【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.916「鍛錬を積み上げて身に付けた技術を披露できたときがプロだと改めて実感する瞬間です」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら 今年の全米女子オープンは、最後までドキドキする緊迫した展開でした。史上最多23人の日本人選手が挑戦したことを含め、岡本さ……
プロの方はプレーしている時に、ギャラリーやテレビの視聴者の人たちにどのような点を見てもらいたいと思っているのでしょうか。また、解説をされる場合は、どんな点を注目してもらいたいとお思いなのでしょうか?(匿名希望・55歳)
自分のプレー内容のどういう部分、どんな場面を見てもらいたいかというのは選手によってさまざまだと思います。
選手には得意不得意を含めて個性があり、自分が持っている最大の武器でスコアメイクをしていきます。
多くのプレーヤーはその強みをアピールしたいと思います。
プロ選手はあらゆる面においてハイレベルな技術と知識を備える努力を重ねていますが、得意不得意はあります。
そのため得意なクラブで得意なショットに磨きをかけるプロも少なくありません。
多くの人がプロならではの圧倒的な飛距離に憧れるのも分かりますが、わたしはパワー全開の豪快ショットよりも職人ワザのほうにより魅力を感じます。
この感覚はプロならみんなが共有しているのではないかしら?
ただ遠くに飛ばせばいいというのではなく、誰にも真似のできない想像を超えたショットを決める、プロは心の中には必ずそういった気持ちがあると思います。
プロはやはりプレーしているときはいつも「このワザを見て!」と心の中で言っているかもしれません。
プロ駆け出しの頃、単なる飛ばし屋で小技が下手などと周囲から勝手に決めつけられ反発したのを覚えています。
実績を上げるまで誰もまともに評価なんてしてくれませんでした。 そのためには、ひたすら練習するしかありません。
ギャラリーのみなさんに自分の技術を見てもらいたいと思えば、繰り返し誰にも負けない鍛錬をするのがプロであり、それがプロの仕事なのかもしれません。
その練習を積み重ねた時間が長ければ長いほど、その技術を披露できたときの達成感は大きく、それがプロの醍醐味のひとつです。
たとえば、深い逆目のラフに沈んだ状況で、ピンがエッジから近くしかも下りのとき。
見ているギャラリーの方たちが「これじゃ寄せられないな」とヒソヒソ話をしているのが聞こえることがあります。
「打つ前にそんなこと言わないでよ〜」 と軽く言いながらアドレスに入り、フワリと柔らかく上げてカップ直前で止める──。
「さすが!!! やっぱりプロはスゴイな〜」 とギャラリーの方々が応えてくれます。
わたしがまだ若い現役時代には、選手とギャラリーの間でそんなやり取りが実はあったりもしたものでした。
わたしが中継の解説席に座るときには、こうしたやり取りのようなストーリーを展開できたらいいなと思っています。
それは、プレーヤーが直面している難関を少しでも視聴者の方にも共有してもらいたいという気持ちからです。
「プレーもだけどわたしを見て!」 とアピールするのも結構ではありますが、プロとして勘違いしてほしくないのは、ギャラリーや視聴者の方々に見てもらうのは練習の末につかんだプロの技術であることで、それを忘れてほしくはありません。
プロのキャラクターもファンを引き付ける魅力のひとつではあります。
しかしそれは、確かな技術と実績を持つプレーヤーこそが醸し出すものだと思っています。

「成績を出すことに加えて技術を見せることもプロの仕事だと思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2026年7月21日号より


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