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【目澤秀憲の目からウロコ】佐藤謙太郎編① 設計家の「意図」を読み解く 全コースが直面する改修問題とは

目澤秀憲コーチが、異業種からゴルフのヒントを得る連載「目澤秀憲の目からウロコ」。日本では過去に数度「ゴルフブーム」が起こり、とくにバブル期にゴルフ場が「粗製乱造」された感は否めない。多くのコースが今、抱えている問題とは?

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki

佐藤謙太郎 株式会社M&K代表取締役。日本ゴルフコース設計家協会理事長。73年からゴルフ場設計および建設業務に携わり、その間海外にも学ぶ。88年、(株)M&Kを設立し、その後、本格的にコース設計・監修事業に取り組む。これまで設計、改修したコースは海外14、国内28。現在も複数のコースを手掛ける
目澤秀憲 ゴルフ界の最先端を知り尽くすコーチ。現在は河本力、金子駆大、永峰咲希、阿部未悠などを教える

プレーヤーの飛距離が伸びバンカーが形骸化

――佐藤さんはバブル期以前からゴルフ場設計に携わり、現在まで国内外で数多くのコース設計、改修を行っています。今、世界中でコース改修の必要性が議論されていますが、佐藤さんのご意見を伺えますか。

佐藤 日本のコースに関して言うと、バブル崩壊後に「暗黒の30年」とも呼べる時代があって、資金的な問題から「造れない」、「直せない」という状態が続きました。最近になってようやく、現代のプレースタイルに合わせた改修を行いたいというコースが増えてきましたね。


目澤 そうは言っても、用地の問題もあるでしょうし、海外のような大規模改修は難しいことも多いのではないですか?

佐藤 レイアウトから全部直したいというコースもありますが、それは確かに少ないです。今進んでいるのは、主にハザード(バンカー)の位置の見直しですね。それだけでも戦略性についてはかなりアップデートできますから。

目澤 プレーヤーの飛距離が伸びたから、昔ながらのバンカーだとハザードとしての意味がなくなっているところが多いということですよね。

佐藤 そういうことです。それと、どのコースも排水設備の老朽化が進んでいますから、そこのところの手当てがこれから必要になっていくでしょうね。

目澤 コース設計に関して、これまであまり勉強する機会がなかったんですが、設計者の目線で「これは知っておいたほうがいい」ということは何かありますか?

佐藤 コース設計の基本の話をすると、最初に考えるのは日本には「四季」があるということですよね。それで季節によって風向きが変わるわけです。大まかに言うと夏は南風で、冬は北風です。だとしたら、冬にアゲンストになる長いホールは、一般のプレーヤーには大変すぎるから造りづらいみたいなことはでてきますよね、どうしても。プレーのメインは冬じゃないからいいじゃないかという意見もありますが、関東以南は一応、一年中プレーできることになっていますから、そういうことも考慮して設計する必要はあると思います。

目澤 日当たりも考慮しなくちゃいけないですしね。

佐藤 ええ。それとあとは戦略的なことになってきますけど、各ホールのベストルートをどう設定するかですね。私は長くジャンボ(故・尾崎将司プロ)と仕事をしてきましたけど、「津CC」(三重県津市。1990年開場)を2人で設計したときに、当時の各番手の飛距離を考慮して、トータルヤーデージは何ヤードがベストかとか、各ホールのティーショットのベストポジションはどこかということを全部話し合って造ったんですね。それで90年代に、ニック・ファルド、グレッグ・ノーマン、カーチス・ストレンジ、それにジャンボの4人でテレビマッチをやったことがあって、さすがだなと思ったのが、初見のコースでみんな我々が設定したベストポジションに打ってくるんですよ。とくにファルドとノーマンはすごかったです。

目澤 プレーヤーとしての経験値だけじゃなくて、設計者の「意図」が、彼らには見えていたということですよね。

コース設計には「基本ルール」がある

クラブハウスは約8割が「北東」

山岳地域のコースはとくに、いかに日照を長く確保するかということも重要。北東にハウスを配置すれば、上がりのホールに西日が当たることになり、プレー可能時間が延びる

夏と冬では風の向きが変わる

日本の気候の傾向として夏は南風、冬は北風が吹く。つまり、南北にレイアウトされたホールでプレーする場合、夏はフォロー、冬はアゲンストになるということ

「一流プレーヤーはコースを見抜く目も一流」
ファルドやノーマンが、ジャンボさんや佐藤さんが意図したベストポジションに、初見で打ってきたという話がとくに印象に残りました。普段からコース図を見ながら、「このホールはどう打っていくのが正解か」を考えてはいますが、もしかしたらファルドやノーマン、それにジャンボさんにはもっと深いところまで見えていたのかなと思います。バブル期までにできたコースも、これから少しずつ改修が進みそうだということだったので、コースの戦略性がこれからも維持されるという点では安心しました。

月刊ゴルフダイジェスト2026年8月号より