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【イザワの法則】Vol.39 プロの試合は“定点”で観戦するといろんな気づきが得られます

トーナメントの中継をただ見ているだけでは、プロがどういう意図を持ってそのショットを打ったのか、いまいちつかめないことがある。どういう見方をすれば、中継をもっと楽しめて、それを自分の上達につなげられるのか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Takanori Miki THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

ショットの「意図」は
テレビ中継では少しわかりづらい

アマチュアの方がテレビのゴルフ中継を見ていると、いろいろな疑問が湧くと思います。たとえば、なぜあのプロはあの方向に打ったのかとか、なぜ同じホールでみんなが同じサイドにミスするのか、とか。実際にコースを知っていれば、まだ想像できる部分はありますが、そうでないと放送の解説者が頼り。でも、自分の疑問にピンポイントに答えてくれるケースは少ないはずです。

私もときどき、中継の解説を頼まれますが、解説者は解説者でなかなか大変です。というのは、ライの状況とか、そのプロのショットに入る前のルーティン、素振りの感じなんかをつぶさに見ていれば、「ああ、今からこんな感じで打つのか」というのがわかるんですが、中継は画面が切り替わってすぐに打っちゃうことが多いので、ほとんどの場合、「スウィングと結果」だけしか見られないからです。それに、どのプレーで解説を求められるかというのも、そのとき次第なので、「今の映像だけで急に振られても……」と思うことは、正直あります(笑)。

最近は1番ホールだけをずっと放送し続ける中継もありますが、ああいう形式だと、アマチュアの方が見ていても、プロのコース攻略の考え方とかショット選択の意図みたいなものがわかりやすいんじゃないかと思います。たとえば、プロはティーショットをどこに打つと、次のショットでグリーンのバーディエリアを狙いやすいかを知っていますので、球筋にかかわらずほとんどの人がほぼ同じところに打っていきます。そうすると、狙い通りにティーショットを打てた人とそうでない人に分かれるわけですが、狙い通りにいかなかった人というのは、やっぱりピンに絡むショットや、バーディが狙える位置にオンすることが少ないというのがわかってくると思います。それを自分のゴルフに当てはめてみると、「いつもあのホールで左に外すから、グリーンに乗らないのか」みたいな“気付き”があるかもしれません。


「定点中継」や「ギャラリー観戦」だと
伝わる情報量が多い

テレビではなく、試合を生で観戦しているギャラリーの人たち、特に18番グリーンとか、どこかのティーイングエリアといった「定点」で観ている人たちというのは、ときどきプロよりもコースのことをよくわかっていたりします。18番のグリーンでラインを読んでいると、ギャラリーの方が「あれ、スライスだよね」とか言うのが聞こえることがあって、自分の見た目とは違って「えっ!?」と思うことがよくあります。基本的には自分の見た目を信じて打つんですが、大抵の場合は、ギャラリーのほうが正しいですね。

また、テレビ中継の場合はグリーンの起伏がかなり見えにくいので、どのエリアにオンするとラインがやさしくて、どのエリアだと難しいというのがわかりづらいんですが、生で観戦しているとそういうところまでちゃんと見えるので、プロの「狙い方」をわかって楽しめるという醍醐味があります。たとえば、グリーンのショートサイド(ピンが左右どちらかに寄っている場合の、ピンのあるサイド)のほうが単純な上りで、広いサイドからだと上って下りというケースだと、プロは大抵ショートサイドを狙いますが、テレビ中継だとその意図が伝わりづらい。生で観戦している人だけが、「ははん、なるほど」とピンとくるというわけです。

「150ヤード以内は『上り真っすぐ』のエリアを狙っていく。
ときにはそれがショートサイドのこともある」

ラフからのアプローチ
「フェースを開いてソールから入れる」

テレビ中継を見ていて、「アプローチであんなにフェースを開くんだ」とか、「バンカーはあんなに速く振るんだ」といったことが「見える」ときがある。そういう気づきを実戦で試してみることで、自分自身の技術の底上げにつながることは多い

伊澤利光

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2024年2月号より