【浦ゼミナール】Vol.51 話題の“10Kドライバー” 欠点は「やさしすぎる」こと!?
身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。各社の最新ドライバーはすでに試打済みだという浦さん。今年話題の「10K」のドライバーについて聞いたところ「やさしすぎてつまらない」という。褒めているのかけなしているのかわからない感想が飛び出してきた。その真意とは?
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・池上で√d golf academyを主宰
「10K」は球が曲がらない
圧倒的なやさしさがある
――前回に引き続きドライバーの話ですが、今年はテーラーメイドやピンの「10K」(慣性モーメントが上下左右合計で1万g・㎠)超えのクラブが話題です。浦さんはすでに打たれましたよね?
浦 打ちました。ラウンドで使いましたが、正直、アレはダメですよ!
――えっ、よくなかったんですか?
浦 逆です。よすぎました。本当に曲がらなくて、適当に打ってもフェアウェイを外さないんです。その日は体調が最悪だったんですが、ティーショットは全部フェアウェイ。
――その何がダメなんですか?
浦 簡単すぎて、ゴルフが楽しくない(笑)。ミスショットしても球が曲がらないし飛距離もほとんど変わらないので、私にとってはひどい当たりだったのに同伴プレーヤーに「ナイスショット!」とか言われてしまうのは、まるで全自動運転の車に乗っているみたい。ショットに一喜一憂しながらプレーする喜びがなくなってしまうほどです。
――すごいですね。アマチュアには最高の機能じゃないですか。
浦 どうでしょうか。フェアウェイに置くための道具と考えるなら完璧。競技に出るなら使わない手はないと思います。でも難点を挙げると、どのショットも全部80点になってしまう感じなんです。本来30点の当たりが80点になってくれるけれど、真芯を食って「これは飛んだぜ!」という120点の球も出ないんです。これ、つまらなくないですか?(笑)
――確かに、そういう楽しみもゴルフの醍醐味かもしれませんね。
浦 それに、いつも芯で打てる人にとってはあまり旨味がない性能ともいえます。PGAツアーでも、当初「10K」タイプのヘッドを使っていた選手が何人かスタンダードモデル(MAX)に戻しているのは、全部80点になるのがむしろいつも20点減点されている感じがするからじゃないですか。
――なるほど。でもそれはごくごく一部の人ですよね。アマチュアにとっては画期的な機能ということで間違いないでしょうか?
浦 概ねそうですが、やはり万人に合うというわけにはいきません。慣性モーメントが大きいぶん、バックスウィングで一度フェースを開いてしまったらインパクトまでにスクエアに戻すのが難しいので、フェースの開閉量が大きい人はプッシュアウトしか出ないかもしれません。
――そういう人はどうすれば?
浦 やっぱり重心距離の短い小ぶりヘッドのドライバーを使うのがいいんじゃないですか。「10K」の恩恵は受けられませんが、スウィングに合わないクラブはダメです。私もその後、小ぶりヘッドのドライバーを使ってプレーしたら、曲がるけれども最高の一発も出たり、結果に一喜一憂できて、打っていて「楽しい!」と思えました。
――贅沢な話ですね(笑)。
最新ドライバーは
昔の打ち方が合う
――今後、ドライバーはこういった大慣性モーメントの方向にさらに進んでいくんでしょうか?
浦 もちろんこの性能はさらに進化していくでしょうけれど、慣性モーメントが8K(8000g・㎠)前後で、適度なコントロール性を備えたバランスのいいクラブも出てくると思います。フェースの開閉量の多い人や一喜一憂を楽しみたい人はそういったタイプを、とにかく曲げたくない人は慣性モーメントが極大なものを選ぶという感じでしょうか。
――「10K」タイプのドライバーはフェースの開閉がダメとのことでしたが、普通に打ったらプッシュしてしまう人でも打ちこなすコツはありませんか?
浦 ズバリ「頭を残す」ことです。私はいままでレッスンではこのワードは絶対に使わなかったんです。むしろ古い化石のようなレッスンの象徴として嫌っていた言葉なんですが、「10K」を打って考えを改めました。一周回って「大慣性モーメントドライバーは、頭を残せ!」と言わせてください。
――それはどうしてですか?
浦 フェースの開閉を抑えて振りたいからです。頭を残さずに、少しルックアップ気味に回転していったほうがフェースの開閉はスムーズになりますが、大慣性モーメントの場合はその「スムーズな開閉」が不要なんです。ポイントはアゴです。アゴの位置がズレないように空間をキープしたままスウィングするイメージを持ってください。
――松山英樹選手みたいなイメージでしょうか?
浦 まさにそれです。バックスウィングでは、左腕を抱え込むように右に持っていき、左肩をアゴにくっつけるようにします。左肩の位置が上がってもいいので、顔を傾けずに正面に向けておくこと。ただしこれだと腕が右に寄って胸の前の空間が潰れてしまっているので、肩はそのままで腕だけ少し戻し、手元が胸の前にある位置がトップです。フォローでもこの反対の形を意識して、アゴの下で左右の肩が入れ替わる動きをイメージしてください。
――これが「10K」時代のスウィングですか。
浦 「10K」に限らず、ここ3年くらいの慣性モーメントが大きめのドライバーは、全部これでOKです。ただしこれだと球が左に行く人もいると思うので、その場合は少し右方向に打ち出すイメージを持ってください。
大MOIドライバーのポイント1
肩にアゴがくっつくようにトップを作る
アゴと肩をくっつける際に首が左右に傾かないように注意。顔は真っすぐ立てておこう
大MOIドライバーのポイント2
頭もアゴもフォローまでキープ!
月刊ゴルフダイジェスト2024年6月号より