【競技ゴルファー・タニシゲ】Vol.8「ターゲットに真っすぐ向く」にこだわる必要はない
我流ゴルファー・タニシゲとして長年プレーしてきたが、青木の指導で目からうろこを落としまくる谷繁元信。これをどうラウンドに生かすか、捕手としてプロ野球出場2963試合を誇るレジェンドの状況適応力、応用力が光る。
PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/六甲国際GC
スウィングプレーンのコントロールで
ボールもコントロールできる
谷繁 パターの打ち出し角やフォローの長さ、スウィングプレーンの向きなど、これまでなかったゴルフの引き出しが確実に増えてきています。
青木 あとは、適切なときに適切な引き出しを開けられるかどうか、ですね。
谷繁 そのほうがずっと難しいですよね。
青木 ラウンド中に試してみるしかないんですよ。とにかく、コースでやってみる。
谷繁 で、一緒に六甲国際のコースに出てみたんだけど、いきなり左ドッグのコースを選んでくれたじゃない(笑)? フェードヒッターのこの僕に。
青木 意地悪じゃないですよ(笑)。左ドッグレッグのホールなんて山ほどあるんですから。谷繁さんがどうティーイングエリアを使うか、アライメントをとるかチェックしようとしていたんです。
谷繁 ちなみに、アライメントっていうのは、ターゲットに対してクラブのフェースや体、足の向きを平行に構えるってことですよね。
青木 はい、基本的に正しいです。
谷繁 なので、ティーイングエリアでは、右寄りに立ち、左方向の木を狙ってフェードで右に戻ってちょうどフェアウェイのど真ん中、という計算で打ちました。
青木 通常の谷繁さんのフェードの曲がり幅だったらドンピシャだったはずです。
谷繁 それが、レッスンのおかげもあり曲がり幅が減っていたから、左の木のさらに左に行ってしまって、球がフェアウェイに戻って来なかった。
青木 難しいところなんです。自分の曲がり幅に変化が出るようになると、それを把握するには時間が必要です。ただ、さすが谷繁さんと思ったのが、まずティーイングエリアの右側にティーアップしたこと。フェードヒッターが左ドッグで、左側に木がたくさんあるホールで左サイドにティーアップしたら、ナイスショットの確率はかなり低くなります。
谷繁 ティーアップの位置は良かったんですね。
青木 そうです。
谷繁 それでね、実はあえて言わなかったけれど、スウィングプレーンの意識はしていたんですよ。こっそり、スウィングプレーンをやや右に向けて打っていたんです。
青木 やっぱりー。以前、ドライバーショットはボールが最下点より先にあるため、球が左に出やすい。だから、スウィングプレーンをやや右に向けて打つとターゲット方向に飛ぶとアドバイスしましたもんね。
谷繁 そう、ターゲット方向には飛んだわけ。でも、思ったより曲がりが少なかった。
青木 難しいですよね。でもね、谷繁さん、考えてみてください。もし左ドッグのホールで、ティーマークが左側にあったら。これまでは、イヤーな感じだったでしょう。
谷繁 もう絶望的でしたね。なんで、ここなんだよって(笑)。
アライメントの
概念が変わった
青木 それが、スウィングプレーンの向きという引き出しが開けられれば、たとえティーマークが左にあったとしても対応できますよね。
谷繁 確かに嫌な感じはなくなるね。なるほど。
青木 ターゲットに“常に真っすぐ向く”ことにこだわらなくていいんです。
谷繁 要はスウィングプレーンをコントロールすればいいんだ。アライメントの概念が変わりますね。
青木 スウィングプレーンをコントロールできれば、実はどこにでもボールは打てるんです。
谷繁 その後、あえてティーマークの位置を左にズラして打ってみたけど、スウィングプレーンを意識したら、思うところに球が運べました。ラウンド中、いろんな雑念が入ってくるけど、スウィングプレーンのコントロールは忘れないようにしないと。
青木 それが球のコントロールにつながるので。集中集中。
谷繁 野球の現役時代は、キャッチャーをしているとき、打者の集中力をそぐのが仕事だったんですよ。バッターの意識を投手5割、捕手5割にできたら大成功でした。
青木 ときには、ささやきも駆使して(笑)。
谷繁 松井秀喜くんが焼き肉のたれのCMに出ていたとき「松井くん、今日は、何だれ?」とささやいたこともありました。そしたら平然と「黒だれです」などと返事をしてきて、ガツンと打たれたものでした。松井くんには、ささやきは通用しなかった。
青木 ティーイングエリアではささやいてくる人はいないと思うので、安心して自分の世界に入ってください。
谷繁 でも「中日の開幕3戦は……」と話しかけられたら「涌井のナイスピッチが……」とか、話し込んでしまいそう。松井くん風に「いいとこと悪いとこがありました」みたいにサクッと返さないと、ですね(笑)。
苦手としていた左ドッグレッグのホールの対応策を習得。夏の“本番”で生かせるか
週刊ゴルフダイジェスト2024年4月30日号より
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