて“感じさせる”

5歳頃〜12歳頃までの、子どもの運動能力や神経系が発達する”ゴールデンエージ”。ジュニアゴルファーはこの黄金の成長期に何をするべきか。後編も引き続き、ジュニア指導の経験が豊富な3人のコーチに、心、体、技、それぞれの鍛え方を聞きました。

PHOTO/Tadashi Anezaki, Yasuo Masuda ILLUST/Koki Hashimoto THANKS/美浦GC

解説/髙橋弘樹

トレーナー・理学療法士。1980年生まれ、埼玉県出身。小6からボクシングを始め、20歳までにアマで18戦6勝。その後理学療法士の資格を取得し、プロサーファーなどに治療、トレーニングを行い「ロッキーメソッド」を確立

>>前編はこちら

「重いウェイトはやらない。体の成長を止めないように」

ゴルフでは中野麟太朗など若手プロ、トップアマ、ジュニアを指導する“ロッキーさん”こと髙橋弘樹さんは語る。

「まず、重いウェイトを使ったトレーニングは絶対にやらないほうがいい。背中などの筋力を小さい頃から鍛えると成長の邪魔になることも多いんです。僕も小6のときには身長が161㎝ありましたが、そこからボクシングを始めて背中の筋肉をつけてしまい身長が伸びなくなった。若くても鍛えると筋肉はつきますが、結局ムキムキにしておもりだけになるとスピードは落ちます。ゴルフに関しては身長や手足の長さも大事だと思うので、体の成長を止めないように、体幹や足腰から鍛えていかないと、その子の将来をつぶしてしまいます。成長の幅が止まったら、ウェイトなどまた別のことに取り組んでいくといいのです」

今回、ゴールデンエージに取り組むといいトレーニングを3つ紹介してくれた。1つ目は、腕をしっかり振って走ることだ。

「体力がない子は多い。試合なら2、3日ラウンドしますし、まず体力をつけるために走る。でも、ただ走るだけだともったいないので、両手に水が入った500㎖のペットボトルを持って、腕をしっかり振って走ります。足腰はもちろん、握力も肩のインナーマッスルも体幹も鍛えられます」

2つ目は、“ジャンプ”だ。

「バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプ系のスポーツに取り組むほうが子どもの身長が伸びる要素は大きい。ジャンプして着地するときに“骨端線”に刺激がいくからです」

骨端線とは、成長期の子どもの骨に存在する、骨を伸ばすための軟骨の層だ。

「骨端線は子どもの全身の関節にあり、レントゲンを撮ると隙間があるのでわかります。これは骨の成長が止まるまで存在し、刺激を与えると骨の成長をサポートする。もちろん、ジャンプすることでお尻と太ももも鍛えられる。体の土台も大事ですから」

こちらも「体幹をキープすること」を同時に身につけたいので、ペットボトルを持って行う。「1.5〜2ℓのボトルに水を半分くらい入れて胸の前で行う。揺れるので、軸を真ん中にキープしないとジャンプや着地がブレてしまいます。水だから自在に動くのでよい負荷にもなります」

3つ目は、スウィングの動きに似せた筋トレ要素のある“サイドステップのジャンプ”だ。


「スウィングで軸をつくるためには、テークバックのときには右ひざの内側を使い、ダウンからフォロースルーまではお尻の左側を使い“耐える”必要がある。このためのサイドステップです。これもペットボトルを持って。上半身をひねることでスウィングにもつながる。これで安定しなければいいスウィングになりません」

今回の3つのトレーニングは、今後のトレーニングのベースになるものだ。

「ここから進化させていけばいい。まず、子どもたちは楽しくないと続かない。ペットボトルを持ったりするほうが、ただ走るより楽しいですよね。もちろん小学生前ならペットボトルは持たなくてもいいし、友だちと誰が高くジャンプできるか、より左右に大きく飛べるかなど、遊びの要素を入れるといいと思います」


腕を振って走る

小学生前〜低学年までは週3回、10〜15分を目指して走る。「おもりを持った手が振られるので体幹がブレなくなる。距離は関係ない。速さよりペースを重視し、体幹をキープしたまま手をしっかり振って走ることです」


しっかりジャンプ!

走ったあとにジャンプを20回×3セット。水を半分程度入れたペットボトルを持ち、床と太ももが平行になるまで下げて(平行が理想だが最初はできるところまででOK)、そこから全力でジャンプ

軸が真ん中にキープされていないと、ジャンプも着地も真っすぐにできない。「着地したら一度真ん中に軸をしっかり戻して再びジャンプします」


スウィングにつながるサイドステップ

右に飛ぶときは右ひざの内側、左に飛ぶときはお尻の左側を意識。「ひざ、尻、ひざ、尻……左右に飛んだときにしっかり耐えられるように。上半身はペットボトルを投げて止めるイメージで。最初は小さなジャンプでよいです」。左右合わせて20回×3セット



遊びながら楽しく。ケガはしないでね!

「神経系が発達する時期からトレーニングはやったほうがいいですし、ゴルフだけではなくてボクシングや空手、水泳などいろいろなことをやったほうが神経系も活性化されます。ただ、ケガだけは気をつけてくださいね」

井上透

1973年生まれ、神奈川県出身。アメリカでゴルフ理論を学び、中嶋常幸、佐藤信人、穴井詩など多くのプロを指導。08年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞。東大ゴルフ部の監督として初心者レッスンにも尽力している

「教えないことが大事。
動かすことで気づきの素地をつくる」

5歳〜小4の子どもが安価に気軽にゴルフを楽しめる「ジュニア成長支援プロジェクト」を立ち上げたばかりの井上透プロ。数多くのジュニアを育ててきた経験を持つプロに“技”の鍛え方を聞いた。

「特に低年齢のゴールデンエージにおいて大事なのは、指導が通用しないということを前提とし、どう学ばせるか。言葉では伝わらないと思って、まず“動かしながら感じさせる”ことです。クラブを動かすことで何かに気づくことができる素地をつくれます」

最初はグリップの仕方も教えないという。

「子どもはそんなに集中はできません。それにスタートの段階ではゴルフは縛られないスポーツだと思ってほしい。グリップも、ベースボール、インターロッキング、オーバーラッピング、どのグリップでも上手くなる可能性はあります。もちろん、クロスハンドの子には『逆だよ』、親指が外れている子には『上に乗せたほうが打ちやすいかもよ』という提案はするかもしれない。でも、『このグリップがいい』とは言いません。本質的に大事なのは握り方ではなくて、クラブがどう動いたら当たるかということですから」。

クラブの動かし方に関しては、最初は遊びの延長で転がすだけ。

「なるべくクラブの先端だけでボールを転がしていく。先日、石川遼プロが、ジュニアの『どうしたら上手くなれるか』の質問に『クラブを自分の手と同じように扱えるようにする』と回答していました。そのためにもクラブの先端部でボールをコントロールする必要がありますから」

そして、さらに積極的にクラブを動かすことが大事だと井上プロ。

「細かく教えないことが大切です。『とにかく上に振り上げて動かしてごらん』などと、クラブを動かし続けることによって物体の重さと位置を覚えます。先ほどはクラブの先端でズルズル動かし、今度はクラブをブラブラ動かす。すると手の機能性も上がります。とにかく動かし続けることによって、この物体に対して自分の体がどこに居ればいいかということを、言葉のレベルではないところで感じられるようになる。教えてしまうと、“動かす”というよりも“持ち上げる”ようになります」

クラブという道具を使うゴルフにも、もちろんつながっていく。

「片足を上げるとヨロヨロとなる子は、片足を上げたときに上半身が“ここに居たほうがいい”というバランスがわからないのです。だから、自分の体だけではなくて、クラブという負荷がかかったものを持ちながら動かす。クラブを適当に自在に動かしているだけでも練習になるんですよ。重さの負荷を変えながら体を動かすことを続けていると、自然にバランスもできてきます」

「この年齢は、才能を育てるフェーズ。レッスンはその後に行えばいい」という井上プロ。

「子どもたちは上達してくると別の楽しみを発見してきます。ゴルフっていろいろなシーンがあるのがすごくいい。パターとドライバーはビリヤードと野球くらい違いますし、振り幅がすごくあるのがゴルフのいいところ。だから飽きたら別のことができる。ドライバーに飽きたらサンドウェッジを打ったり。子どもの“飽きのマネジメント”をするのは親の“タイムマネジメント”なんです」


「クラブを動かし続けて感じさせることが大切です」
クラブを上下、左右に動かしたりグルグル回したり。「“連続素振り”なんですが、形や振る場所はどうでもいい。体力がないのでまずは動かし続けることを行う。周りには気を付けてやってください」



クラブの先端でボールを転がす

右手片手、左手片手、両手など、好きなように転がす。「ボールを早く集める競争をしてもいい。東大生の初心者もこうやって遊びながら練習しているんですよ」


“遼くん”みたいなリフティングにつながる

子どもたちにリフティングの技を披露する石川遼。「リフティングはもう一段高度です。でも、クラブの先端部でコントロールすることができれば、この技につながっていくのです」

的を“狙う”ことがゴルフの根本にある

先日のジュニアイベントでは、ゴルフモンスターを標的にするゲームを実施。「まずはゴルフが楽しいと思ってほしい。それに穴に入れる、的を狙うというのはゴルフの本質。それを飽きさせないように伝える工夫をしていきたい」

週刊ゴルフダイジェスト2026年9月1日号より