【浦ゼミナール】Vol.13 ドライバーとアイアン、打ち方は同じ? 違う?
身長171cmで420Yという驚異の飛距離を誇る浦大輔が、スキルアップのコツを伝授する連載「解決! 浦ゼミナール」。ドライバーとアイアンのスウィングは同じなのか、違うのか。諸説あるが、浦さんはどう考えているのだろうか?
TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroyuki Tanaka THANKS/√dゴルフアカデミー
浦大輔
うらだいすけ。身長171cmで420Y飛ばす飛ばし屋にして超理論派。東京・赤坂で√d golf academyを主宰
ドライバーは上げる
アイアンは抑える
――素朴な疑問なんですが、ドライバーとアイアンってスウィングは同じがいいんですか、違うんですか?
浦 そりゃあ違いますよ!
――やっぱりクラブの長さとか重心距離とかが……。
浦 あ~、そんな細かい話じゃありません。アイアンは地面に置いてあるボールを打つけど、ドライバーは空中にあるボールを打つ。これが決定的な違いです。
――ティーアップしているかいないかの違いということですか?
浦 はい、そう言っても問違いではありませんが、もう少し複雑です。地面にあるボールを打とうと思ったら、どうやったってヘッドが地面に当たりますが、ティーアップして空中にあるボールを打つなら地面に当たることを考えないで打てる。これが前提にあるから、ドライバーはロフトが9度とか10度とかの球が上がらないクラブを使って、スウィングで球が上がるように打てる。そうすれば低スピン・高打ち出しで飛ぶボ—ルが打てます。かたやアイアンは、ロフトが多いから普通に打てば球が上がるんです。だからドライバーとは反対に、勝手に上がってしまう球を抑えるようなスウィングが必要になる。
だからアイアンはインパクトでロフトを立てて当てるけれど、ドライバーではその必要はないんです。
アイアンは最下点手前で、ドライバーは先で当たる
ボール位置が違えば当然インパクトでの当たり方も変わる。スウィング軌道の最下点の手前で当たるアイアンはダウンブロー、先で当たるドライバーはアッパーブローになる。ボールを「抑える」「上げる」はあくまでこれを前提としたアレンジだ
――でもPGAの選手のスウィングなんかは、ドライバーもロフトを立てながらインパクトしているようにも見えますが……。
浦 彼らはドライバーをドライバーのスウィングで打っていませんからね。むしろドライバーもアイアンのように“飛ばさないように”打っているんですよ。
――300ヤード以上キャリーさせる彼らが“飛ばさないように”打っているんですか!?
浦 そうです。彼らのポテンシャルで飛ばそうとして振ったら400ヤードだって飛ばせるでしょうけれど、そのスウィングではやはり曲がるので、PGAツアーのシビアなセッティングではスコアが出せない。だから普段は飛距離を抑えて精度を優先しているんです。一昨年だったか、ダスティン・ジョンソンが430ヤードくらい飛ばしてパー4で1オンさせたことがありましたよね。条件が揃って、リスクを覚悟で飛ばそうとして振れば、あのくらい飛ばせるという証拠です。
――じゃあ、PGAの選手のスウィングはマネしちゃダメってことか。
浦 飛ばしたいなら、ドライバーはマネしないほうがいいですよ。ちゃんと最下点の先でアッパーにボ—ルをとらえて、“自分で球を上ける”ことが飛ばしには必要なんです。
アイアンはボールではなく地面を叩く
――では、2つのスウィングの違いは、どうやって身につければいいのでしょうか。
浦 ドライバーはアイアンよりも上体を少し右に傾けて、アッパーなインパクトがしやすい構えを作ります。「第五肋間筋」より上だけを傾けるのがポイントです。
――「第五肋間筋」ですか?
浦 胸の下のところですね。肋骨と肋骨とを連絡している筋肉で、腰や下半身から右に傾けちゃダメ。みぞおちより上だけを傾けるイメージです。これで軸が右に傾いて、アッパーなインパクトが作りやすくなります。そしてアドレスのポジションよりも左に流れないようにインパクトすることが大事です。多少右に残ってもOK。これがティーアップしているメリットですからね。
――なるほど。アッパーに振ると言ってもすくい上げたりするのではなく、軸を少し右に傾けておいて振るということですね。
浦 そうです。インパクトのイメージを養うには、ボールに色を塗って構えてみるといいですよ。ボールの4分の3を黒く塗りつぶして、“目玉のおやじ”みたいにするんです。そして、ドライバーはこの塗り残した白い部分が真右よりも少し下を向くようにセットして、白いところを叩くようなイメージでスウィングします。
ドライバーはボールの右下を叩いて飛ばす
ドライバーはボールの右下の面を叩くイメージ。みぞおちより上を右に倒し、軸を少し右に傾けてスウィングすることでアッパーなインパクトを作る
――なるほど! これならアッパーなインパクトをイメージできます。
浦 これを練習場で打つわけにはいきませんが、プラスチックボールなどで作って家の中で打つ練習をしたら、絶対飛距離が伸びますよ。
――ではアイアンは?
浦 アイアンは白い部分が真上を向くようにして置いてください。ただアイアンの場合は、ドライバーと違ってボールを直接打つイメージはないので、これよりもいい練習方法があります。
――ボールを打たないんですか?
浦 ボールを打つんじゃなくて、ボール横の地面をソールで叩くイメージが大事。ボールの手前の、ちょっと自分の体寄りの位置ですね。ここにソールをぶつけるようにスウィングした結果、フェースがボールに当たるという感じ。ですので、ヘッドのついていない棒で、ボールの手前を振る練習が効果的なんです。ちょっと長いですが、ヘッドを外したドライバーのシャフトでもイメージ作りには有効です。ボールを打とうとすると、地面のイメージがなくなっちゃうんです。前述のように、アイアンは地面に置いてあるボールを打つ動作。だからスウィングに“地面”という基準が絶対に必要なんです。
――なるほど。やはりアイアンは地面を叩く感覚が必要なんですね。
浦 ドライバーもアイアンも基本の軌道は同じですが、こういうイメージが全然違うということです。
アイアンはソールでボール横の地面を叩く
アイアンのインパクトのイメージを養うには、ヘッドのついていない棒でボール手前の地面を振る練習が効果的。ここにソールをぶつけるイメージでスウィングしよう。塗り分けボールを使う場合は、白い面が真上を向くように置く
月刊ゴルフダイジェスト2021年2月号より