Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • ギア
  • 【イザワの法則】Vol.38 スプーンを選ぶ基準は飛距離よりもいかに曲がらないか

【イザワの法則】Vol.38 スプーンを選ぶ基準は飛距離よりもいかに曲がらないか

メーカー契約があっても、3番ウッド(スプーン)だけは「契約外」のものを使っているプロは少なくない。なぜ、新モデルではダメなのか。そもそも、プロがスプーンを選ぶときの基準は何なのだろうか?

TEXT/Daisei Sugawara ILLUST/Kenji Kitamura PHOTO/Shinji Osawa THANKS/福岡レイクサイドCC(PGM)

前回のお話はこちら

よほどの優位性がないと
プロでも新モデル使用に踏み切れない

プロはシーズンごとに最新のクラブを使っているイメージがあると思いますが、バッグを覗いてみると、意外に使い込んだクラブが入っていることがあります。メーカーとの契約内容にもよりますが、ドライバーは最新モデルだけど、フェアウェイウッド、とくにスプーン(3番ウッド)は何代か前のモデルというケースが多いように感じます。

私も、今使っているスプーンは比較的新しいですが、その前のスプーンは3、4年使っていました。もちろんその間、新しいモデルが出ると、まず1回試してみて、ちょっと「合わないな」と思っても、クラブの個体差という可能性がありますから、もう1回だけ同じものを支給してもらって、それがよければそのまま使うし、ダメなら古いモデルに戻すという感じにしていました。古いモデルのスプーンを長く使っているプロは、ものすごく気に入っているから「替えたくない」というより、どちらかというと、もっといいものがあれば「いつでも替えたい」んだけど、スプーンは戦略的には割と大事なクラブなので、明らかに曲がらないというような優位性がないと、なかなか「替えられない」というのが実情だと思います。

あるいは、顔(ヘッドの見た目)の好みの問題で替えられないという人は多いかもしれません。今年、何かの試合で、倉本(昌弘)さんのバッグを見たら、「M2」(テーラーメイド)のスプーンが入ってましたけど、あれは多分、顔が好みなんだと思います。


方向性の悪いフェアウェイウッドは
ギャンブル要素が強い

ちなみに、スプーンを選ぶときは、飛距離ではなくて方向性を基準にするべきだと思います。これは、プロでもアマチュアでも同じです。なぜかというと、スプーンの用途というのは、ティーショットでドライバーの代わりに打つか、250ヤード(アマチュアなら200ヤード)以上も先のグリーン、またはフェアウェイを狙うという、おおまかに分けて2つに限られるからです。そうなると、ティーショットをわざわざスプーンで打って、ラフに入れたんじゃ本末転倒ですし、フェアウェイから打つときも、グリーンに乗る確率と、曲がってトラブルになるリスクを比べたときに、リスクのほうが大きいクラブは使えません。

そもそも、スプーンでグリーンを狙うケースというのは、1ラウンドで1回あるかどうかで、年間で考えてもそれほど多くはないでしょう。そのうち、何回グリーンに乗るかというと、プロだってそれほど確率は高くないはずですから、そう考えると「グリーンを外れたときにトラブルにならない」スプーンを選ぶというのは当然だと思います。

プロはときどき、13度とか、ロフトが立ったものを入れている場合がありますが、これは大抵ティーショット専用で、それ以外のシチュエーションではその下の番手を使うはずです。あまりロフトが立っていると、ティーショットで「刻みたい」という場合は飛びすぎてしまいますし、それ以外だと、フェアウェイバンカーやラフから打つのは難しいので、フェアウェイのよほどいいライ限定になってしまうからです。

私は、スプーンのロフトを15.7度にしていて、5番ウッドの距離と兼用という感じで使っています。グリーンの両サイドにバンカーがあるとしたら、そのバンカーまでは曲がらないというのが、スプーンを選ぶときの基準です。

「グリーンに乗る確率を年単位で考えれば
3番ウッドに求める性能がおのずと見えてくる」

“ミスの幅”でスプーンを選ぼう

プロ用の3番ウッドのロフトは、13~15度が一般的だが、伊澤プロのスプーンはそれより少し寝ている。1発の飛距離よりも、フェアウェイやバンカーから打つ際の「汎用性」を重視したセッティング。このロフトにすることで、むしろ使用頻度は増える

伊澤利光

伊澤利光

1968年生まれ。神奈川県出身。学生時代から頭角を現し、プロ入りしてからは、プロも憧れる美しいスウィングの持ち主として活躍。2001年、2003年と2度の賞金王に輝く。また、2001年、マスターズで日本人最高位の4位入賞(当時)。現在はシニアツアーを中心に活躍中

月刊ゴルフダイジェスト2024年1月号より