春の本格シーズン到来に向け、新調しておきたいパター。最新モデルもいいけれど、中古ショップには隠れた名器がゴロゴロ。中古パターの選び方のポイントやおすすめの狙い目モデルをご紹介。

パターは値が下がりにくい

中古パターを購入するうえで注意すべきポイントについて、「ゴルフガレージ」新橋銀座口店店長の桂雄介さんに話を聞いた。

「ほかの中古クラブ同様、パターも新商品が発売される少し前のタイミングで価格は下がるのですが、値下げ率は低いです。それは、ウッドやアイアンは古いクラブを売って新しいクラブを買うというサイクルが確立していますが、パターやウェッジはコレクションされたり、調子が悪いときの“セカンドクラブ”として手元に残しておくゴルファーが多いので、流通しにくいという特徴からです。なので、自分の気に入ったパターがあった場合、『もう少ししたら安くなるかも』という期待を抱いて待つよりも即決したほうがいいと思います」

安くなるどころか、突然値上がりすることもあるという。いったいどういうことか。「ツアーでプロが劇的な勝利を収めたあとに価格が上がることがあります。パターはプロと同じモデルが使える数少ないクラブなので、欲しいと思うゴルファーが増えれば値段は上がってしまうのです。正直、パターだけは我々も値段の変動は読みづらいんです」

では、賢く購入するためにはどうすればいいのか。

「やはり新商品が出ると値は下がるので、その少し前のタイミングですね。たとえばピンの21 年の新パターが4月（9日）に発売されるので、ひとつの契機になると思います。また、弊社だけではないと思いますが、ネットで在庫を掲載しており、その取り寄せにはお金がかかりません。つまり、お目当てのパターがたとえば西葛西店にあった場合、それを新橋銀座口店に取り寄せて試打。その結果購入しなくても、料金を請求されることはありません。コレクターの方でない限りは打音、打感、顔は実物を見て判断したほうが絶対にいい。このシステムはぜひ活用いただきたいですね」

桂店長のおすすめはコレ！

※価格は取材時（2/22）のもので、変動する場合があります

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大手中古ショップの立ち上げに参画し、現在はゴルフトレンドウォッチャーとして活動する児山和弘氏は、現在のおすすめ中古パターは慣性モーメントが大きいモデルだという。

「現在のパターの多くが、ヘッド重量を増し、異素材を使うなどして大幅に慣性モーメントを大きくしていて、その結果ミスヒットに強いやさしいパターが増えています。しかし、過去にも意欲的なコンセプトの大慣性モーメントのモデルがあり、当時はそれほど受け入れられなかったものでも、今から見ると非常に先進的だったモデルが多くあります」

たとえば、04年に発売されているピンの「Doc17」。フェース長が17cmを超える大型ヘッドで、現在でも史上最も大きなパターの1つに数えられる。ピンはその後も断続的に大型パターを発売しており、「Doc17」は、最新モデル「2021 ハーウッド」に代表される高機能ヘッドの原点といえるモデルだ。

「テーラーメイドでは、初代『スパイダー』やカップと同サイズの円形リングを搭載した『アークワン』などがおすすめです。ともに現在でも十分通用する大慣性モーメントのミスヒットに強いヘッドになっています」

現在人気の「スパイダー」型は、小ぶりで扱いやすい「イッツィビッツィ」サイズが主流だが、初代は今よりもずっと大きなヘッドだったのだ。「スパイダー」型は、一度人気が落ち着いた後、10年代になって、ジェイソン・デイがショートスラントネックを溶接したモデルを愛用して活躍したことで、非常に注目されるようになった。パットの名手、デイが愛用したことで、それまで大半がピン型だった米PGAツアーの選手も「スパイダー」を使用するようになったのだ。

「なんといってもデイと同形状の赤い『スパイダー』を使って、悲願のマスターズ制覇を果たしたS・ガルシアが印象的ですが、D・ジョンソンやJ・ラームらのトップ選手をはじめ、日本のツアーでも非常に流行したパターになりました。発売当時は限定モデルということもあって人気が過熱し、プレミアムがつくほどでしたが、現在は同形状のプロパー品が流通したことで、中古の価格は落ち着いています」

「スパイダー」と人気を2分するオデッセイ「2ボール」の動向はどうだろうか。

「各時代のシリーズに必ずと言っていいほどラインナップされているのが、『2ボール』です。しかし中古市場で根強い人気があるのは、実は初代モデルなんです。すでに発売から20年近くが経過しているというのに、今も使っているプロがいることと、現代のパターにはない操作感のある軽めのヘッド重量で扱いやすいのです」

同様のことが、マレット型の「ホワイトホット#5」にも言えるという。丸山茂樹や谷口徹など多くのプロが使用したことで知られる名器中の名器だが、後年に発売された「#5」に比べて、ひとまわり以上小ぶりであり、操作性を求める人に評価されているのだ。

「スコッティ・キャメロンの『ニューポート2』もおすすめです。タイガーや松山英樹が使うのは、ツアープロ向けの特別仕様ですが、形状自体は20年以上販売されている定番で中古品が豊富です。ミスヒットに強い大型ヘッドも良いですが、フェース開閉の行いやすいパターで練習して、技術を身につけたい人やタッチを重視する人にはもってこいでしょう」

難しいL字型やピン型パターを練習用に中古で1本という発想も面白いかもしれない。

週刊ゴルフダイジェスト2021年3月16日号より

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