“空振りは 人がふり向く 音がする” 「ゴルフ川柳コンクール」傑作選<後編>
週刊ゴルフダイジェストの恒例企画「ゴルフ川柳コンクール」第8回の応募がいよいよスタート。前編に続き、これまでの名作(迷作?)を振り返る「傑作選」をお届け!
>>前編はこちら
- 早いもので「ゴルフ川柳コンクール」ももう8回目。これまでの名作(迷作?)を振り返る「傑作選」をお届け。お相手は「私の師匠は林家正蔵と種田山頭火」とうそぶく担当編集A子と「サントウカってどこのカントリークラブですか?」との迷言を放ったR太の2人。これを読んで、ゴルフ川柳コンクールの傾向と対策を練ってください。 >>後編はこちら A子 つい……
A子 ゴルフも川柳もリズムが大事。あと音感。声に出して読むと弾む感じがしたりだとか。
3人パー 俺もパーだが ダブルパー
(埼玉県・やなさん)
ピン立てて パットするけど パッとせず
(青森県・西村明さん)
たまたまか また木の股に 俺の球
(鹿児島県・大野究さん)
A子 声に出して読みたいゴルフ川柳よね。「たまたまか またたまたまが 俺のまたー」。
R太 球と股が入れ替わっていて、いろいろマズいことになっています!
A子 ちょっと下品なことを言わないでよ。
R太 自分が言い出したくせに……。
A子 大野さんはすでに殿堂入りを果たしているし、永世名人特別賞という、その場のノリで生まれた賞も受賞しているのよ。
R太 その場のノリで……?
A子 大野さんだと、私はコレも印象深いわ。
空振りは 人がふり向く 音がする
(鹿児島県・大野究さん)
A子 空振りの音と素振りの音とは違うでしょ?
R太 ああ、確かに。
A子 どんなに辺りがザワザワしていても一瞬で静まりかえらせる力があるのよ。練習不足への後悔とかミスした恥ずかしさとか……何か滑稽な感じ。はっ、チャップリンの映画を思わせるわ!
R太 空振りの音がチャップリンの映画?
A子 チャップリンと言えば、正蔵師匠の知り合いに「チャップリン」と呼ばれている人がいるそうよ。
R太 また話が脱線してきたなあ。その方は「喜劇王」の異名をとる落語家かコメディアン?
A子 ショットの前の足の“踏み踏み”がやたら大げさで長いゴルファーよ。ついたあだ名がチャップリン。
R太 ゴルフの話に戻った。
A子 ゴルフ川柳なのにゴルフと関係のないようなワードを使うと面白味が出るわ。
設計と 施工の違いで このスコア
(北海道・岡部隆義さん)
A子 設計と施工だなんて、この方は建築家か大家さんかと思わせておいて……。
R太 ゴルファーなんですね(笑)。
A子 ナーイス! ほかにもいろんなテクニックがあるのよ。なかでも難易度が高いのが連作よ。
悪いとき どう打つのかが わからない
いいときは どう打ったかが わからない
(岩手県・新沼伸一さん)
芝デビュー 二十三歳 大冒険
再デビュー 五十三歳 大冒険
(東京都・りんごうさぎ)
A子 20代でゴルフを始めたけれどしばらくお休みしていたんでしょ。その後、子育てが落ち着いたのかな、50代で再デビュー。いいじゃない。
R太 東京オリンピックの中継で有名になった「13歳、真夏の大冒険」からとっているんでしょうね。
A子 50代で何かを始めたってちっともおかしくないわ。イギリスの作家・エリオットの名言に「何かを始めるのに遅すぎるということはない」ってのがあってね、「それを英語に直しなさい」って試験問題に苦戦したことを思い出したじゃないの!
R太 It’s never too late to start something.
A子 タスケテー、職場に“英ペ”こと英語ペラペラ君が来ちゃった。でも日本語の習熟度と歳は私が上だから!
朝イチが 今日イチだったと 気づかない
(福岡県 たかちゃん)
今日イチを 待ってて出たぞー 18番
(静岡県・ゴルジェンヌZ)
A子 連作ではないけれど、別の人から送られてきた川柳を並べてみたら面白さがマシマシになった。これぞ日本語の成熟度のなせるワザよ。
R太 そうなんですか?
スコアより 腹の具合が 下り気味
(広島県・まろん)
腹具合 悪く力めず 好スコア
(山口県・ゴルゴ18)
A子 おなかって下るときは下る。お大事に。
池ポチャに われ泣きぬれて 鴨とたわむる
(北海道・くりりん)
A子 石川啄木の「東海の 小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたわむる」って知っている? ゴルフ場だから蟹を鴨にしているのね。大事な一打が池ポチャ。泣けるでしょ。
R太 鴨ってたわむれてくれませんよね?
A子 すぐ逃げる。何なら、人を見て打つ前に飛び立つわね(笑)。
手にスプーン 気分は英樹 球は池
(東京都・Kitkatフリーク)
A子 これは「目に青葉 山ほととぎす 初鰹」から来ていると思う。
R太 こういうのが本歌取りなんですか?
A子 そうそう。そして、私は最近バッグからスプーンは抜いているのよ。当たらないから。スプーンを持つのは、昼のカレーを食べるときぐらい。鳴沢のカレーには、大人の辛さがあって……。
R太 冒頭のカレーの話に戻っている……。
A子 ふふふ。私はカレーが好きなのよ。
昼ランチ 人のがいつも よく見える
(大阪府・マキローイ)
A子 なのに隣の芝生は青く見えるのよ! 「あいつ、コロッケ乗せているじゃん!」とか。
R太 あ、まだカレーの話でしたか。
A子 ゴルフ歴ウン10年で気付いたのはそこ!?
R太 でもランチ大事(笑)。ちなみに、A子さんがこれまでのコンクールで印象に残った川柳は?
A子 どんどん挙げていくから、ファースト、構えて!
奴はペレ それなら俺は マラドーナ
(静岡県・パターの飛距離はのび太君)
A子 ここでの「奴」とはズバリ、ドナルド・トランプ。林やラフから球をうまく蹴り出すからと「ペレ」と呼ばれていたとか。マラドーナになりたいということは「神の手」を使いたいということかしら。2025年、トランプはまた大統領として戻って来るし、川柳のネタとしても要注目よ。
大掃除 いろいろ見つかる 謎道具
(神奈川県・Tosh)
A子 謎の棒とか、謎のゴムチューブとか、謎のボールなどが大掃除で発掘されたわ。
羨ましい あいつの実家は 北関東
(東京都・じぇい)
A子 私の実家は北九州―!
いくつです? 58だと 妻が言う
(大阪府・ちく)
A子 聞かれたのはハーフのスコアで年齢じゃなかった! でも、レストランで突然「いくつ?」って聞かないで。常々年齢が気になっているから、言っちゃうのよ。でね、この川柳は究極だと思う。
ままならぬ ゴルフも妻も 愛してる
(大阪府・大藪秀髙さん)
R太 なんか、じーんとします。
A子 でしょう。木の股に球があったり、おなかとスコアが下り気味だったり、妻を愛していたり……。ネタはそこら中にあるの。あとは詠むだけ。
R太 おお!
A子 リピーターもニューカマーも大歓迎。どしどしお送りください。
週刊ゴルフダイジェスト2024年12月31日号より
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