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【ゴルフ野性塾】Vol.1810「ゴルフ寿命は左肘の高さに表れる」

KEYWORD 坂田信弘

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

前回のお話はこちら

スウィングの
理想を申せば

フィニッシュ時、右肩と左肩の生むライン上に左肘あればいい。
人の体、壊れた時、機械の部品の様な取換えは利かぬ。
移植とゆう手段はあるがそれは余程の事。
怪我程度で移植とゆう手段は取らないと思う。
平成5年8月、熊本にジュニア塾を開いたが同年5月、私は東京医科歯科大学の教授室にいた。
整形外科の先生がゴルフ好きであり、私の理論書の支持者でもあり、その先生を頼っての教授室訪でだった。
それ迄、その先生とは二度食事する機会があった。

「子供にゴルフを教えます。怪我を恐れています。首、腕、指先、胴体、脚、それぞれに掛かる負荷、最も少なき体の動きを知りたいのです」

先生は考え込んだ。
車の走行音が聞えた。
速い音だった。

「時間は余りなさそうですネ。近々の指導の始まりですか?」
「ハイ」

左肘低きフィニッシュは短命に終る。


先生は呟いた。
「坂田プロの指導は周りの声、執筆された書物で理解出来ているつもりです。中途半端な方ではない事も分っています。まず坂田プロの考えを聞かせて下さい」

「3カ月後の開塾を予定しています。入塾年齢は小学4年から中学1年迄。小学3年では早過ぎると思いますし、中学2年では高校進学と重なりますので中学2年での入塾は難しいかと思い、小学4年から中学1年迄と考えました。骨折よりは筋肉損傷、靭帯損傷を怖れます。治療完治に時間を必要とするのが理由です。捻転の起こす過度の負荷、体の縦ラインの極度の曲りは筋肉と靭帯を損なう原因になるのではと考えます。しかし、捻転なければ飛距離と正確な方向を生む事出来ないのがゴルフです。そして、下半身よりも上半身の動き、単純にすれば怪我は防げると思います。特に初心者のゴルフ、子供のゴルフに於ては。
 私のゴルフの始まりは24歳でした。24歳は過度の負荷、極度の曲り、生じない年齢です。子供達に強要はしません。練習ノルマもなしです。私に好きなだけ練習出来る環境はありませんでした。仕事の合間の練習、早朝日没後の練習入れても、雨の日で一日5時間、晴れてお客さんの多い日は一日2時間が目一杯の練習時間でした。子供達に練習したくても練習出来ない辛さは与えたくないのです。
 ただ、やり過ぎは怖い。面白ければ、結果が出る様になれば限度超える練習場での練習やる様な気がします。その時、怪我に強いスウィングあれば、その筋力強化出来ていれば怪我は回避出来ると考えました」

「何かスウィング上の考え、お持ちですか?」

「スウィングのスピード、一気に落せば体への負荷生じます。スウィングの型も崩れ、振りの体勢も崩れます。型と体勢維持してスウィング終らせる手段はフィニッシュに在ると考えます。私の経験です。フィニッシュ時、右肩と左肩と左肘の位置、一つの線上にあれば暗闇の中で球を打ってもボール回収は簡単でした。散らばらなかったからです。両の肩のラインが傾き、左肘の位置、肩のラインより低くなれば闇の中でのボール回収は時間が掛かりました。打った球は前後左右に散ってました。フィニッシュで左肘の落ちるスウィングはゴルフ寿命、短命と考えています。
 世界のメジャー競技、日本国内のツアー競技の観戦記、昭和60年から書いています。前の年は活躍しても次年になって消えたプロ、多く見て来ました。一致するものありました。フィニッシュ時の左肘の低さです。肩のラインより低いスウィングでした。私は長寿が欲しい。ポッと出てポッと消えるのは悲しい事です」

先生は立った。

「私のフィニッシュ、見て下さい」

先生のフィニッシュ、左肘が低かった。
左肘の下に左手の平を当て、ゆっくりと押し上げた。

「きつい!! 痛い!!」

「左肘が低いと右脇は伸び、左脇は窮屈さを生みます。そして、スウィングのスピードを吸収する体の動きなく、体勢とスウィングの型、崩れます。腹の力を抜いて下さい。首筋の力も抜いて下さい。それで左肘は上がります」

先生は溜息付いた。

「何センチ上がりましたか?」

「5センチですネ。あと5センチ必要です」

この後、先生は昼御飯を御馳走してくれた。
部屋に戻った。
先生は医学書一冊くれた。

「いつでも来て下さい。待ってます」

その後、先生とは長い付き合いになった。
ジュニア塾開塾前、私が教えを乞うたのは先生一人だけだった。

野性塾大濠公園18人衆の姿勢が伸びた。
コロナ前、私は年50回以上の講演会壇上に立っていた。
聞いてくれる方の背筋伸ばせばこの勝負、私の勝ちの気持ちで壇上に立っていた。
勝ち続けて来たと思う。
コロナで講演依頼はなくなった。
今年、壇上に立ったのは二度。
いずれも会社経営者の集い。
コロナ後、初めての講師招いての集いとゆう事だった。
来年は分らない。
依頼は増えて来たが、一日400球の球叩きが楽しくなって来たので、受けるか否かはその時の気持ち次第とゆう気はする。

今日12月7日、木曜日。
気付けば師走入りだ。
一時間半で400球打つ中でインパクトの音と感触、同じではない。
昨日の夜、インパクト前の音とインパクト後の音、交互に聴き耳を立てて球を打った。
インパクト前の音、聞いていた時、窮屈さを感じた。
気持ちの窮屈さだった。
インパクト後の音を聞いた時、窮屈さは出なかった。
フォローのスムーズさを感じた。
音一つで変るもの、それは気持ちの強張りなのかと思った。
力を抜いてリラックスせよ、と教えてもリラックス出来るものじゃあない。
インパクト後、フィニッシュ前のクラブの起こす音を聞けと教えれば強張りは取れると思う。
400球打つ前には気付かぬ事だった。
18人衆の前傾が強まった。
以下、次週稿―――。

坂田信弘

昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2023年12月26日号より

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