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【名手の名言】岡本綾子「何で入らなかったのか、納得いかずに引き返してやってみたの……

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は日本女子ゴルフの礎を築いたレジェンド・岡本綾子言葉をご紹介!


何で入らなかったのか
納得いかずに引き返してやってみたの……

岡本綾子


この言葉だけではむろん、分からない。シチュエーションはこうだ。時は1991年、ベセスダCCで行われた全米女子プロ選手権。優勝はメグ・マローン。岡本は1打差で2位に沈んだ。

89年の同大会でも2位。87年の全米女子オープンでは、3人のプレーオフで敗れ去っている。しかし、その年は賞金女王の座に輝いている。

つまり、岡本はメジャーにいつ勝ってもおかしくないし、また勝つことは必然だと思われていた頃の話である。

91年の全米プロに話を戻すと、最終日、最終ホール、岡本は4メートルのパットを残していた。これを入れると、マローンに並び、プレーオフに持ち込むことができる。

岡本は打った瞬間、入ったという顔をしてカップを見つめたが、しかしボールは無情にもカップの右縁に外れた。

「完璧に打てたの。入ったと思った」

という岡本はなぜ外れたか、納得がいかないまま、会場を後にした。が、ステアリングを握りながら岡本はUターンすることになる。

そして再び、18番グリーンでさっきと同じ4メートルを打って、やっと完璧に打てたパットがなぜ外れたか、納得するに至るのである。

カップの10センチほど前に、1本の強い芝芽があって、それがボールの転がりをわずかに右に変えてしまったのだ。わずか1本の芝芽が勝負の明暗を分けたのである。

その後、岡本はメジャータイトルに手が届くことはなかった。これもまた、ゴルフの難しく楽しいところなのだ。

■岡本綾子(1951年~)

おかもと・あやこ。広島県生まれ。今治明徳高校~大和紡績ではソフトボール部に在籍し、エースで4番バッター。国体優勝の祝勝旅行のハワイでゴルフに出会い、帰国後、1973年に池田CCで修行を始めるや、翌74年秋には2回目の受験でプロテストに合格。するとデビュー年となった75年に初優勝。81年には年間8勝して賞金女王に輝いた。翌年から米ツアーに参戦すると、こちらもその年に初優勝し、以来主戦場を米ツアーに置く。そして87年には4勝を挙げ、日本人初の米賞金女王となった。国内44勝、海外18勝。05年世界ゴルフ殿堂入り。