【ゴルフ野性塾】Vol.1831「子供達の夢の花はいつか必ず咲く」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
ゴルフには
如何なる勇気が
要るかと問われた事がある。
私は勇気持たぬ人間であった。
あらゆる面で勇気とは縁遠い日々を送っていた。
ただ、ゴルフのボールを打つには自信と勇気、智勇と蛮勇が必要であった。
智勇とは結果を考える勇気であり、蛮勇は結果を考えぬ勇気である。
この智勇と蛮勇があればボールを打つのに不自由はしない。
不自由しなければゴルフは楽しく、不自由する様ではゴルフは難しくなるばかりである。
私は子供達にゴルフを教え、学生達にゴルフを教えて来たが幼い子供程、勇気の存在を知っていたと思う。
知恵、知識、経験ではなく本能で知っていた。
ゴルフとゆう競技は怖れと戦う側面を持つ。
怖れる気持ちとゆうのがどうしても結果を幾つも作るからだ。
結果は一つ。
最善を生み出し、その最善に近づくショットが打てたのかとゆうことだ。
その一つの結果に向って最善を尽くす。
だから皆、勇気が必要と言うが、少ない勇気で生きて行く事、出来ればいいと思う。
子供達の持つ勇気が子供達のゴルフを強く逞しくして行った。
現在時6月12日、午前10時48分。
福岡の己の部屋。
自宅廊下で転倒し、頭、胸、膝を強打し病院へと担ぎ込まれた日から2週間が経った。
病院は退院したが、本稿執筆を続ける事が出来ぬ。
口述筆記は些(いささ)か骨が折れるが故にだ。
読者諸兄に76歳のこの身、暫しの休養を乞う。
然(さ)り気なく生きて来た我が身、これからも然り気なく生きて行こうと思う。
御自愛あれ。
子供の努力を信じて 生きて行け。
中学生の娘がゴルフに取り組む日々を送っています。塾長は多くのプロゴルファーを育て上げてこられましたが、プロになれた子となれなかった子の差は何だと思われますか。どこでその差がつくのでしょうか。子供の才能を伸ばすにはどうすればいいでしょうか。(神奈川県・匿名希望・43歳・ゴルフ歴20年・HC6)
私は信じた。
塾生の持つ才能ではなく、塾生それぞれの努力をだ。
祈るのではない。
信じて来たのだ。
才能が出すのは結果である。
才能そのものの姿は見えない。
だが努力は見える。
練習の球数、練習に如何なる工夫が加えられているのか、そして何よりも見えたのはゴルフが好き、戦う事が好きとゆう心の姿勢である。
ゴルフが好きであれば子供の練習は続く。
毎日300球打つにはゴルフ好きの気持ちが要る。そしてその練習がプロへと繋がる。
ただ300球打ち続ける量は維持出来ても質は変り行く。
その質の変化が緩やかである程、確かな上達が期待出来る。
変化、急なれば気紛れ、衝動、強欲、我儘、忍耐不足の発生であり、稽古、鍛錬、経験、練習の領域、緩やかさが最善のスピードである。
そして、好きとゆう気持ちも変って来るものだ。
好きと楽しいの認識の区別、必要なる時は必ず訪れる。
この認識の区別必要とする年齢は18歳から25歳の間。
ゴルフが好きの気持ちあれば毎日1500球、打ち続ける事は出来る。
楽しい気持ちだけで毎日1500球打つは難しいと思う。
コースラウンドが楽しい、いいスコア出るのが楽しい、友人と回るのが楽しい、好きな時間に練習場打席に立って、今日は300球打ち、明日は500球、の練習するのが楽しいとゆう日々は楽しいとの気持ちが生む練習である。
好きであれば一日1500球、楽しい気持ちであれば一日500球の練習。
これが好きなる気持ちと楽しい気持ちの違いであります。
急ぐ事はない。
焦る事もない。
子供達の持つ夢の花はいつかは咲く花だ。
ただ、咲き時、咲き場所は人によって違う。
山のテッペン、絶壁、川沿い、海辺、野っ原と幾つも咲く場所はある。
春咲く花、夏の花、秋の花、冬に咲く花もある。
私は塾生に言って来た。
早咲きする山のテッペンの花は淡々として小さい花だ。
急ぐな、焦るな。
最後に咲く野の花になれ。
大きな花だ。
色豊かな花だ。
蜂が飛んで来る花だ。
人の世に幸せを与える花だ。
春でもいい、夏でもいい、秋でもいい、冬でもいい。
何処かで咲く花になればいい。
咲くまでじっと待ちゃいい。
急ぐな、焦るな、と。
そりゃ早く結果を出して来る塾生はいた。
しかし、その結果はその子にとっての野の花であったと思う。
今、咲かなければ根腐れするか、咲き時を逸して根っ子だけが残る悲しい花となるだろう。
だから咲いた。
周りから見れば早咲きの花であっても、本人にとっては咲く迄の時間に余裕もあれば急ぐ気持ちもない野の花であったと思う。
熊本塾生、札幌塾生、福岡塾生、船橋、東海、神戸、それぞれの塾生、皆が早咲きはしなかった。
遅咲きの子ばかりだった。
急がず、焦らず、そして好きとゆう気持ちを持ち続けて行けばいい。
好きなればこその1500球、毎日打ち続ける中で心と気持ちが変化する時が訪れる。
ゴルフするのが楽しくてプロを目指したとて挫折が待つ。
一日1500球打てる気持ちあれば挫折はない。
周りには挫折の時と思われても本人の中では挫折の認識ゼロである。
ここに鈍感さが要る。
プロになった者は皆、ゴルフ好きであった。
一人の例外もいない。
打てる時間あれば1500球打っていた。
打てる者は黙って打っていた。
そしてその球数を打った者がプロテストに通り、ツアー参戦し、シードを取り、勝利の瞬間に向って突っ走って行った。
好きとゆう気持ちがあるか、ないか、で練習量は変り行く。
そして練習量増えると質も変り行く。
同じスウィング型とスウィング中の同じ位置での力の入れ様と同じリズムで打って行く。
その型、位置、リズムを覚えれば100球も1500球も同じ様に打て100球と1500球、いずれの時も同じスウィング型、同じ力の入れ処、同じリズムになればプロテストには通る。
子供の才能は心の中に在ると思う。
好きとゆう気持ちである。
好きであれば一日1500球は打てる。
時、過ぎてゴルフが好きだった、は超一流の言葉。
あの頃はよく練習した、は一流の言葉。
もっと練習していれば、は二流の言葉。
やり直せるものなれば、は三流の言葉。
三流半の私は、悔いを隠して来た。でも悔いがあったから明日こそ、と思う日々であった。
貴兄は我が子を信じて生きて行け。
花は咲く。
人の世に咲かぬ花はない。
急がずともよい。
焦らずともよい。
貴兄の我が子を信じる力、強き事を祈る。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2024年7月2日号より
>>坂田信弘への質問はこちらから