米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT／M.Matsumoto

今年はプロ入り3年目の竹田麗央選手が初優勝からメジャー2勝を含む年間8勝して大ブレークし、ここ数年次々に若手女子選手が登場してきていますが、この勢いは今後も続くと思われますか。（匿名希望・51歳・HC9）

2021年のプロテストに合格した竹田麗央選手は、1年目で賞金2100万円ほど獲得してメルセデスランキングは58位になり、昨年初シードを獲得しました。

そうして迎えた今年は大ブレークでしたね。

飛距離を武器にわずか2年で急成長しました。特に「TOTOジャパン」では、最終日のバックナインで1イーグル3バーディを奪いプレーオフの末、国内で開催される唯一の米LPGAツアーの大会で優勝したのは印象的でしたね。

この勝利で、来季から2年間米ツアー出場権を取得したので、12月に予定していた最終QTへ出場する必要がなくなり、内心ホッとしたと思います。

米ツアーの最終QTには、山下美夢有選手のほか岩井明愛・千怜選手、原英莉花選手が出場を予定しているそうで、昨年に続き国内のトッププレーヤーが米ツアーに参戦することが考えられます。

今シーズン、米ツアーを中心にプレーした日本人選手は、笹生優花選手やエビアン選手権で優勝した古江彩佳選手をはじめ、畑岡奈紗、渋野日向子、勝みなみ、西村優菜、西郷真央、吉田優利、稲見萌寧の9選手がいます。

そこへ竹田麗央が加わり、岩井ツインズや山下美夢有も行ってしまうとなると、来年の国内ツアーにはもう誰もいなくなるのではないかと心配する見方もあるようです。

一方では、ベテランの上田桃子選手が、今年のツアー終了をもってトーナメントの第一線から身を引くことを発表しました。

3年前に結婚した彼女には、将来の家庭的なこともあるでしょうし、出場できないのではなく惜しまれてクラブを置くという自分の道を選べるこのタイミングでの決断だったのだろうと思います。

賞金女王を獲得した実績も誇る彼女は、幸せな女性アスリートの美学を貫く、後輩たちがひとつの理想的なケースとして仰ぎ見る存在になっていくのかもしれませんね。

竹田選手の登場とちょうど入れ替わるようで、世代交代とも言えなくもないですね。

実際、ここ数年間のツアー優勝者は、プロ入り3年以内の若手が占める割合が高まっている印象を受けます。

2014年のバンテリンレディスに高校1年で史上最年少アマチュア優勝を飾った勝みなみ選手や、2016年の日本女子オープンを高校3年の17歳で勝った畑岡奈紗選手など、いままで15人のツアー優勝者を輩出している黄金世代が有名ですが、それ以降の世代も活躍してきています。

プロテストの合格年で考えると2018年のプロテスト合格者21人のうちツアー優勝者は半分近くの9人もいて、この中に全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手や日本女子オープンを2勝した原英莉花選手などがいます。

2019年合格組の21人では西村優菜、安田祐香、山下美夢有、セキ・ユウティン、吉田優利、笹生優花、西郷真央の7選手がツアー優勝していて、2020年組の23人の中で岩井明愛・千怜姉妹を筆頭に阿部未悠、桑木志帆の4選手がすでにツアー優勝者に名を連ねています。

おそらく、ここに名前の挙がった選手以外にも多くの選手が、米ツアーへ、世界へと飛び立って行き、これからも続くでしょう。

それでも、まだ後から彼女たちを追って新星が登場してくるでしょう。

これは今、日本国内にはそれだけ広大なゴルフの裾野が広がっているということの証しだと思います。

わたしの目にはそう映っています。

あなたの近くにいる子たちが、数年もしないうちに見違えるほどのプレーヤーになることだってあるでしょう。

ただ、それは恵まれているケースであって、誰もが成長できるとは思わないでください。

いままでツアーを支えてきた人たちがいて、ツアーで活躍してきた人たち、そして家族の支えや本人の努力がすべてが重なりあって、いまがあるということを忘れないでもらいたいです。

「オレのおかげだ!」「私の功績よ」とひとりひとりが思った瞬間、崩れ落ちていくものだと思います。

おごらず謙虚な気持ちを持ち続けていたら、日本女子ツアーの注目度は上がり続けていくと思うし、そうであってほしいと心から願っています。

「“一事が万事”ともいいますよね!」（PHOTO by Ayako Okamoto）

週刊ゴルフダイジェスト2024年12月10日号より

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