【陳さんとまわろう!】Vol.248 ベン・ホーガンの腰のキレ、凄かったですよ
ボールをより飛ばすための“腰のキレ”。陳さんがさらに詳しく教えてくれた。
TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ
腰の回し方が遅くては
“キレ”とはいえない
――前回、腰のキレについて陳さんは腰を回すこととおっしゃいましたが、もう少し詳しく説明してもらえますか。
陳さん はい。これはインパクトしてボールをつかまえたと同時に腰を素早く回すことですがね、この素早くというのがキレになるわけよ。回し方が遅くてはキレとは言わないんだ。ちょっとアナタ、そこで腰を回してみてください。クラブは振らなくていいですから、ドライバーショットのつもりで腰を回してみて。
――(いつものドライバーショットを思い出しながら腰を回す)
陳さん ぜんぜん。
――えっ?
陳さん ぜんぜん回ってないし、遅すぎますよ。もっと速く。
――(ドラコンホールをイメージしながら、もっと速く腰を回す)
陳さん まだまだ。そんなんじゃボールは飛ばないじゃない。飛ばしたかったらもっと速く、スパッと回さなくちゃ。
――(腰を思い切り速く回してみること三度四度)
陳さん アハハ……、まだちょっと物足りませんけど、いいでしょう。速く回すのは案外きついんだ。それに素早く回した腰の動きにクラブを振る動きが付いていかなくちゃいけませんからね、ボールを飛ばそうとしたらそれなりの体をつくっておく必要があるわけよ。
――確かに。腰をこんなに速く回した経験がないですから、これだけで息が速くなりますね。
陳さん そうでしょ。ベン・ホーガンの腰のキレは凄かったよ。とても速かったんだ。それと同時にヒッティングエリアに入ってからのクラブの振り抜き方が速かったの。そうだねえ、ダウンスウィングで手の位置が右腰のあたりに下りてきたところからかなあ、そこから一気にビュンとクラブを振り抜いていくわけね。すると低い弾道で、目標を刺すようなボールが飛んでいくんだ。ドライバーでもアイアンでもよ。それを見たらね、こんな人と戦っても勝てるわけないって自信喪失するよ。それまで日本の先輩プロのスウィングやショットを見て、なんて上手いゴルフをするんだろうって感心していましたがね、ウェントワースでホーガンのスウィングと打球を見てからは、一変しました。上には上がいるんだって。世界は広いんだ。
――いまはYoutubeでホーガンの映像をいくらでも見られますが、生で見たかったですね。
陳さん そうねえ、生でショットを見た日本のプロは少ないし、その少ないプロもほとんど亡くなりましたから、私は貴重な生き証人だ(笑)。
――ホーガンの腰の動かし方が当時の日本のプロと違っていたということですが、その辺をもう一度。
陳さん ホーガンはバックスウィングで腰を右に回さないんだ。右足にウェイトをかけるだけなの。するとどう見えるかというと、腰を右に平行移動させたように見えるわけね。これはアナタもやってみればよく分かるんですよ。そこに立って、右足に体重をかけてみてください。
――右足に体重をかけて、休めの状態にするんですね。
陳さん はい。それがホーガンのバックスウィングの腰の動きですよ。それからダウンスウィングでも腰を左へ平行移動させて、インパクトから一気に腰を切っていく。これが低く刺すような弾道を生む腰の動きなんだね。
陳清波
ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた
月刊ゴルフダイジェスト2024年5月号より