【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.181「その言い訳、聞かれてますよ!」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Shinji Osawa
たまにプロゴルファーの先輩と回るようにしておるんですが、技術的なことはもとより、精神的なこととか所作の面でもためになることは多いんですわ。 海老原清治さんはそんな先輩の1人です。以前、「トップで親指が裏返るんだよ」と言っておられたので、その後どうなったかを聞くと逆に、「そんなの気にすんじゃねぇよぉ」って言われました。
直そうとするんはええかもしれんけど、それを気にすることはよくないことと、海老さんみたいな達人は考えるんやなあ思いました。そのときに、「おまえは人のゴルフを見るのも好きなんだなあ」とも言われました。実際、興味あるんですよ。海老原さんのような先輩のゴルフは特に、「クラブの使い方ヤバいな」とか、そういうのをずっと見てますね。
でも僕に限らず、ゴルファーいうんは同伴競技者のことをよく見てるもんです。たとえば、試合中に“ガッデム”したり、地面を蹴散らしたり、クラブ投げたりね。アメリカの選手なんかは、ああやって発散して次に切り替えていると言います。そういう文化のなかで育ってきたら何とも思わないだろうけど、僕ら日本人からしたら、周りの人に気分悪い思いをさせることは最低のことですからね。クラブをブン投げてこのヤローなんて近くで言われたら、「俺、なんかおまえにしたんか?」思いますよね。見てる人からは、「またやっとる」と思われるだけですから、まあやらんほうがええですね。
ブツブツ言うとる言い訳も、けっこう聞かれてますよ。「あー、テンプラや」とか「これは擦ったなあ」とかよく聞くけれど、そんなん言わんでも球がしゃべってますから見てる側はわかってます。「ああ、また始まった」と思われてまっせ。
そういう僕なんかも、ブツブツ言ってますからね。「昨日まで腰痛めててさあ」とか、ポロっと出てしまうことがあります。そういうポロっと出たところを見られて、「また言うとるで」と笑われていると思うと、ブツブツ言わんとこうという戒めになります。 海老さんに「おまえは人のゴルフ見るのが好きなんだなあ」と言われ、“人のふり見て我がふり直せ”、いうことに思い至った次第です。
「人を観察するのも大事。そして、人のふり見てわがふり直すことです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年6月18日号より